9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
僕は君に隠し事なんて出来ない。心の内を全て掌握されている、という事は包み隠す事すら出来ず、全ての感情を垂れ流しにするも同じという事だ。なんというか、やってられないよ。
『君に見せない様に鍵をかける事は出来ないの。』
何も全てに鍵をかけさせろ、だなんて言ってない。けれど人には触れてほしくないものが一つや二つは存在するものだ。プライバシーの侵害もいい所だ、と非難してみた所で君にはまるで効果が無い事も判っているけれど。
『無理だな。』
判ってはいたけれど、至極あっさりと撥ね付けられてはぐうの音も出ない。せめてもう少しオブラートに包んでほしいものだ、と言ってやりたいが、君にそんな芸当は不可能だものね。僕には君の心全ては読めないけれど、君という人物像は大分読めてきた。君が僕の心を全て把握していても、僕だってきっと其の半分くらいは君の事を理解出来ている筈だと言わせて欲しい。君の心に立ち入る事は出来ずとも、僕は君の表情だとか仕草だとか、そういったサインを見逃さない。腕を組む、だとか、眉根を寄せる、だとか、そういう判りやすいサイン以外にも、眼球の一瞬の動きだとか、それこそ目には見えないオーラだって、カテゴリ分けが出来る程には理解したよと自負したいんだ。
君に対して秘密のサインを作る事が不可能だとしても、君の秘密のサインを読み取るぐらいは、許してほしいね。
【ラヴカップルに10のお題】 :ユグドラシル 01:SECRET CODE
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大きな空が泣き出した。
あまりの大泣きぶりに僕と君も大慌て。
僕には此れを凌ぐ傘も合羽もなかったから、
祈るように走り続けて、
そうして見つけた垣根の下で、
思いもよらない二人だけのおしゃべりタイム。
『濡れちゃった。』
『風邪ひくぞ。』
『その時は、変わってね。』
『ばーか。』
タオルみたいなものがあれば良かったんだけど、やっぱり現実は甘くは無くて。
ハンカチくらい持ち歩けと怒られた。
通り雨が僕の隣に浮かぶ幽霊みたいなこいつを、変わりにお母さんみたいにして、
ぽたぽたと雫が伝わる髪も、ぐっしょりと濡れた服も、どうにかしろと喚きだす。
此れ位でやられる程やわな身体はしていないと思うけれど、
君がそうやって心配してくれるから黙っておいた。
雨は相変わらずざあざあと降り続けて一向に止みそうに無い。
『暇だね。』
『やまねェな。』
『何か面白い話してよ。』
『無茶言うな。』
ばーか、とまた言った君はとても極悪人には見えなくて、何だか嬉しくなる。
気まぐれな空の突然の恵みは、この世界を潤すだけでなく僕の心も浸らせるから、
雨は嫌いだなんて言っていた自分を訂正するね。
どうかどうかまだ止みませんように。
てるてるぼうずも逆さに吊って、
どしゃぶりの空に祈るように、
走り続けて辿り着いた先が此処でよかった、と思う。
他に誰も居ないから、独り言に見える僕たちのお喋りも気にならないんだ。
『傘』
『え?』
『傘、盗んできてやるぜ。』
『やだよ。僕の身体でしょ。』
『バレやしねェさ。』
『万引きは犯罪なの。』
そんな釣れない事言うなよ、なんて言う君。
釣れないのは君じゃない。
まだ雨足も酷いこの空の下、
また走り出してコンビ二で傘泥棒なんてナンセンスだ。
せめてこの雨が止むまで此処に居ようよ。
此処に居たいな。
君とこうしてゆっくり話す機会なんてそう無いんだから、
本当はずっと此処に居たいのに。
雨がやんでも此処に居たいのに。
『まだいいの。』
『風邪ひくといけねェだろーが。』
『だから、変わってくれたらいいじゃない。』
『またそれか。』
『無限ループ地獄だね。』
ぐるぐる巡って会話も振り出し。
意味が無いなんて言わないでよ、
ちゃんと意味はあるんだから。
今、
此処で、
君と、
こうしておしゃべりをする事にこそ意味があるんだから、
会話を途切れさせないで。
無意味なようで有意義な、無限ループに陥って。
『風邪。』
『え?』
『風邪、ひいたら。』
『うん。』
『その時は、』
『変わって、くれる?』
『ばーか。』
最初と同じ台詞で終わって、
けれど格段に紛れた言葉が、
違う意味を含んでいると知ったから。
繰り返す会話も、やまない雨に掻き消されても構わないかもしれないなぁ、なんて。
やけに乙女チックな思考回路が、
ぐるりぐるりと加速する。
『考えといてやるよ。』
わぁ、明日もきっと、ずっと雨だ。
『デレ期?』
『なんだソレ。』
『ナーイショ。』
ふふふ、と笑って君をみつめて、
風邪ひきますように!と、
僕はこっそり、そう願った。
もう目覚めないで。他の誰も見ないで。僕だけのものになった君を心の中に閉じ込めて蓋をしたいから。
それでいいのかと問われたら僕は笑顔で答えるだろう。
願っても無いと。
闇の意思は消えたから安心してねと言われて、咄嗟に作った偽りの笑みは上出来だった。まるで君が僕の真似をしていたみたいに僕は僕の真似をした。とても上手く笑えていた、と褒めてくれる人なんていないから自画自賛しておく。君が居たらきっと、“困ったご主人様だなァ”なんて揶揄する様に褒めてくれたのだろうけれど。
