9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
突然の抱擁はそれこそ、突如として沸き上がる感情の突き動くままに行動したからだ。愛おしい。狂おしい。憎らしい程に心まで支配されている。甘さに。
『何だよ、急に。』
抱き寄せるというよりは最早抱きしめるに近い抱擁に、君が眉を顰めるのは仕方の無い事だ。脈絡も何もあったもんじゃない。前後の文脈全て掻き消して抱きしめるのだ。何と衝動的で感情的なのだろうかと自嘲するけれど、それすらも上回る何かが僕を追い立てている。君を抱きしめて、どうかこの腕の中から離れていきませんように、と願うばかりだ。
『いいから・・・もう少しだけ。』
君の熱を感じさせて。現実の世界では意識体の君を抱きしめるなんて出来ない。虚構の世界でしか君に触れられない。そして、この世界しか僕と君は共有出来ないから。誰よりも近い筈の存在が、何故かとても遠い。
お願いだよ、バクラ。
心まで、抱きしめさせてよ。君が僕の心を支配して離さない様に。
『宿主。』
そ、と僕の頭に君の手が触れる。やだなぁ、何処で覚えてきたの、そんなの。傷付ける事しか出来なかった腕が、破壊を望む其の手が、僕の頭を優しく撫でている。壊れ物を扱う様な、優しい手つきで。
どうして君はそうやって僕の心を魅了して止まないのかな、と相変わらず腕の力を緩めずにそう思う。
お前のその、宿主、と呼ぶ声が浸透し、溶かしていくのだ。
抱きしめているのは僕で、心まで抱きしめられているのは、僕の方。
それでも突然の抱擁で、君の心も捕らえられたら良いのになぁと、
欲張りな感情が突き動かすままに、心の部屋の中で僕は君を抱きしめ続けた。
願わくば、どうか、君の心まで抱きしめられますように、と。
高望みかもしれないけれど、そう思いながら。
【大好きなあなたに5題】 :SILENT SPEECH 03:抱きしめて良い? 心まで
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行かないで、なんて無理な話だ。縋り付かれたって、不可能だ。嗚咽を漏らすお前を置いていくことに心残りはあるけれど、負けてしまったからには仕方ないのだと、自分にも言い聞かせるように、呟いた。
『やだよ、やだ。やだ。いかないで。連れていって。』
ふるふると首を振って必死で説得を試みるお前に、ぐらつきそうになる心を叱咤する。この心の部屋ともおさらばか、とぐるりと見渡せば、此処数ヶ月で随分と風体の変わった部屋も感慨深くなる。お前は俺に出会い、人生を狂わされたのだ。良いように扱われて、心の部屋すら改ざんされて、それなのに従順に、まるで俺様が居なくなれば壊れてしまうと言いたげに縋り付いてきた。
馬鹿だな、と冷めた瞳で見つめて、鬱陶しい、と突き放す。
そう出来れば、どんなに良かったのだろう。
俺もまた、こいつと同じで、馬鹿みたいに絆されていた。
『宿主、無理だ。』
ごめん、なんてガラにもなく謝って、震える背に手を伸ばす。相変わらずしゃくり上げるお前を、置いて行かれるという恐怖だけが突き動かしている。
『無理だ。お別れだ。』
『駄目だよ、やだよ。お願い、いかないで。僕も連れていって。』
突き放す台詞を拒絶してなおも縋り付く。このままじゃお前も死んでしまうというのに、此方へと歩み寄るお前はとんでもなく愚かだ。
『地獄にお前を連れて行く訳にはいかねェよ。』
ううう、と泣き咽ぶお前の頭に手を置いて、永遠の別れの最後の挨拶だ。
『約束、守らなくて、悪ィ。』
どん、と突き放し、砂になって風に溶かされるように闇へと消えていく。
『絶対に守ってくれるって言ったのに、嘘吐き・・・』
お前の最後の呟きが、崩れ落ちる最後の身体に、染み渡る。
絶対に守ってやるという約束は、こうして、終止符を打った。
【大好きなあなたに5題】 :SILENT SPEECH 02:絶対に守ってあげるから
ガラにも無い。それ処か盛大に情けない。世界を滅ぼす大邪神様が聞いて呆れると自分で自分に絶望する。けれど敵わない、と何処かで諦めている自分も居て、混乱の極みだ。お前がどんなに訝しもうと、演技なのかと疑おうと、如何なる疑問も俺様の心の内には敵わないだろう。
お前を見てると、調子が狂う。
