ス、と眼球の上を手の平で覆われる感触に、亮は反射的に眉根を寄せた。
けれど泣く子も黙る“ヘルカイザー”の通り名を持つ亮に対しこんな事をする人間等、そう多くいる筈が無い。
亮はふ、と口元だけを笑みの形に動かし、何でも無い事かの様に、悪戯の主の名を呼んだ。
『エド。』
その名をきっぱりと断言すれば、言い当てられた事に動揺したのか、ピクリと指が瞼の上で反応する。
『何で判るんだよ。驚かせようとしたのに。』
通常、この行為に伴う「誰だ」、という問い掛けを先にするものなのだが、その暇すらなしに名前を言い当てられた事に、エドは不思議そうに首を傾げた。
声で判るのならともかく、エドは一言も声を発さなかったし、勿論気取られるヘマもしなかった筈だ、と思ったからだ。
『・・・何となくお前じゃないかと。』
『何それ。・・・答えになってないし・・・。』
相変わらず瞼の上を掌で覆いながら、エドは納得がいかないとばかりに顔を顰めた。
勿論そう多くの人間がこの男に対して馴れ馴れしい態度を取れるとは最初から思って居なかった。
とは言え、瞬時に判断されてしまっては言葉に詰まる。
断言されてしまった気恥ずかしさも相俟ってか、心なしかエドの顔はほんのり朱に染まっていた。
『そうは言われても、判ってしまったのだから仕方が無いだろう。』
『僕以外にも天上院吹雪、丸藤翔、それから十代辺りもやりそうだけど。』
『まぁな。しかしそれでもやはりお前だと思ったのだが・・・』
『・・・亮・・・?』
『雰囲気で判る、という事なのだろうか。よく判らないが・・・。』
『そ、そっか・・・。』
もし周囲に誰か居たのならば2人の間を点描画や花が飛んでいるように思えたかもしれない。
初々しい反応に少女マンガか!と突っ込みを入れたくなったかもしれない。
けれど生憎と此処には2人、亮とエドしか居なかった。当の2人しか居なかったのだ。
ああどうか、末永くお幸せに!
ス、と眼球の上を手の平で覆われる感触に、亮は反射的に眉根を寄せた。
けれど泣く子も黙る“ヘルカイザー”の通り名を持つ亮に対しこんな事をする人間等、そう多くいる筈が無い。
亮はふ、と口元だけを笑みの形に動かし、何でも無い事かの様に、悪戯の主の名を呼んだ。
『エド。』
その名をきっぱりと断言すれば、言い当てられた事に動揺したのか、ピクリと指が瞼の上で反応する。
『何で判るんだよ。驚かせようとしたのに。』
通常、この行為に伴う「誰だ」、という問い掛けを先にするものなのだが、その暇すらなしに名前を言い当てられた事に、エドは不思議そうに首を傾げた。
声で判るのならともかく、エドは一言も声を発さなかったし、勿論気取られるヘマもしなかった筈だ、と思ったからだ。
『・・・何となくお前じゃないかと。』
『何それ。答えになってないんだけど。』
相変わらず瞼の上を掌で覆いながら、エドは納得がいかないとばかりに顔を顰めた。
勿論そう多くの人間がこの男に対して馴れ馴れしい態度を取れるとは最初から思って居なかった。
とは言え、瞬時に判断されてしまっては面白く無い。
エドとしては亮の友人代表天上院吹雪や、実の弟の丸藤翔、そして遊戯十代辺りは候補に挙がっても可笑しくないと思っていたというのに、だ。
『そうは言われても、判ってしまったのだから仕方が無いだろう。』
『天上院吹雪、丸藤翔、それから十代辺りもやりそうだけどね。』
『いや、あいつらは意外と其処まで子どもでは――』
『・・・それは僕が子どもだとでも?』
『あ。いや、決してそういう訳ではないが、』
『へーえ。そうか。ふーん。まぁ僕は君の弟よりも年下だからねェ・・・先輩・・・?』
ギリギリ、と瞼の上を押さえる掌の圧迫が強まる。
おいエドやめろ、と眼球を押しつぶさんばかりの勢いのエドに亮は焦って声をかけたが、
その声音は誰が聞いても少し快感交じりだった感は否めない。
このドMが!とエドの怒りは更に頂点に達した。
ス、と眼球の上を手の平で覆われる感触に、亮は反射的に眉根を寄せた。
けれど泣く子も黙る“ヘルカイザー”の通り名を持つ亮に対しこんな事をする人間等、そう多くいる筈が無い。
