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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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『だーれだ?』

テナーに近いやや高めの声の主は彼の両目をその手で塞ぐ。
幼少時誰もが少なくとも一度はやったであろう筈の遊び、物当てゲーム、尤も今此処には彼ら2人しかいないのだが。
窈窕とした雰囲気がその幼い遊戯と相まって白く白く何か、何処か映える。

『何がしてぇんだ。』

突然の行動に少々の事では驚かない彼すらも、驚愕。



『だってお前、僕の名前呼んでくれないんだもん。』



宿主、と少々癖の或る呼び名が定着しているのか、不思議な事に名前で呼ぶという項目は含まずして傾向。
意図しているのかいないのか、それは関与すべき問題では無くてもうどうでもいいのだけれど。



『僕の名前が解らない訳じゃ無いんでしょ。』



後ろ、上、頭上か上下か嗚呼何だかそれすら曖昧だ。
防がれた視界はもう何も映していない。ハイリスク、ハイリターン。
意味の無い情景賛歌、美化して思えるのは『宿主サマ』の、脳裏に浮かぶ微笑。
呼んで欲しいと素直に云うよりも憎らしく幼くてけれど冴えたやり方。
人為的な闇は寧ろ彼にも好都合。



気が向いたら、向くまで、さて何時になるのやら。
指の感触を瞼に感じて何処までも境界線が見えない、現象。
嗚呼それすらもうどうでも良くて。



冴えたやり方。宿主サマ、の。苦肉の策と云うべきであろうか。
耐久レースはこの体勢のまま、さぁ開始の合図は、手の甲に落とす唇で。











『気が向いたら』















さて、何時になるのやら。
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酷い、なんて言ったって無駄だという事は判っている。何時だってお前は自分勝手で自己中心的で利己的で、そして僕の事なんてまるで眼中に無い。只自分の野望を達成する為に僕が必要なだけで、用済みになれば躊躇いもせずに僕を捨てるだろう。そんな事は知っているけれど、それでも気紛れの優しさに翻弄されてしまう自分は何て単純なのだろうか。
『まだ痛むか?』
『・・・もう平気だよ。』
そうか、と呟いてまた無言になるお前は一体何を考えている。つい先刻の事だ。傷、見せてみろ。いきなりそう言ったかと思うと、僕の腕に巻かれた包帯をしゅる、と解いた。今度は何をするんだ、やめて、と恐怖に竦む僕に向かって安心しろ、とお前は言った。手当てしてやると、と続いた言葉は、想像の範疇を超えていた。




きつい消毒液の香りと包帯の清潔感が覆い隠していた傷は、意外と深い。
もっとも、思い切りナイフを突き立てたそうだから当然なのだけれど。それでも血は止まり、あとは瘡蓋が出来るのを待つばかりだった。僕としてはこの忌々しい傷を忘れてしまいたかった。君が手当てしてやる、だなんていわなければ、忘れてもいい位だった。どうしてこんなタイミングで、と問い詰めたくもなるけれど、やはり気紛れなのだから仕方が無い。
『悪かったな。』
僕の左腕を取り、傷口に顔を顰めながらそう呟いたお前のその言葉だって、気紛れなんだろう。
悪いなんて思っていない筈だ。自分の所有物には何をしたって許されるとでも思っているに違いない、お前はそんな最低な男なのだから。ご機嫌取りのつもりか、計算の上に成り立つ嘘っぱちなのか。僕には計り知れないけれど、どうせそんなところなんだろう?
『いいよ、もう。』
だから何も考えない様、思考を中断させて突っ撥ねた。どうしたって良い様に解釈しそうになる、愚かな自分が鎌首を擡げない為に。こいつは僕を傷つけるだけの存在だ。遊び半分で優しいだけだ。明日にはまた酷い人になるかもしれない。平気で僕を痛めつけるかもしれない。そうやって言い聞かせて、早く僕を解放するように願う。だって、君に握り締められた腕が熱いんだ。意識しないようにと視線を逸らしたって、其処だけはリアルな熱が伝導する。強く握られてる訳でもないのにやけに存在を認識してしまう、壊れ物に触れるかの様な優しさに包まれていて、泣きそうになる。だから僕は単純なのだ。学習というものをまるで出来ない。
どれだけ傷つけられたって、結局は此の気紛れに蕩かされてしまうんだ。馬鹿げているね。
『俺様を信じろ。』
きゅ、と腕を先刻までより強く握られて、逸らしていた視線が絡み合う。嗚呼、真剣な顔をしているね。そんな顔をしたって無意味だよ、と言いたいのに、開いた唇からは言葉が紡がれない。信じろ、なんてどの面下げて、と、揶揄の台詞も全て飲み込まれてしまう。かき消されてしまう。無言の僕を訝しく思ったのか、君は今度は傷口に唇を寄せた。噛み付かれる、とびくりと強張る体にはけれど、牙が立てられるなんて事は無かった。変わりにぬめりとした舌の感触が全身を粟立てる。
傷口を舐められているんだ、と気付いたのは、舌が這いだしてから数秒立った後だった。
『な、なに・・・』
まだ完全に瘡蓋になっていない傷口は薄い皮膚の下から肉が見えている。其処を舐められるのだから、びりびりとした痛みが拡がるのは当然だ。
けれど今まで付けられたどんな傷よりも、優しかった。
困惑したままに見つめていると、傷口から唇が離れた。




