9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
手の首へのキスは欲望の証と知ってか知らずか、お前は其れを酷く渇望した。キスを強請る時のお前はとても滑稽で、そしてとても愚かだ。浅はかな男だと思いながらも拒絶する理由は無く、吐き捨てるほどに甘ったるい口付けを交わした。一つ口付けを交わす度、お前は此処に堕ちてくる。一つ唇を落とす都度、お前は何処まででも堕ちていった。何て懐柔しやすい御主人様なのだろうと、心の中でほくそ笑む。
俺様にとってこれ以上無く扱い易い存在に成り果てた、哀れな宿主だ。
『僕達、明日美術館に行くんだ。』
ふ、と笑ってお前は此方を見た。幸せそうに笑っていた。
『そうか。』
という事は明日でこいつともおさらばか、と思えばこそ、今日ぐらいは優しくしてやろうかという気にもなる。こいつは其んな事は露知らず、俺様が居なくなるなんて毛頭考えて居ない筈だった。ゆらりと思考を手繰り寄せ、此方に来る様に示唆する。心の部屋へと。
そうすればお前は何の疑いも無く此方へと堕ちて来るから、後は簡単な事だった。
『・・・なに?』
案の定あっさりと此方に現れたお前を、何も言わずに抱きとめた。風呂上りの石鹸の香りが鼻腔を擽り、瞬間この隠れ蓑を手放すのが惜しくなる。全くもって自分は欲張りな存在なのだ。体のいい仮宿のようなものだと思いつつ、無くなるとなれば途端に物欲しくなる。そんな随分と自分勝手な欲望を知ってか知らずか、お前はまた何時ものようにとびきり浅はかな顔でキスを強請った。
手の甲、掌、頬、額、瞼。至る所に意味の無い口づけを贈る。親愛の情や尊敬の証、憧憬の意。そういったものは持ち合わせていない為、感情を込めずに触れるだけの口付けを。
けれど手の首だけは何時も念入りに、幾重にも重ねて口付けた。お前に対する感情の全ては欲望で埋め尽くされている。そう云う意味も込めて丹念に手の首に口付けてやれば、何時しかお前は此処に口付けられることを強く望む様になっていた。
ちゅ、ちゅ、と軽く吸い付く音が心の部屋の中にこだまし、お前はそれだけでぶるりと震える。軽いキスだけで快楽の糸口を見出すお前がやはり、手放すにはとても惜しい。
『宿主、』
白い手首に口付ける度、お前が心の闇に囚われていく様がまざまざと見える。欲望が渦巻き、どろどろとした暗闇がお前を捕らえて離さない。この闇は俺自身なのか、お前の心の闇なのか、それすら判らない程に。
今更になってこんなに離れ難いと思うなんて、こいつはやはり最高の宿主だった。
明日にはおさらばの身体を繋ぎとめたくて無我夢中で其の白い手首に歯を立てると、頭上から甘やかな吐息が零れ落ちる。
お前は知らないだろう。明日にはお前がどんなに泣き叫ぼうと、乞うて縋ろうと、俺様は此処から居なくなるという事を。
勝とうが負けようが関係なく、お前はもう用済みだと蹴り飛ばしてさようならだ、最後の宿主。
噛み付いた手首に残る歯型がどうか消えないようにと、ガラにも無く余韻に浸るキスの味。
欲望の渦に巻き込まれたお前を連れて行きたいとすら思うけれど、それはもう敵わない夢の話だ。
せめて此れまでより極上の口付けを、と思い其の手首から口を離し向かう先は、唇の上。
最後のキスだけは意味を込めて贈ってやるよ。
唇の上は、愛情の証。
欲望の中に潜む最後の感情を言い表すには、この上なく陳腐だとは思わないか。
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プロフィール
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すめ。
年齢:
38
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
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