9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
「なァ、宿主。」
1トーン低くそう呼べば、反射的にびくりと肩を震わせる惨めな宿主様。
きっといつもの理不尽な暴力を思い出して恐怖に駆られているに違いない、と思えば益々惨めに見えて知らず釣り上がる口角。
けれど恐怖に支配されながらも、プライドが許さないのかすぐさま平然を保とうとする姿が見て取れた。無駄な足掻きだな、と心中嘲り笑いながら沸き起こる、どうしようもない支配欲。今この瞬間、とてもお前を踏み躙りたい。
「何怖がってンの?」
今更だよなァ、と揶揄すれば、反抗的な瞳が此方を向いた。手に取るように判る怯えた心と裏腹の抗いが、紛れもない快感に置換される、という事を知らないのだろうか。健気だねェ、御主人様。健気で、そしてとても愚かだ。
「俺様程、お前に優しい男はいねェと思うけど?」
すい、と頬をなぞりながら猫撫で声で機嫌を伺うフリをした。今の所は自分にとって一番大事なモノなのだから、間違っては居ない。自分自身でこいつに傷付けるのは容易くて、自分以外に傷つけさせるのは腹が立つ。
言うならばお前は大切な玩具だ。
自分の手で壊したいという子ども染みた思想を、お前は理解できるのだろうか。踏み躙る事を想起して恍惚に浸れるのは、お前が未だに抗う事を忘れないからだ。抵抗すればする程、追い詰めて打ち砕きたい思いに囚われる。
愚かで愛おしい御主人様よ、これを愛と言わずして、何と言うのだろう。
「早く俺を受け入れろ。」
拒絶に快感を覚えて膨らむ愛情は、留まる事を知らないから。
拒絶する意識すら剥ぎ取れたそのときに、はじめてお前はこの愛情を理解するのだ。
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目の前にいる君は思念体で、時々僕を乗っ取っては好き放題やってのけているらしい。昨日もどこで何をしていたのやら、今日の僕は何もしていなかった筈なのに疲弊しきっていて頭が重い。今度は何をやらかしたの、なんて問い詰めたってはぐらかされてしまうのは判りきって居たから、もう何も考えていないふりをした。何も気付いていないふりをすれば、それだけ周囲の目すらも誤魔化せる。だって僕は哀れな道化師なのだ。何もしらない。何もわかっていない。そうやって自分を偽れば回りとも、自分とも、そして目の前の君とも円滑な付き合いが出来る、ということだ。全力で拒絶していた頃もあったけれど、何故かその頃の自分を酷く愚かに思うのは、きっと。
『ばかみたいだ、僕。』
はぁ、とため息を吐けば、ぐにゃりと視界が歪んだ。ぼやけた視界は、君の存在がとてもあやふやだから。透けて見えるその先はしっかりと形を持っているのに、当の本人といったら今にも消えてしまいそうな朧気な輪郭。
ばかみたい。ばかみたい。どうしてこんなやつに絆されてしまったのだろう。昔の自分を愚かに思いさえするのは、呆れや諦めじゃなくて確かに存在している情の仕業。これが恋かと聞かれたらそれはわからないけれど、仮にそうだとしたら僕はとても愚かで惨めだ。
『…何悩んでンだよ。』
頭の中がグチャグチャで、張り裂けそうなその時だった。急に眼前に広がる、半透明のもう一人の自分。吐息がかかりそうな近さに思わず息をつめたけれど、思念体なのだから関係ないといえばない。ただ意識的な問題が生じて、思わず目を逸した。近い、と意識して跳ねる鼓動。やはり自分は愚かしい。
『まぁ、筒抜けだけどなァ。』
さもおかしそうに笑い、揶揄の響きを含めて僕に告げる君はとても意地が悪い。僕の心中は全て掌握されている。全ての感情を勝手に読み盗られてる、という事は僕のこの絆されている、という結論もお見通し、な訳で。
ねぇ、君はとても、狡いよ。
だって僕は君の事何も知らないのに。
『なァ、宿主。』
ニィ、と口角を吊り上げる、という君独特の笑いを貼り付け僕を呼ぶ。君が内心嘲笑っているのであろう事も、懐柔しやすく体のいい都合の良い玩具のようにしか思われていないのも、
『こっち向けよ。』
――知っている。
なのにそれでも離れたくないと思うのは、君がとても飴と鞭の使い分けが上手だから。
『、ん。』
目を合わせると、実体も無いというのに降って来る優しい口付けが、僕の思考を停止させるから。
所詮真似事、といえどそこだけは存在しているかの様にじんわりと熱を持っていく様は、ただの思い込みにしたって十分すぎる程の破壊力。
起爆装置はいつだって君の手の中だ。コントロールするもしないも全権が委ねられているなんて、ばかみたいだけれど、それすらもう考えられない。
真似事の口付けがもたらす作用は絶大だ。
絆されていつの間にか利用される事すら嬉しいと感じるようになるのも、あと少し。
本当にばかだな、宿主、と、嘲り笑う君の声が聞こえた気がした。
眼球をべろりと嘗めあげられる。気持ち悪さと痛みに思わず反応して身を捩れば、満足そうな声が降ってきた。その声の主は辞めて、と言わない事に随分と満足している様だ。頭の片隅で、馬鹿だなぁ、と思う。そんなこと、当たり前なのに。
『悪趣味。』
ぎしり、と僕の肌に爪を立てて微笑む顔がとても自分と同じなのだとは思えない。加虐趣味の君が僕に与える物といえば少しの期待と大きな痛みだ。食い込む爪の鋭さも、ざらざらの舌の感触も、びりびりと体中を電気信号の様に駆け巡る。ああ、だめ、だめ。痛みで頭がおかしくなりそう。体のそこかしこから悲鳴と懇願が沸き上がるけれど、辞めてなんて絶対に言わない。目の前で喉を鳴らして笑うこの男がもっと喜ぶ事を知っているから。そしてそんな正論を覆すくらい辞めてほしくない自分を、知ってしまったから。
痛みなんてもの、一通り耐えた後のボロボロの僕を見てやり過ぎたか、と焦るお前を見る時の優越感に比べれば大した事は無い。意識を手放す瞬間の、焦って僕の名前を呼ぶお前の顔に比べれば。
『いいから、』
早く、とねだる僕を他人に理解して貰おうなんて思わない。きっと今僕はとんでもなく愚かで、被虐趣味で、とうに常人の範疇を超えている。こんな趣味はなかった筈なのに、君と出会ってしまってからいとも容易く道を踏み外してしまったんだ。だって僕を乗せるのは至上の泥船。他人からしたら自分で自分を傷付けているのだから、気違いだと思わずにはいられないだろう。まったく、馬鹿げた固定観念だ。
ひいては僕を傷つけられるのは僕だけなのだ。なんて素敵な自己愛なのだろう。
同じ様ででも違う、もう一人の自分に擦り寄ってねだる物は、甘い接吻の疑似体験。
薄い唇を割って赤い舌先を見せつければ、ぎらぎらとした犬歯が弧を描いた口許から覗いた。
噛み千切られる事はないにしても、その刃を突きたてられる衝動はきっと計り知れない。ああ、とんでもなくぞくぞくするね。
意識が無くなる寸前のぎりぎりの駆け引きは、今日もきっと僕の勝ち。
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
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