亮ははぁ、と溜息を一つ吐き、何でも無い事かの様に、悪戯の主の名を呼んだ。
『吹雪。』
悪乗りが得意な友人の名をきっぱりと断言すれば、言い当てられた事に動揺したのか、ピクリと指が瞼の上で反応する。
『何で判ったんだい?』
通常、この行為に伴う「誰だ」、という問い掛けを先にするものなのだが、その暇すらなしに名前を言い当てられた事に、吹雪は不思議そうに首を傾げた。
声で判るのならともかく、吹雪は一言も声を発さなかったし、勿論気取られるヘマもしなかった筈だ、と思ったからだ。
『俺に対してこんな事をする奴がそう何人もいると思うな。お前かエドくらいなものだな。』
『成程ねぇ。じゃあ何で僕だと?エド君かもしれないじゃないか。』
確かにそう多くいる筈が無いと納得はしたものの、一応二者択一の最後の難関が残っている。
吹雪かエド――間髪入れず言い当てる程に違いは無いように吹雪は思った。
そもそも、エドもこんな事をするなんて、と吹雪にとっては其処にも驚いたのだが。
何時の間にそんなに仲良くなったのだろうか、と呆気に取られる間もなく、更に驚愕の事実が吹雪の上に降りかかる。
『エドの方が少し手が小さいな。それに何というか、あいつは雰囲気で判る。この間エドにもやられたのだが、何故かすぐに判ったのだ。あいつは面白く無いと怒っていたが――』
『へ、へえー』
『それにあいつは今仕事で日本に居ない。帰ってくるのは12日後だと言っていた。迎えに行かなければ雷が落ちる。』
『なんていうかさぁ・・・』
『今は調度アメリカにいる。国際電話がかかってきていたからな。――どうかしたか?』
『あ、うん、いやぁ・・・ごちそうさま・・・。』
何だか友人の知ってはいけない一面を垣間見てしまったなァ、と吹雪はぼんやりと思った。
ちょっと見ない間に変わったね、と少々引き攣った笑みを浮かべたが、
自称愛の伝道師天上院吹雪としては、無問題だ。うん。愛なら仕方ない。
そんな風に思いながら、自覚の無い惚気連発の亮を見守る事にした。
身体の至る所にポツポツと赤い虫刺されの痕が出来ている。
この季節柄仕方ないとはいえ、やはり我慢ならない。
『痒い!』
がしがしと乱暴に掻き毟れば、隣りから諭す様な声が聞こえてきた。
『あまり掻き毟るな。』
『でも痒くて仕方ないんだ。』
『待っていろ。今薬を持ってきてやる。』
すたすたと足音が遠ざかっていく。
どうやら薬箱を持ってきてくれるようだ。
その間も痒くて痒くて仕方がなく、ついつい掻き毟ってしまう。
また何か言われるだろうか、とぼんやり考えた処で、遠ざかっていた足音が今度は近付いてきた。
どうやら薬箱がみつかったようだった。
『亮、薬はあったのか?』
すい、と噛まれた腕を差し出すと、亮は無表情のままこくりと頷いた。
『此れで良いか。』
言われて、薬のラベルを見ると、見覚えの無い品だった。
そもそも日本の薬品には疎い為、何だっていいやと思いながら頷く。
『少し染みるが、直に気持ち良くなる。』
そう言って亮は僕の腕にその薬を塗りだした。
不穏な空気を放つ台詞にツッコミを入れる暇なくキィンと痛みが走り、思わず叫んでしまう。
『痛っ!染みる!何これ凄く染みるんだけど!』
『キ○カンだからな。しかしム○は生温い。やはりこれ位染みる方が気持ち良いだろう?』
当然、とばかりに告げてくる目の前の男にうっすらと殺意が沸く。
このドMが!
『僕は別にッ…!し、染みる染みる染みる!』
乱暴に掻き毟っていた為か、ビリビリとした痛みが身体中を駆け巡る。
くそ、覚えていろ!
お前が蚊に刺された時は逆にこのキ○カンとやらを隠して変わりにム○という薬を用意してやる。
生温さにがっかりするが良い。
『ほら、他に噛まれた処も塗ってやろう。キ○カンは偉大だからな。すぐに治る。』
これだけ染みる染みると喚いているのに、なおキ○カン片手に僕に迫ってくるのだから、
実はドSの気もあるのかもしれないが。
虫刺されなんて、大嫌いだね!
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。