『消毒』




さも当然、のようにそう告げて、僕の瞳を覗き込む。先ほどとまるで変わらず、真剣な表情だった。
もしかしたら本当に、なんて都合の良い解釈が頭を占領していく。それも君の戦略だったとしても、もう、構わなかった。それでいいや、と思ったからかもしれない。痛む傷口が唾液に濡れて、麻痺しているからかもしれない。




けれどもう、それすらどうでもいい。




どちらから ともなく近づいた唇に全てが掻き消される事を、理解したから。
痛みは口づけの中、霧散していった。



耳に甘く歯を立てて、君の体の中鈍い痛みが電気信号の様に駆け巡れば、
其れがいつもの合図だから。
いつのまにか暗黙の了解になっていた、狼煙。




空腹の紛らわせ方




どうしてそうなったか、は判らない。けれど多分腕を首に回すよりも、其の方が確実だったからだ。わざわざ僕の方から抱いて、なんて言わなくたって、其れで気付いて貰えるというメリットが存在している。軽く濡らす様に舌先で耳の感触を楽しんで、そうして眉根を寄せる一瞬の表情に満足した後、君の其の耳に歯を立てる。
痛みが鈍く体中を駈け巡りぞくりと背面を波打つ感覚は、始まり以外の何者でも無い。
『お腹空いたね。』
そう云うと、それから漸くぐるりと君の首元へと腕を回した。目線は合わせず、そのまま引きずるかの様に床へと雪崩れ落ちる――けれど其処が床で在ろうが寝具の上で在ろうが、僕にはどうだって良かった。これ以上無いという位、空腹だったからだ。外に出かけるのが億劫で家の中でだらけていても、生存本能が働いて腹はへる。とは言え、冷蔵庫に食べ物が存在していたかなんて、曖昧だ。もう大分前に食べ尽くしてしまった様な気がして確認する気すらおきない。せめて食料確保のために外に出ようかとも思ったけれど、ちらりと目線を窓へと移行させた時に見えた外の景色が雨模様で、外出する気もすっかり失せてしまった。
だからこうして、時間稼ぎで空腹紛れの安易な行為に走ってしまうのだ。
ね、と同意を求める様にようやく君の顔を覗き込むと、益々眉間に皺の寄った表情が視界に広がる。乗り気じゃないのかな、とも思ったけれど、とにもかくにも君だって空腹では在るのだから、快楽に埋もれてしまえば楽なのだ。
だからそのまま、君も回された腕を振り解くなんて愚かな事はしなかった。誘いを受ける形で手は下へ下へと滑り落ちる。
勿論、君の顔にはまだ苛ついた感が否めない険しい表情が張り付いていたけれども。
僕の誘いを受けた時点で選択肢なんて用意されてないんだから、諦めてね。




『お前だけ喰べて生きていけたら良いのになぁ。』
そう云って求める様に君の唇を割って入って絡めた舌先から、
『それで、お腹いっぱいになれたらなぁ。』
そう言って突き放す様に君の歯を舌先で舐め取ってから、




耳に甘く歯を立てて、痛みが鈍く体中を駆け巡る様に噛みつく、
合図から始まる、紛らわせる為だけの甘い行為を、此から押し寄せる快楽を、感じながら。
生きて行けたらなぁ、ともう一度、小さく呟いてから目を閉じた。




