9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
『姉上サマァ・・・』
ねっとりと耳に絡み付く声で私を呼ぶ闇に嫌悪の表情を向けた。貴方は楽しんでいるのだ。愉悦の空気を纏いながら。私が必死になって弟を助けだそうとしている事を。
それすら、ただの娯楽に過ぎないと感じているのだ。
『私は貴方の姉になった覚えなどないわ。』
ぴしゃりと撥ね付け蔑みの目線を送っても、返ってくるのは飄々とした台詞だけ。
『手厳しいねェ。』
くく、と喉元で笑いながら歪む顔に、思わず眉根を顰める。神経を逆撫でする男だ、と思った。私の反応を逐一楽しんでいる。
圧倒的な闇の支配力と重圧を持ってして、なお実の弟を抑えこんでいるという起爆力。
其の圧力に必死で耐える私を、遥か遠くから嘲笑っているのだ。
『貴方を殺す為なら何だってします。』
けれどその重圧に押し潰されそうな自分を必死で奮い立たせながら強く強く睨みつける。まるで目を逸したら負けてしまうと思っているかの様に見つめ続けるのだけれど、目の前の男はそれすら愉快そうに笑うだけだ。
『いいねェその目。ゾクゾクする・・・。』
ニヤけた笑みにぞくりと背筋をはい回る嫌悪感を払拭したくて、かたくなに逸らさずにいた目線をついにふと逸らしてしまえば、馬鹿にしたような笑い声だけが耳に劈いた。
まるで闘う前から負けが確定しているかのようだ。悔しさに思わず緩みかける涙腺を叱咤し、踵を返す。
『マリクを取り戻します。必ず。』
そう言って、後は何も聞こえないようにと貴方の元を離れた。
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首筋に残る傷跡は闇に支配された弟の忘れ形見だった。今はもうかさぶたになっていて、2、3日中には癒えるであろう事は容易く想像出来る。闇に打ち勝ち光を見出した実の弟はけれど、そんな弱々しい傷跡でさえ嫌悪の表情を見せた。
『これ、あいつの所為だよね。』
すぅ、と実弟の指先が私の首筋を伝う。あの男に歯を立てられたその場所に。その指は這う様に押し寄せ傷跡をなぞり、そしてまた、彼の顔は申し訳無さそうにくしゃりと歪められた。
『もうすぐ消えるわ。』
何でも無い風を装い、取り繕った。優しく温厚な実の弟は私の首筋に残る傷跡を、自分の所為だと責めている。あいつの所為、と言いながらも、その元凶は自分なのだと思い込んでいる。
違うわ、貴方の所為じゃない。貴方とあの男は別人なのだから、貴方が気に病む必要なんて何処にも無い。
――けれどその言葉は心の中で反芻されただけで、遂には発される事は無かった。
余りに悲痛な顔で見つめられて、慰めの言葉は無意味だと悟るしか、無かったから。
『姉さん。』
皮膚の上、噛み傷の跡をなめらかに滑るその指が、私の言葉を遮る。貴方は私の事を“姉上様”とは呼ばない。昔から今までの間一度たりともそんな呼び方をしなかった。
だから気付いて。貴方は貴方で、あの男とは違うのよ。こんな些細な傷跡に揺さぶられたりしないで。闇に囚われ闇が姿を現したりしない様に、私の事を気にしてはいけない。
けれどやはりその言葉すらも、口をついて出てこなかった。
ごめん、姉さん、ごめん。
何度も何度もそう呟く自分の弟の悔しそうな声に、掻き消されてしまったから。
その重圧に飲み込まれてまた首筋の傷が疼いた様な、そんな気がした。
ぎり、と首筋に歯を立てられて、思わず眉を顰めた。血を分けた肉親だというのにその姿はまるで別人だ。もっとも、闇に支配されたその出で立ちは、本来の弟の姿では無かったのだけれど。
『・・・やめなさい。』
きつく睨み付け牽制すると、闇に支配された実の弟はくく、とのど元で小さく笑った。まるで気にも留めていない、と言われているようでとてつもなく不快感に襲われる。動揺しては思うつぼだから取り乱したくはない。けれどそう思う心とは裏腹にぞわぞわと背筋を伝う嫌悪感を拭いきれない。
鋭い刃はその間にもどんどんと侵入を進めていて、ぷつりと肌の裂ける音が耳に響いた、と、知覚した途端、じわりと血の滲む感触。
吸血鬼の様に其の血を舐めとる闇の人格に蝕まれた弟に、嫌悪感や不快感ではない恐怖が初めて訪れた。
『マリク・・・!いい加減に・・・!』
この心情だけは気取られたくない。そう思い今まで以上にきつくきつく睨み付けたのだけれど、きっとそれすらお見通しなのだろう。ぴちゃぴちゃと舌が這う音が更に恐怖を、畏怖の心を、煽り立てる。
『マリ・・・!』
『違うねェ・・・姉上様・・・。』
にやぁ、と綺麗に弧を描いた口元と、そう呟いたと思った刹那に唇が首筋を離れてぶつかった、嘲る様な視線と。
『俺様を、主人格と一緒にしてほしくねェなァ・・・。』
続けられた見下したようなその一言が、闇の訪れを顕著に現す。
嗚呼、貴方は私の弟では無いのだ。
姉さん、と可愛らしく私の後をついてくる、優しく儚げな私の弟とは別人なのだ。
『私のマリクを、返しなさい・・・!』
もうほとんど残っていない自尊心を掻き集めて吐き出した台詞に、目の前の男は薄ら寒くなる程の嘲笑を浮かべた。
まるでそんな事は不可能だと言いたげな表情だ。
今度は何を言われるか、と身構えたけれど、しかし何も言わずにこの男はまた首元に顔を埋めた。
残忍な顔で、今までとは比較にならない程の苦痛を与える為に。
どうして、と譫言のように呟くのは実の弟に向けてであって、この男にでは無い。
まるで闇に捕らわれたかの様に、後はそれだけを繰り返す。
ぼんやりと薄れていく思考はけれど、この男という闇に飲まれていくであろう事だけは、知っていた。
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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