『・・・馬鹿な宿主だ』
ぽつり、と落とした声は勿論僕のものだったけれど、君に囁かれているかのような錯覚を起こす。それも当然だ。闇の意思は消えた、なんて言われたところでそもそも馬鹿げた話なのだから。君は消えていないよ。邪悪な意思がそんなに簡単に消え去る筈無いじゃないか、と告げたくなる心を叱咤して、乾いた笑みを貼り付けただけなんだ。君は消えていない。消える筈無いんだ。
『僕の中で眠っているだけだよね。』
だってそうでしょう。永遠の宿主に決めた、なんて勝手な事を言っておいて、それで消えてしまうなんて有り得ない話だ。君は僕の中で眠り続けているだけなんだ。眠っている君は大人しくて、そして心の拠所みたいな不思議な存在感を放ち続ける。君の声が聴けないのは至極残念だけれど、どうか眠ったままで居てほしい。もう目覚めないで。勝手に何処かに行かないで。そうすれば君は僕だけのものだから。
永遠に僕の眠れる王子様でいてくれる筈だから。
心の中に閉じ込めて、僕から逃げられなくするんだ。
それでいいのかと問われたら僕は笑顔で答えるだろう。
願っても無い、と。
薄明かりが照らす君の横顔はやはり君のものだった。勿論いくら別の人格だといえど、本来は自分の顔なのだが。雰囲気だとか顔つきだとか、色々な部分が異なっている所為で、どうしてもこれが自分だとは思えない。
『何見てんだよ。』
僕の視線に気付いた君は訝しげな顔をした。どうしてそう喧嘩腰なのかなぁ、と思いながら、呆れ半分に何でもないよと返答する。どうやったら僕の顔でこんなに凶悪な目付きが出来るんだろう、とまじまじと見つめるとばつの悪そうな顔をされた。どうやら君はじっくりと観察されることに慣れてはいないらしい。そういえばこんなに君の顔を凝視したのは初めてだった気がする。溶かすような熱視線に居心地の悪さを味わっているのだろうか、なんて思うとすこしおかしいね。たじろぐ君なんて早々見れたもんじゃない。
『何でもないっつった割にしつけェなァ。』
チッ、と音が鳴る舌打ちに加えて大きな手が眼前に迫る。目隠しのつもりだろうか。いくらなんでも透けた手のひらで遮ろうなんて、無理も承知だろうに、お構いなしに視界を遮る其の手の平だって、元はと言えば僕のものだ。それなのに君が所有しているというだけで、どうしてか雄雄しく見えてくるのだから不思議な話だ。威圧感とかそういった類の所為なのかな、とふと思ったけれど、今の君にギラギラ光る空気を感じない。むしろ戸惑いが含まれていて思わず笑ってしまいそうになる程だ。ああ、でも僕が笑ったらきっと君は怒るでしょう。だからぐっと我慢して、君の手に覆われたままにまっすぐ君を見つめ続ける。半透明な手の平を透かして見る君の顔は今までとちょっと違って、それがとても新鮮だ。
仄暗い月明かりの下だから余計にそう思うのだろうか、と、君の表情を空の所為にする僕は浅はかなのかな。
『いいじゃない。減るもんじゃ無し。』
僕の勝手、とへらず口を続けると、思った通り君はクソガキが、なんて悪態を吐いてきた。酷いなぁ。確かに3000年生きてきた君からしたら僕はとても子どもかもしれないけれど、今は僕と同じ見た目なのだから君だって高校二年生という自覚を持つべきだ。世界の邪神様のくせに保護者みたいな口ぶりで、僕を丸め込もうだなんて、君だって十分子どもなんじゃないのか。そう思いそのまま顔に出すと、少しだけ眉根を寄せながら唇の片方を吊り上げた。仕方ねぇなぁ。まるでそう言いたいような、そんな顔は初めて見たよ。いいね、其の顔、とても好きだな。
『僕お前の顔、好きなんだもん。』
だから、やっぱり僕の勝手。
半透明な手の平を透かして見る君の顔は、一瞬ぱちくりと目を見開いて、そして次の瞬間とてもばつの悪そうな顔に変貌を遂げた。先刻まで気にもならなかった、邪魔にならない筈の手の平が少し邪魔だと感じる、それ程に貴重な顔だった。これはまさか、と僕の顔もどんどんと君と同じような顔になっていく。あれ、こうしてみると、少し近いかもしれない。似ているかもしれない。やっぱり、君の顔は僕の顔なのだと、初めて思った薄明かりの空の中。
初めて君に自分の面影を感じ取り、今日は初めてだらけだと星明かりの下で思う。
薄暗い月光の下で見た色々な表情の君を僕はきっと忘れないだろう。
こんなに甘ったるい夜はもう訪れないかもしれないから。
『ったく、今回は俺様の負けにしといてやるぜ。』
そう呟いて君の手の平が僕を抱き寄せるかの様に背に回り、僕が好きだと言ったその顔が近付いてきた。
実体の無い君の唇を拒絶する意味は何処にもなくて、僕もまた其の背へと手を回す。
月明かりの下での真似事のキスは、とても、優しかった。
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HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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