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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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遅い。
一体何をしている、と怒鳴り込みに行ってもいいけれど、それではなんだか負けた気がして僕は先刻から一進一退を辿っている。楽しみにしていたのか、なんて思われるのはとても癪だから。仕方なしに付き合ってやる、という大義名分が粉々になってしまう事だけは何としても避けなければいけない。ねぇ、君もそう思うだろう?と呟いたところで君はまだ来ない。
「明日何処かに行こう」の約束が、これ程多くの葛藤を生むだなんて、そうでなくとも馬鹿げているのに。



「早く。」




そうやって呟いた一言はゆるりと霧散していく。酸素の中に分解されて、もう一度戻ってくるのだろうか。そうしたら、そうしたらもう一度僕は
同じ台詞を吐くんだろうか。あの男が来るまでずっと。
待ち惚けでごろりと転がった床から天井を見上げると、何時もとはまるで別物の様だ。遠いから、何だか自分が子供の頃に戻ってしまったみたい。おかしいかな。ぼんやりしてると、思考回路がめちゃくちゃになってしまう。そうなったら君はばかになった僕を見て、遅刻癖を改めるかもしれないね。それってどうなんだろう、と考えるまでもなく馬鹿げている。ねぇ、君もそう思うだろう?って、今はまだこの部屋には僕しか居ないんだけれどね。昨期もそう思ったのに、またぐるりと巡って同じ処に戻って来たという事は、先刻の台詞は部屋を一周してしまったという事なのだ。
きっと。



「早く。」



だからもう一度同じ台詞を吐いて、この言葉がまた部屋に張り巡らされた空気を伝って一回りしてくるまでに、果たして待ち人は現れるのだろうか。多分確率は五分五分だ。意外なところで抜けている、と知ったのは最近になってからだけれど、実は本人ですら気付いていない重要機密。
なんだか眠くなってきてしまったのは、寝転がっているからだろうか。ただ待つだけという行為に飽きてしまったからだろうか。それでも自分から迎えに行くという選択肢は存在させずにぐるりぐるりと巡って早く、君が来たら良いのにと思う。




玄関に備え付けられたチャイムが鳴る頃、僕は一体どうしてるのだろうと想像して、予想より遙かにぐるぐると紛れた台詞に、君、が、チャイムを鳴らすその時を待つんだ。




きっとこのまま。まだ来ないから。









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目の前にいる君は思念体で、時々僕を乗っ取っては好き放題やってのけているらしい。昨日もどこで何をしていたのやら、今日の僕は何もしていなかった筈なのに疲弊しきっていて頭が重い。今度は何をやらかしたの、なんて問い詰めたってはぐらかされてしまうのは判りきって居たから、もう何も考えていないふりをした。何も気付いていないふりをすれば、それだけ周囲の目すらも誤魔化せる。だって僕は哀れな道化師なのだ。何もしらない。何もわかっていない。そうやって自分を偽れば回りとも、自分とも、そして目の前の君とも円滑な付き合いが出来る、ということだ。全力で拒絶していた頃もあったけれど、何故かその頃の自分を酷く愚かに思うのは、きっと。
『ばかみたいだ、僕。』
はぁ、とため息を吐けば、ぐにゃりと視界が歪んだ。ぼやけた視界は、君の存在がとてもあやふやだから。透けて見えるその先はしっかりと形を持っているのに、当の本人といったら今にも消えてしまいそうな朧気な輪郭。
ばかみたい。ばかみたい。どうしてこんなやつに絆されてしまったのだろう。昔の自分を愚かに思いさえするのは、呆れや諦めじゃなくて確かに存在している情の仕業。これが恋かと聞かれたらそれはわからないけれど、仮にそうだとしたら僕はとても愚かで惨めだ。
『…何悩んでンだよ。』
頭の中がグチャグチャで、張り裂けそうなその時だった。急に眼前に広がる、半透明のもう一人の自分。吐息がかかりそうな近さに思わず息をつめたけれど、思念体なのだから関係ないといえばない。ただ意識的な問題が生じて、思わず目を逸した。近い、と意識して跳ねる鼓動。やはり自分は愚かしい。
『まぁ、筒抜けだけどなァ。』
さもおかしそうに笑い、揶揄の響きを含めて僕に告げる君はとても意地が悪い。僕の心中は全て掌握されている。全ての感情を勝手に読み盗られてる、という事は僕のこの絆されている、という結論もお見通し、な訳で。
ねぇ、君はとても、狡いよ。
だって僕は君の事何も知らないのに。




『なァ、宿主。』
ニィ、と口角を吊り上げる、という君独特の笑いを貼り付け僕を呼ぶ。君が内心嘲笑っているのであろう事も、懐柔しやすく体のいい都合の良い玩具のようにしか思われていないのも、
『こっち向けよ。』
――知っている。
なのにそれでも離れたくないと思うのは、君がとても飴と鞭の使い分けが上手だから。
『、ん。』
目を合わせると、実体も無いというのに降って来る優しい口付けが、僕の思考を停止させるから。
所詮真似事、といえどそこだけは存在しているかの様にじんわりと熱を持っていく様は、ただの思い込みにしたって十分すぎる程の破壊力。
起爆装置はいつだって君の手の中だ。コントロールするもしないも全権が委ねられているなんて、ばかみたいだけれど、それすらもう考えられない。




真似事の口付けがもたらす作用は絶大だ。
絆されていつの間にか利用される事すら嬉しいと感じるようになるのも、あと少し。
本当にばかだな、宿主、と、嘲り笑う君の声が聞こえた気がした。






