忍者ブログ
9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
AdminRes
<< 03  2025/04  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30    05 >>
[7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。





積み上げた本という本がばさばさと音を立てて崩れ落ちた。崩れる寸前ギリギリの処で均衡を保っていたその山は、一度崩れ始めると留まる理由が無い。ドミノ倒しの要領で他の山々にまで侵食し、雪崩れが発生したのだ。フローリングの床が本で埋まり、見るも無残なごみ屋敷の様になってしまった。
足の踏み場も無いとはこの事だ。
『あっちゃー・・・。』
まだいけると思ったんだけど、と1人ごちる。読みが甘かったのだ。あと1冊くらい乗せたからといって崩れる筈がない。そう信じて新しく読み終わった小説を一冊その上に積み上げようと試みたのが失敗だった。
洋書からハードカバーの分厚いファンタジー小説、文庫、漫画、教科書その他諸々。
ものぐさにもそれら全てを綯い交ぜにして放っておいたのは紛れも無く自分だけれど、こうなってしまっては過去の自分を呪いたくなる。
『わー、これ片付けるの面倒くさい・・・。』
父から譲り受けた古文書や歴史小説など堅苦しい本から今流行の少年漫画まで多彩な本達が今所狭しと足場を占領していた。どうしようもない。片付けるしか手立ては無い。けれど、何処から手をつけていいかすら判らない。そんな状況だ。はぁ、と諦めにも似た溜息を吐くと、ひょっこりと後ろから覗き込まれる感覚を受ける。背中越しに何か得体の知れない生物が現れた、みたいなそんな感じだ。幽霊みたいなものだから仕方ないとは云え、奇妙な感覚だなぁと何時も思う。
けれど、そんな事言おうものなら臍を曲げられるので本人に直接話した事は無い。
『きったねー部屋。何やってんだよ宿主。』
余りの落胆ぶりを心の中から機敏に察知したのか、先ほどまでまるで気配が無かったというのに何事かと様子を見に現れた、というところだろうか。
派手にやらかした僕を他人事のように眺めている。
『なんでそんな他人事決め込んでるの。手伝ってよ。』
これじゃ何も出来やしない。懇願する視線を振り返りがてらに送ってみるけれど、お前がそんな台詞に傾く筈も無かった。
『はァ?何で俺様が片付けなきゃなんねーンだよ。テメェでやれ。』
『何時も僕の身体勝手に使ってるじゃない。宿賃だよ。』
『知るか。せいぜい頑張って片付けるんだなァヒャハハハハ!!』
『あっちょっと・・・もう!ばか!』
言いたい事だけ言ってさっさとまた心の部屋の中へと引っ込んでしまったお前に、とりあえず怒気を放ってみるけれど、最早何処吹く風、だ。
元より頼りにはしていなかったから落胆する程でもないが、如何せん言い逃げ風味な処がとても気に入らない。
僕の神経を逆撫でるだけ逆撫でて素知らぬ顔だなんて、本当にこいつといったら嫌味な奴だ。




『あーもう、ムカつくやつ。』
少しくらい手伝ってやるよ、とか何時も勝手に身体借りてて悪いから変わってやるよ、とかないのだろうかとむくれてみるけれど、そんな彼を想像するととても気持ちが悪い。
やっぱり、そんな想像はしてみたところで現実には敵う筈も無いのだ。
想定の範囲内だよね、ともう一度溜息を吐いて、この見るも無残な部屋を少しでも改善する為に、近くに落ちていた本から順に棚へと戻す作業に集中することにした。
PR




気が付けば手に取っていた、カカオ含有量85%のチョコレイト。
たかだか80g分の苦味に天秤が傾く筈も無いと知っていたけれど。




カラメルチョコレート




銀紙を破いて中から現れた其れを躊躇い無く口に含んだ。ビターチョコレート独特の苦味が口に広がり、思わず顔を顰める。どちらか、と言わずとも自分は甘党で、カスタードたっぷりのシュークリームを買いに行ったというのにどうしてこんなものを買ってしまったのだろうか、なんて理由は、勿論頭を掠める何処ぞの誰かの所為に他ならない。目に付いた途端ぐらぐらと自分の明確な意思が崩れ去り、何時の間にかショッピングカートに一つだけ放り込まれた安物の板チョコ。
どうか苦味に拡散されますように、なんて可愛らしい理由は自分らしくない。




『・・・にが・・・。』




きゅ、と眉根を寄せて呟いた。カカオ85%、と描かれたパッケージに益々その皺は深く刻み込まれる。チョコはすきだ。けれど、何時もの自分なら戸惑う事なくとびきり甘いものを選び出す。こんな馬鹿げた苦さを放つチョコなどわざわざ選ぶ必要性が無い。美味しくも無い上に値段も張る。ダイエット効果、なんて太らない体質の自分には興味の対象でも無い。
それでも、目を奪ったのは紛れも無くこの苦さ。
この胸の内をそう簡単に中和出来るなんて、思っていないけれど。