この世には2種類の人間が存在する。思いつきで行動する人間と、計画立てて行動する人間である。そして了はどちらかといえば前者で、バクラはどちらかといえば後者だった。
『暇だね!散歩に行こうか!』
思い立ったら即行動。そんな言葉がぴったりの了はピンと思いついたらしい計画を実行に移すため、勢いよく立ち上がった。普段は面倒だと外へ出歩きたがらない性格のくせに、こういう時だけは驚く程アクティブだ。
『はぁ!?何だよいきなりだなオイ!』
バクラはあまりにも突然な了のお誘いにもっともな台詞でツッコミを入れた。芸人顔負けの素晴らしいキレだ。大邪神かつ遊戯王界のラスボスであるバクラを此処まで振り回せるのは了だけであろう。
『いいの!行くの!ほら、5分で支度するよ!』
思い立ったが吉日。其れを如実に現す了らしい発言に、バクラはぶつくさと文句を垂れた。勿論、無駄だとは知っているけれど。飲まなきゃやってられない、というサラリーマンの気持ちが今なら良く判る、とバクラは思った。何故今のタイミングで外に出なければいけないのだ。セミの鳴き声が鬱陶しい事この上ない、7月も半ば。大人しく空調の効いた家の中でごろごろするのが得策なこの季節に、どうしてわざわざ外に出なければいけないのであろうか。
『せめてもう少し計画立ててからってなら判るけどよォー・・・』
バクラはぼそっと、了には聞こえないように抗議した。聞こえているとどんなに辛らつな言葉を吐き捨てられるか判らないからである。よくもまぁラスボスをここまで恐れさせることが出来るなぁ、と感心せざるを得ない。
『何言ってんのー。毎回毎回中途半端な計画たてといて。詰めが甘いくせに。』
案の定ズバァっと、了は笑顔で切り捨てた。聞こえない様に呟いたはずなのに、恐るべき地獄耳である。マインドクラッシュは実のところ、了の方が得意分野なのかもしれない。そう思わせる程の毒舌ぶりには白旗を挙げる他無かった。
結局、了の発言が全てなのだ。バクラに発言権なんてものは存在しない。
まさか此処まで立場が逆転しようとは、誰も想像できなかったであろう。
とにかく了の機嫌を損ねないように5分で用意するしかもう、道は残されていなかった。




*******************************************************************




『てゆーか暑すぎるんだけど。誰だよ外に行こうとか言ったの。』
『や、宿主が・・・』
『五月蝿い。』




照りつける太陽の余りの激しさに勇んで家を出たものの、3分もたたずに理不尽な文句を言う了に、全バクラが泣いたのは、また、別の話。




『ねえ』
千年リング、という物体に宿るお化けみたいな存在に話しかける。
たかが無機物だと言えど確かに其処には君が存在していて、まったく、科学なんて何の根拠にもならないなぁと思った。
君は眠っていたのかしらないけれど酷く不安定なビジョンで現れて。
それでも律儀に僕の問いかけに答える。
『なんだよ。』
ぶっきらぼうに聴こえるけれど、此れが君の自然体なんだよね。
そう気付いてからというもの、畏怖の存在から一転して興味の対象になっていった。
千年アイテムの秘密を知りたいと思っていたけれど、今はそれよりも気になる事が出来たと言ったら、君はどんな顔をするかなぁ。
君の事をもっと知りたいよ、なんて、僕は少し可笑しいんだ。




『昔の君ってどんなだったの。』




色々聞きたいことがたくさんあって。
時間が足りないとすら思っていた。
すきな食べ物、好きな場所。
そういう取り留めの無いことを質問しては、くだらないと言いつつも答えてくれていたから。
だから自惚れていたのかもしれない。
何を聞いても教えてくれると思っていたのは事実で、今この瞬間、何も考えずの発言だって、ちゃんと答えてくれると思っていた。
けれど、その質問は君にとってのタブーだったらしい。
さっと表情に陰りが見えた、と思うや否や、まるで初めて出会った時の様な冷たい声音で返される。
『お前には関係ない。』
ピシャリと言い放たれて、背筋が凍る。
誰にでも聞かれたくない事はある、という事をすっかり忘れていたと気付いたときには、遅かった。
ごめんなさい、と謝る暇もなく君はリングの中深くに引っ込んでしまったらしく、姿が見えなくなってしまう。
自惚れていたんだ。
世界を滅ぼそうとする悪者はけれど僕にだけは優しいと、勘違いも甚だしい。
なんだか呼吸器に穴が開いたみたいだ。




呼吸器をも貫く大きな風穴。
息を吸い込んだって其処からひゅうひゅうと抜けていってしまう。
言葉は鋭利な刃物の形をしていると言うけれど、きっとそれ以上だ。
君の存在そのものが僕にとっては茨の棘。




君の一挙一動に驚くほど狼狽してしまう。
ナイフに抉られた心は、君が許してくれるまでぽっかりと開いたままなのだろう。
見えなくなってしまった君にうわごとのように何度もごめんなさいと、繰り返した。
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HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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