9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
お前は僕を狂わせる。馬鹿みたいな炎天下の下で馬鹿みたいな台詞を吐いた。ジワジワと蝉の鳴き声がうるさく響く遊歩道でお前は何を言っているのだ、と嘆息されそうな程唐突に口を吐いて出た言葉だった。タイミングを間違えた、と思う反面けれど推し量る術を持てる程冷静ではなかった。
身体は火照る程暑いのに背筋だけは凍りつく様に寒い。
『何言ってんだ。』
意味わかんねェ。案の定無感動な台詞が僕の心臓をナイフで抉る。出血多量で死んでしまいそう。
アスファルトを照らす光が乱反射し僕の顔を照りつける。その暑さに浮かされそうになるけれど、芯だけはやはり底冷えしそうな程冷たかった。お前が僕を射殺そうとするからだ。その目線で。
『・・・そのままの意味だよ。』
何も難しく考えなくても、本当にそのままの意味なのだ。お前は僕を狂わせる。人生も、主観も、そして未来をも。それに今気が付いた、というだけの話だ。今更だな、と言われればそれまでだけれど、僕は此れまでこいつと過ごしているこの瞬間にそういった類の疑問を浮かべた事等なかったのだ。傍に居るという事が当たり前になってしまってから随分と日が経っている。そう気付いたとき、まさに今この瞬間に、だけれど、僕は絶望したのだ。何時から?否、其れすら判らない。拒絶し否定し続けていた僕は一体何処にいってしまったのだろうか。何故こんなにも自然に肩を並べ、さも旧友の様に会話を弾ませながら灼熱の暑さを共に感じている気になっていたのだろうか。そういえばこんなに暑いのにこいつは汗一つかいていない。当然だ。僕の身体を乗っ取っているのだから。そして、乗っ取られている僕が一番其れを知っているはずなのに。
実体を持たない隣に浮かぶこいつの存在を何故不思議に思わない。何故。何故。
乗っ取られて居る事を、疑問に思わないのだ。
『・・・ああ、今頃気が付いたのか。』
『やっぱり・・・!』
『・・・随分と遅かったなァッ・・・?ヒャハハハハハ』
がしゃん、と心の中の何かが崩れ落ちる。体中が悲鳴を上げ、心臓に突きたてられたナイフがゴリゴリと中心を抉った。遠くで蝉の鳴く声が響き、近くの小学校から子ども達が校庭を走り回る喧騒が聞こえてきたが、全てが表面を撫でるだけで去っていく。まるで無音の世界に居るかの様だ。
嗚呼、僕は何時の間にかこいつの存在を自然な物として受け入れる様に構築されて居たのだ。自分の感情は何時の間にか一から作り直されている。心の内側からそっと気付かない様に蝕んでいたのだ。この寄生虫は。
知らず知らずに作り変えられ自我を失う操り人形に仕立て上げる為に。
お前は僕を狂わせる。何もかもを踏み躙り、最初から作り上げるのだ。まるで反抗しない体のいい隠れ蓑として。
『心の部屋を・・・改ざんして・・・!』
『気付く事が出来ただけ褒めてやるよ。異変に気付いたのは此れまでの宿主の中でお前が初めてだ。』
ふざけるな。勝手に人の心を好き勝手組み替えて何を言っているのだ、此の男は。先ほどまで仲睦まじく話し込んでいた自分を呪いたい衝動に駆られる。背筋を侵していた寒気は今や全身へと流れ込んでいた。夏の暑さなど、もう感じない。アスファルトを照らす太陽も、何もかも。
『僕の心から出て行け!!』
『実体無いっての。無駄な足掻きだな、宿主。』
ガッ、と力任せに殴りかかっても、こいつの言う通りだった。透けた身体を通り抜けバランスを崩れた身体はそのまま其処にへたりこんでしまう。立ち上がれ、立ち上がれ、と反芻するのに足は精神への衝撃に震えが収まらないのかぴくりとも動かない。全身がガタガタと震え上がり、もう、どうしようも無かった。
座り込んで動かなくなった僕を見下ろしながら、お前はやけに甘ったるい声で囁いた。
『でも大丈夫だぜ?俺様がまた作り変えてやるからよォ・・・疑問も持てない従順な宿主様になァ・・・。』
しゅるり、と解かれた様にお前の身体が周囲に溶け込む。視界いっぱいにお前が拡散した、と思った刹那、霧状になったその身体が僕の身体の中に吸い込まれる様に入り込んできた。
『っああああああああああああ!!!!!』
おぞましい。寒気がする。僕はまた組みかえられるのだ、この男に。
そうして性格も何もかも、お前の都合の良い様に改ざんされ、構築されていく。
お前は僕を狂わせたのだ。自我も精神も、生まれてきた意味でさえ。
次に目覚めたときにはきっと、お前が僕を狂わせたという事実に気付きもしないただの器へと変貌している事だろう。
判っているのにどうにもならない怖気の走る絶望感と、安心しな、と頭の中に響くお前の声を最後に僕の視界はドロップアウトした。
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
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