砂を吐きそうな甘さとは、よく言ったものだ。
無自覚にも惹かれてやまない自分の愚かさは、砂を吐いて馬鹿げていると侮蔑してやりたい程だった。
どうして、と僕は思う。
どうしてこんなに好きなのだろうかと。
自分の身体を傀儡の様に好き勝手扱うあいつにこんな感情を抱くなんて間違いだと。

けれど、それでもこの胸の内は侵されている。
侵食されているのだ、甘さに。





気が付けば手に取っていた、カカオ含有量85%のチョコレイト。
たかだか80g分の苦味に天秤が傾く筈も無いと知っていたけれど、それでも中和したいと願わずにはいられない。
どうかこのチョコの苦味で少しでも甘ったれた感情を消し去ってください、と。




この胸の内をそう簡単に中和出来るなんて、思っていない。
それでも願わずには居られない。




侵食されたいのだ、苦味に。
お前を心底嫌いたいと。




お前は僕を狂わせる。馬鹿みたいな炎天下の下で馬鹿みたいな台詞を吐いた。ジワジワと蝉の鳴き声がうるさく響く遊歩道でお前は何を言っているのだ、と嘆息されそうな程唐突に口を吐いて出た言葉だった。タイミングを間違えた、と思う反面けれど推し量る術を持てる程冷静ではなかった。
身体は火照る程暑いのに背筋だけは凍りつく様に寒い。
『何言ってんだ。』
意味わかんねェ。案の定無感動な台詞が僕の心臓をナイフで抉る。出血多量で死んでしまいそう。
アスファルトを照らす光が乱反射し僕の顔を照りつける。その暑さに浮かされそうになるけれど、芯だけはやはり底冷えしそうな程冷たかった。お前が僕を射殺そうとするからだ。その目線で。
『・・・そのままの意味だよ。』
何も難しく考えなくても、本当にそのままの意味なのだ。お前は僕を狂わせる。人生も、主観も、そして未来をも。それに今気が付いた、というだけの話だ。今更だな、と言われればそれまでだけれど、僕は此れまでこいつと過ごしているこの瞬間にそういった類の疑問を浮かべた事等なかったのだ。傍に居るという事が当たり前になってしまってから随分と日が経っている。そう気付いたとき、まさに今この瞬間に、だけれど、僕は絶望したのだ。何時から?否、其れすら判らない。拒絶し否定し続けていた僕は一体何処にいってしまったのだろうか。何故こんなにも自然に肩を並べ、さも旧友の様に会話を弾ませながら灼熱の暑さを共に感じている気になっていたのだろうか。そういえばこんなに暑いのにこいつは汗一つかいていない。当然だ。僕の身体を乗っ取っているのだから。そして、乗っ取られている僕が一番其れを知っているはずなのに。
実体を持たない隣に浮かぶこいつの存在を何故不思議に思わない。何故。何故。
乗っ取られて居る事を、疑問に思わないのだ。




『・・・ああ、今頃気が付いたのか。』




『やっぱり・・・!』
『・・・随分と遅かったなァッ・・・?ヒャハハハハハ』
がしゃん、と心の中の何かが崩れ落ちる。体中が悲鳴を上げ、心臓に突きたてられたナイフがゴリゴリと中心を抉った。遠くで蝉の鳴く声が響き、近くの小学校から子ども達が校庭を走り回る喧騒が聞こえてきたが、全てが表面を撫でるだけで去っていく。まるで無音の世界に居るかの様だ。
嗚呼、僕は何時の間にかこいつの存在を自然な物として受け入れる様に構築されて居たのだ。自分の感情は何時の間にか一から作り直されている。心の内側からそっと気付かない様に蝕んでいたのだ。この寄生虫は。
知らず知らずに作り変えられ自我を失う操り人形に仕立て上げる為に。
お前は僕を狂わせる。何もかもを踏み躙り、最初から作り上げるのだ。まるで反抗しない体のいい隠れ蓑として。
『心の部屋を・・・改ざんして・・・!』
『気付く事が出来ただけ褒めてやるよ。異変に気付いたのは此れまでの宿主の中でお前が初めてだ。』
ふざけるな。勝手に人の心を好き勝手組み替えて何を言っているのだ、此の男は。先ほどまで仲睦まじく話し込んでいた自分を呪いたい衝動に駆られる。背筋を侵していた寒気は今や全身へと流れ込んでいた。夏の暑さなど、もう感じない。アスファルトを照らす太陽も、何もかも。




『僕の心から出て行け!!』
『実体無いっての。無駄な足掻きだな、宿主。』
ガッ、と力任せに殴りかかっても、こいつの言う通りだった。透けた身体を通り抜けバランスを崩れた身体はそのまま其処にへたりこんでしまう。立ち上がれ、立ち上がれ、と反芻するのに足は精神への衝撃に震えが収まらないのかぴくりとも動かない。全身がガタガタと震え上がり、もう、どうしようも無かった。
座り込んで動かなくなった僕を見下ろしながら、お前はやけに甘ったるい声で囁いた。
『でも大丈夫だぜ?俺様がまた作り変えてやるからよォ・・・疑問も持てない従順な宿主様になァ・・・。』
しゅるり、と解かれた様にお前の身体が周囲に溶け込む。視界いっぱいにお前が拡散した、と思った刹那、霧状になったその身体が僕の身体の中に吸い込まれる様に入り込んできた。



