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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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この首筋に噛み付かれ、腕をきつく縛り上げられ、
痛みに歪む顔に、蔑みの視線を送られたい。
被虐思考の愚かな自分の欲望をどうか叶えて欲しいのだ。
際限なく沸き上がり続ける願望はけれど、全てぶつける事無く朽ちていく。




『お前もそう思うでしょ。』
触れる事の出来ないお前にそう囁いた。鏡越しに見るお前の顔は何時もより心なしか頼りない。鏡一枚隔てた向こう側でお前は何を思うのだろうか。
『ねェ、触ってよ。』
酷くされたいという願いは緩慢な自殺願望だったのかもしれないが、お前に殺されたいと思うのならそれは他殺願望なのだ。お前と僕は同じでは無い別個の人間なのである。そう思うからこそ僕は鏡の中のお前に語り続ける。
『何時もみたいに。』
つつ、と鏡の表面をなぞってみると、当然のことながら無機物のするするとした感触だけが指に残った。お前はもっと熱っぽくて、そして生きていると感じる事が出来た。人間では無いと言われ、けれど触り心地だけは間違いなく人間だったお前は、此処にはもう居ない。
鏡に映る自分自身の虚像にお前の幻影を見ているだけに過ぎないのだから。





『泣かないでよ。』




自虐的に笑って呟いた声は、鏡の中のお前に向かってなのか、自分自身に対してだったのか。
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頭が割れる様に痛い。何故だろうかと思考を巡らせ、そういえば昨日たらふく飲まされたのだと理解した。
自分自身ではそこまで弱いとは思っていなかったが、それこそ浴びる様に飲まされては勝手が違う。
ガンガンと頭を打ち付ける鈍痛が二日酔いという事実を如実に物語っていた。
『うー・・・気持ち悪い・・・』
額を押さえてやり過ごそうとしてもあまり効果は無い。未成年の飲酒は法律で禁止されています、という今更どうしようもない言葉が頭の中をぐるぐると回る。いっそ吐いてしまったら楽になるのだろうか、と思った、その時だ。頭の中に響く聞き慣れた声が一言、釘をさす。
『言っておくが吐くモンがねェぞ。昨日全部出しちまってるからな。』
はァ、と呆れた様な声でそう諭され、そうだったっけかと目線を宙に彷徨わせた。酒を飲んだ事は覚えているが、その前後の記憶が全くといっていい程ない。誰が最初に飲もうと言い出したんだっけか、とそれすらも曖昧では話にならない。
『もー駄目。無理。死ぬ。』
『死なれちゃ困るっつの。』
頭の中の声は飄々としていたが、こいつは果たして酔っ払ってはいないのだろうかと、素朴な疑問が鎌首をもたげる。同じ身体を共有しているのだ、身体を覆う怠さは同じな筈だ。
『お前も辛いんじゃないの?』
ぐで、と寝そべりながら尋ねると、鼻で笑われる。何を馬鹿な事を、と言いたげな笑いだった。
『この俺様があれ如きで酔い潰れる筈ねェだろ。』
焼酎一升にウイスキー一瓶冷酒、ビール、と頭の中で数えだす声に、そんなに飲んだのかと嘆息した。酔い潰れる筈だ。たかだか16歳の自分の許容範囲は大幅に越えている。3000歳のこいつに敵う筈が無い事も十二分に理解した。
『お前が凄いのは判ったから。そんなに言うなら変わってよ、平気なんでしょ。』
胃がからっぽだというのに吐き気は収まらず、寒気もする。二日酔いになるまで飲んだのは初めてだったが、もう一生経験したくない気分の悪さだ。頭の中の邪神様が変わって下さるのなら、僕はこいつを崇めても良い、とすら思う。
しかし、こいつはそんな善人でもお人好しでも何でも無かった。
『嫌なこった。これも人生経験ってやつだぜ?宿主様。』
ヒャハハ、と耳障りな声で笑いながら、縋りつく僕を無情にも奈落の底へと蹴り落とす。
人生経験、なんて嘘っぱちで、ただ苦しむ僕を眺めて愉悦に浸りたいだけなのだろう。
性悪、と呟くと最高の褒め言葉だぜと喜ばれた。嬉しくない。




頭痛に悩まされながら、治ったら覚えていろ、と頭の中のこいつに悪態吐いた。




ゆっくりと肥大した闇が僕を包み込む。囚われる。この世の全てを捕らえる事が出来る程の巨大な闇が、僕だけを捕縛するのだ。
『お前だけでいい。』
闇は囁き、そして嘲笑うかの様にねっとりと絡みついてくる。闇に侵食されひたひたに浸かりだした自分の身体はもう、助からないだろう。闇に犯されてしまって元に戻れる筈がない。
けれど、それでも。