呆れた顔をされるのは珍しい事ではなかった。どうも目の前のこの男は僕の事を子どもだと思って馬鹿にしている節がある。いや、きっとそうだ。多少の我が儘はやれやれ、と呆れられながらも通り、度を越えるとやんわりと諭される。これではまるで君は僕の保護者ではないか。馬鹿にするなよ。
『亮』
コホン、と咳払い一つ、恭しく名前を呼べば無表情で見下ろされて、それだけでちょっと不機嫌になる。何なんだもう。僕は別に自分が小さい、とは思ってないけれど、それにしたってこの身長差は面白くない。こいつは少し縮めばいいのに、なんてどうでもいい事を考える。
『何だ』
相変わらずの無表情で相変わらずの上から目線。最初は何か気に入らない事でもあるのかと疑ったが、そうではないらしい。唯、癖なのか不機嫌そうな顔をするけれど、本心からでは無い事は知っている。
『いつも思っていたけれど、君は僕の保護者気取りか。大層な身分だ。』
ふん、と嫌味を全面に押し出して、怒らせられたら僕の勝ち。
けれども、現実は簡単にはいかない事は重々承知だ。昔対戦した時の、易々と口車に乗せられていた甘ったるい新人は、今となってはその頃の面影も無い。またか、と言わんばかりの呆れた顔。またか、はこちらの台詞だ。歳の差が10や20或る訳でも無いのにそんな保護者面されても面白くない。
対等もしくは君が下位だ。
『急に何を言い出すかと思ったらまた、突拍子もない事を。』
ふ、と笑って頭に手を置く。ああ、ほらそれだよ、それ。無自覚だというから驚きだ。どうにもこの身長差のせいで君は僕の頭を撫でる癖がついたらしい。それも、本人の意識下でなく。
これが子ども扱いじゃなく何と言うのだろうか。
『亮、また。』
ムッとして制すると今更気付いた様子で大きな手のひらは離れていく。
『これは、違う、』
違わないよ、もう。どんなに辞めろと言っても辞めないし、きっと数分後同じ押し問答をした所でまた同じ展開になるのは目に見えている。最初の頃こそ弁明をまともに受けていた僕も、今では流されようとすら思わない。天下のカイザー様が聞いて呆れるね。
『……お前だって。』
途端、にやりと笑う顔に、訳が解らず眉を顰めると、
『呆れた顔、していただろう。』
なんて付け加えられて、言葉に詰まった。
余り表情豊かでない男だからこそ、この顔は、駄目だ。ムカつく。腹立たしい。
『僕は良いんだよ。』
だけど君は駄目だ。続けると、してやったりな顔にまた、仕方ない、と言いたげな光が宿る。
『対等な立場が好ましいのだが、お前はどうやら俺を下位に仕立てあげたいらしいな。』
、良くわかっているじゃないか。




けれどこのまま押し問答を続けていたって丸め込まれてしまう気がするのは、君の思惑より勝っているからだと思わせてくれよ。
『当たり前だね。』
挑戦的に見据えれば、それでいいよの譲歩の答え。けれどそれではまだ不十分だ。




本当はやっぱり対等な立場がいいね、なんて言わないけれど、君がきちんと気付くべき。









眼球をべろりと嘗めあげられる。気持ち悪さと痛みに思わず反応して身を捩れば、満足そうな声が降ってきた。その声の主は辞めて、と言わない事に随分と満足している様だ。頭の片隅で、馬鹿だなぁ、と思う。そんなこと、当たり前なのに。
『悪趣味。』
ぎしり、と僕の肌に爪を立てて微笑む顔がとても自分と同じなのだとは思えない。加虐趣味の君が僕に与える物といえば少しの期待と大きな痛みだ。食い込む爪の鋭さも、ざらざらの舌の感触も、びりびりと体中を電気信号の様に駆け巡る。ああ、だめ、だめ。痛みで頭がおかしくなりそう。体のそこかしこから悲鳴と懇願が沸き上がるけれど、辞めてなんて絶対に言わない。目の前で喉を鳴らして笑うこの男がもっと喜ぶ事を知っているから。そしてそんな正論を覆すくらい辞めてほしくない自分を、知ってしまったから。
痛みなんてもの、一通り耐えた後のボロボロの僕を見てやり過ぎたか、と焦るお前を見る時の優越感に比べれば大した事は無い。意識を手放す瞬間の、焦って僕の名前を呼ぶお前の顔に比べれば。




『いいから、』




早く、とねだる僕を他人に理解して貰おうなんて思わない。きっと今僕はとんでもなく愚かで、被虐趣味で、とうに常人の範疇を超えている。こんな趣味はなかった筈なのに、君と出会ってしまってからいとも容易く道を踏み外してしまったんだ。だって僕を乗せるのは至上の泥船。他人からしたら自分で自分を傷付けているのだから、気違いだと思わずにはいられないだろう。まったく、馬鹿げた固定観念だ。
ひいては僕を傷つけられるのは僕だけなのだ。なんて素敵な自己愛なのだろう。




同じ様ででも違う、もう一人の自分に擦り寄ってねだる物は、甘い接吻の疑似体験。
薄い唇を割って赤い舌先を見せつければ、ぎらぎらとした犬歯が弧を描いた口許から覗いた。
噛み千切られる事はないにしても、その刃を突きたてられる衝動はきっと計り知れない。ああ、とんでもなくぞくぞくするね。




意識が無くなる寸前のぎりぎりの駆け引きは、今日もきっと僕の勝ち。









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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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