『っああああああああああああ!!!!!』
おぞましい。寒気がする。僕はまた組みかえられるのだ、この男に。
そうして性格も何もかも、お前の都合の良い様に改ざんされ、構築されていく。
お前は僕を狂わせたのだ。自我も精神も、生まれてきた意味でさえ。




次に目覚めたときにはきっと、お前が僕を狂わせたという事実に気付きもしないただの器へと変貌している事だろう。
判っているのにどうにもならない怖気の走る絶望感と、安心しな、と頭の中に響くお前の声を最後に僕の視界はドロップアウトした。
17時間ぶっつづけ絵茶してました^p^晩御飯は素昆布で乗り切ったわたし。(飯を食え)
CPめちゃくちゃなので苦手なかたは申し訳・・・。だるまさん宅で絵茶するよ!となってたので最初から最後まで参加してきました。CPめちゃくちゃなのでワンクッションしときます。




手の首へのキスは欲望の証と知ってか知らずか、お前は其れを酷く渇望した。キスを強請る時のお前はとても滑稽で、そしてとても愚かだ。浅はかな男だと思いながらも拒絶する理由は無く、吐き捨てるほどに甘ったるい口付けを交わした。一つ口付けを交わす度、お前は此処に堕ちてくる。一つ唇を落とす都度、お前は何処まででも堕ちていった。何て懐柔しやすい御主人様なのだろうと、心の中でほくそ笑む。
俺様にとってこれ以上無く扱い易い存在に成り果てた、哀れな宿主だ。




『僕達、明日美術館に行くんだ。』
ふ、と笑ってお前は此方を見た。幸せそうに笑っていた。
『そうか。』
という事は明日でこいつともおさらばか、と思えばこそ、今日ぐらいは優しくしてやろうかという気にもなる。こいつは其んな事は露知らず、俺様が居なくなるなんて毛頭考えて居ない筈だった。ゆらりと思考を手繰り寄せ、此方に来る様に示唆する。心の部屋へと。
そうすればお前は何の疑いも無く此方へと堕ちて来るから、後は簡単な事だった。
『・・・なに?』
案の定あっさりと此方に現れたお前を、何も言わずに抱きとめた。風呂上りの石鹸の香りが鼻腔を擽り、瞬間この隠れ蓑を手放すのが惜しくなる。全くもって自分は欲張りな存在なのだ。体のいい仮宿のようなものだと思いつつ、無くなるとなれば途端に物欲しくなる。そんな随分と自分勝手な欲望を知ってか知らずか、お前はまた何時ものようにとびきり浅はかな顔でキスを強請った。
手の甲、掌、頬、額、瞼。至る所に意味の無い口づけを贈る。親愛の情や尊敬の証、憧憬の意。そういったものは持ち合わせていない為、感情を込めずに触れるだけの口付けを。
けれど手の首だけは何時も念入りに、幾重にも重ねて口付けた。お前に対する感情の全ては欲望で埋め尽くされている。そう云う意味も込めて丹念に手の首に口付けてやれば、何時しかお前は此処に口付けられることを強く望む様になっていた。
ちゅ、ちゅ、と軽く吸い付く音が心の部屋の中にこだまし、お前はそれだけでぶるりと震える。軽いキスだけで快楽の糸口を見出すお前がやはり、手放すにはとても惜しい。
『宿主、』
白い手首に口付ける度、お前が心の闇に囚われていく様がまざまざと見える。欲望が渦巻き、どろどろとした暗闇がお前を捕らえて離さない。この闇は俺自身なのか、お前の心の闇なのか、それすら判らない程に。
今更になってこんなに離れ難いと思うなんて、こいつはやはり最高の宿主だった。
明日にはおさらばの身体を繋ぎとめたくて無我夢中で其の白い手首に歯を立てると、頭上から甘やかな吐息が零れ落ちる。
お前は知らないだろう。明日にはお前がどんなに泣き叫ぼうと、乞うて縋ろうと、俺様は此処から居なくなるという事を。
勝とうが負けようが関係なく、お前はもう用済みだと蹴り飛ばしてさようならだ、最後の宿主。




噛み付いた手首に残る歯型がどうか消えないようにと、ガラにも無く余韻に浸るキスの味。
欲望の渦に巻き込まれたお前を連れて行きたいとすら思うけれど、それはもう敵わない夢の話だ。
せめて此れまでより極上の口付けを、と思い其の手首から口を離し向かう先は、唇の上。
最後のキスだけは意味を込めて贈ってやるよ。




唇の上は、愛情の証。
欲望の中に潜む最後の感情を言い表すには、この上なく陳腐だとは思わないか。

Powered by Ninja Blog    photo by P*SWEET    icon by Egg*Station    template by Temp* factory

忍者ブログ [PR]
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
フリーエリア
bannner.jpg


最新コメント
プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析