『お前だけで。』




纏わりつく闇は囁きながら僕を沈める。そうだね。実の処、僕もそれで、それで、いいんだ。
世界を支配する力を持った闇がけれど僕だけを支配するだなんて、とても倒錯的だもの。視界すら暗黒に飲まれ思考が途切れても、四肢の自由を奪われても、奇妙な安堵感すら感じられる不思議な心地だ。
ねぇ、僕だって君だけで。
否、君だけが。




『お前だけが。』




闇がそう呟いたと思った刹那、僕の安堵感は更に肥大していく。
お前だけが欲しいと闇に求められた僕は愛しさに縛られながら、ずぶずぶと闇に飲み込まれていった。




雷が鳴る。ゴロゴロと不吉な轟音が響き、瞬間夜空が怪しく光った。大分近いな、と思いながらゆったりとソファに沈み込む。落ち着いているのは何も虚勢を張って居るからでは無くて、いくら近いからといって外に出ない限り害はないということを知っているからだ。極論として自分の住うマンションに落雷してしまえばまた話は変わってくるけれど、その可能性はかなり低い。つまり、本当にこの家の中に居る限りは怖い事なんて何もない。
『むしろ、結構好きだったりするよ。』
ふふ、と笑ってリモコンに手をのばした。テレビの電源を入れるとニュースキャスターの淡々とした口調が嵐の訪れを告げていた。
『悪趣味な宿主様だこって。』
辛辣な言葉と共にくく、と喉元で笑う声が聞こえる。
誰も居ない一人きりの空間に、けれど別の声が鳴り響くのだ。僕のドッペルゲンガーたる存在が悪態を吐いている。この倒錯的な関係にも大分慣れたものだ、と思った。昔の自分なら躍起になって反抗していたかもしれないが、最近はそうでもない。
『はいはい。お前もでしょ。』
さらっと交わして相変わらずゴロゴロと鳴り響く空を安全な空間から眺めると、お前はつまらなさそうに口を開いた。
『最近おもんねェ反応しかしねェな。』
昔はかわいかったのによォ、と馬鹿にした様な発言もひらりと交わせる様になった。大人になったという事だろうか。
この先意外と僕達は上手くやっていけるのかもしれない。




『でもすきでしょ?』



ふふ、と今度は僕が笑う番だ。からかう事に慣れていてもからかわれる事に慣れていないお前は一瞬瞳を大きく見開き、それから罰が悪そうにふいと目線を逸した。変わらない悪天候も何だか幸福になれるスパイスみたいだ。今にも落ちてきそうな雷すら、僕達を祝福しているみたい。
テレビ画面に写るニュースキャスターが告げる天候も耳を通り抜ける、お前の一言が更に僕を付け上がらせる。




『・・・言ってろ。』

 

 

身体の至る所にポツポツと赤い虫刺されの痕が出来ている。
この季節柄仕方ないとはいえ、やはり我慢ならない。

『痒い!』

がしがしと乱暴に掻き毟れば、頭上から慌てた声が聞こえてきた。

『宿主!ストップ!我慢しろ!』

『我慢出来ないよー!かわってよー!』

『あのなぁ、俺様だって痒いんだっての。』

はぁ、とため息を吐かれる。
え?と疑問符を頭に浮かべていたのがわかったのか、君はすい、と腕を僕の目の前に掲げた。
半透明の腕を凝視すると、ちょうど同じ位置に赤い虫刺されの痕が出来ている。
同じ身体を共有しているのだから、当然といえば当然なのかもしれない。
けれど君は涼しい顔をしていたし、何よりそんな処まで共有しているとは思わなかったのだ。

『痒くないの?』

バクラは僕の様に力任せに掻き毟ったりせず、
点在している虫刺されをむしろ冷ややかに眺めているだけだった。

『痒いに決まってンだろ。我慢してんだ、我慢。』

何でも無い事の様に言われ、言葉に詰まる。
痒くて痒くて仕方ないのは僕だけだと思っていたけれど、それは違ったのだ。

『宿主も我慢しろ。』

まるで子どもをあやすかの様に腕が伸びてきて、その言葉と共に頭を撫でられる。
勿論感触は無いけれど、その手付きが何だか心地よくて、ほぼ反射的に僕はこくりと頷いた。

『僕も我慢するよ。』

『それでこそ俺様の宿主だ。』

ふ、と君にしては珍しく柔らかな微笑みを見せるものだから、
虫刺されの痒みも何処か遠くに行ってしまった様だ。
共有しているという事実が何故か、心地よい。

『うん。』

小さく呟けば、後は溶けていくだけ。
虫刺されも君となら、悪くないかもしれない。


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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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