其れが何故なのか答えが判らない程耄碌してはいないけれど、判らないフリもしてみたくなる、というものだ。
『だから、騙されないってば。』
『そんなんじゃねェって。』
腕の中にすっぽりと収まっておきながら口だけは抵抗するお前も、既に心を許している。其れが狙いだったというのに、不満の残る自分を蹴り倒したくなる。ああ、馬鹿げている。どうかしている。
『じゃあ何なのさ。』
『俺様にも判らねェっつってんだろ。』
ふん、と鼻を鳴らす。其れは嘘だった。本当は全部判っていて、只知らないフリを続けているだけだ。
どうして抱きしめたくなるのか。どうして甘やかしたくなるのか。どうして、お前を大切だと思うのか。
それは単なる宿主という役目にしか見ていない頃とはまるきり違う感情が支配しているからだと、ちゃんと知っている。ヤキが回ったとしか思えない、バカバカしい感情だ。
『何それ。』
言いたくないから言わないけれど、と投げ出した台詞に、お前はふふ、と眉尻を下げて笑った。
其の顔にぐらりと傾く思考。
何て、情けない。
返事の代わりに背に回す腕の力をぎゅっと強めて、絆されていると白旗をあげる自分に、そっと、溜息を吐いた。
ガラにも無い。それ処か盛大な誤算だ。世界を滅ぼす大邪神様が聞いて呆れると自分で自分に絶望しながらも、それでも良いか、と何処かで諦めている自分も居て、混乱の極みだ。
お前がそうやって笑ってくれていたら、良いか、なんて。
【大好きなあなたに5題】 :SILENT SPEECH 01:笑っていて、いつでも
君の髪をゆっくりと優しく梳いた。ドライヤーの熱と柔らかなタオルの感触に君が目を細めたから、僕の心まで此の熱がゆっくりと浸透してくる。自分の髪質と寸分違わず同じである筈なのに、何故かさわり心地は別物のようだ。
『・・・お前の髪って意外と柔らかいや。』
湿気を大分含んだ君の髪を、ふんわりとしたタオルでくるんで水分を拭き取りながら、君の髪の感触をタオル越しに楽しむ。水によって少し重くなった君の透き通るような銀髪。自分のものと違って思えるのは、濡れているからだろうか。それとも君だからだろうか。何処か浮世離れした思いに捕らわれながらドライヤーの熱を浸透させる。タオルで絡め取る。なすがままの状態の君に違和感はあるけれど、嫌がらないという事はやっぱり君も居心地の良さを感じ取っているからだろう。世界から隔離されたかの様に、二人きりになったみたいな錯覚に陥る。
今この瞬間、僕たち二人だけなのだ。それはとてつもない幸せな気がした。
『一緒だろ。』
ゆるりと手を伸ばされ、君の手が僕の髪に触れる。それだけで僕の体温は幾ばくか上がるのだから、初な事だ。そうだけど、と視線を彷徨わせ、けれど相変わらず君の髪の感触は楽しみ続ける。
お互いがお互いの髪を梳く。
同じ様ででもきっと違う感触を、共有しているのだ。
『でも、いいの。』
視線をようやく君へと戻して僕はそう呟いた。
タオルとドライヤーと、君の濡れた髪。
乾いた僕の髪の毛とは、やっぱり何処か、違う筈だから。
このまま世界が止まればいいのになぁ、と物騒な考えが巻き起こる、シャワーの後のなれ合いの時間。
今度は僕の髪を君が乾かしてくれたら、良いな。
聞きたくないから耳を塞ぐ。
見たくないから目を瞑る。
言いたくないから口を閉ざす。
けれどそれは所詮無駄な抵抗だ。
『聞けよ。』
塞いだ耳に関係なく鼓膜を振動させる声も。
瞑った瞳に関係なく瞼の裏に焼き付く顔も。
閉じた口に関係なく嗚咽を漏らすのど元も。
君の全てを拒絶したって、どうしたってぐらついてしまうのだから。
『宿主、俺は、お前の事』
真剣な顔が見たくなくて目を閉じて、真剣な声が聞きたくなくて耳を塞いで、
何も聞きたくなくて嗚咽をあげたのに。
五感全てを支配されていてはどうしようもない。
一番大事だと思っている、と塞いだ耳に流れ込む音が、
ガラにもなく優しい顔の、瞼の奥に差し込む映像が、
嗚咽よりも同意の言葉を紡ぐ唇が、
僕をぐらぐらと揺らした。
無駄な抵抗だったと、溶かされながら、思った。
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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