9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
薄明かりが照らす君の横顔はやはり君のものだった。勿論いくら別の人格だといえど、本来は自分の顔なのだが。雰囲気だとか顔つきだとか、色々な部分が異なっている所為で、どうしてもこれが自分だとは思えない。
『何見てんだよ。』
僕の視線に気付いた君は訝しげな顔をした。どうしてそう喧嘩腰なのかなぁ、と思いながら、呆れ半分に何でもないよと返答する。どうやったら僕の顔でこんなに凶悪な目付きが出来るんだろう、とまじまじと見つめるとばつの悪そうな顔をされた。どうやら君はじっくりと観察されることに慣れてはいないらしい。そういえばこんなに君の顔を凝視したのは初めてだった気がする。溶かすような熱視線に居心地の悪さを味わっているのだろうか、なんて思うとすこしおかしいね。たじろぐ君なんて早々見れたもんじゃない。
『何でもないっつった割にしつけェなァ。』
チッ、と音が鳴る舌打ちに加えて大きな手が眼前に迫る。目隠しのつもりだろうか。いくらなんでも透けた手のひらで遮ろうなんて、無理も承知だろうに、お構いなしに視界を遮る其の手の平だって、元はと言えば僕のものだ。それなのに君が所有しているというだけで、どうしてか雄雄しく見えてくるのだから不思議な話だ。威圧感とかそういった類の所為なのかな、とふと思ったけれど、今の君にギラギラ光る空気を感じない。むしろ戸惑いが含まれていて思わず笑ってしまいそうになる程だ。ああ、でも僕が笑ったらきっと君は怒るでしょう。だからぐっと我慢して、君の手に覆われたままにまっすぐ君を見つめ続ける。半透明な手の平を透かして見る君の顔は今までとちょっと違って、それがとても新鮮だ。
仄暗い月明かりの下だから余計にそう思うのだろうか、と、君の表情を空の所為にする僕は浅はかなのかな。
『いいじゃない。減るもんじゃ無し。』
僕の勝手、とへらず口を続けると、思った通り君はクソガキが、なんて悪態を吐いてきた。酷いなぁ。確かに3000年生きてきた君からしたら僕はとても子どもかもしれないけれど、今は僕と同じ見た目なのだから君だって高校二年生という自覚を持つべきだ。世界の邪神様のくせに保護者みたいな口ぶりで、僕を丸め込もうだなんて、君だって十分子どもなんじゃないのか。そう思いそのまま顔に出すと、少しだけ眉根を寄せながら唇の片方を吊り上げた。仕方ねぇなぁ。まるでそう言いたいような、そんな顔は初めて見たよ。いいね、其の顔、とても好きだな。
『僕お前の顔、好きなんだもん。』
だから、やっぱり僕の勝手。
半透明な手の平を透かして見る君の顔は、一瞬ぱちくりと目を見開いて、そして次の瞬間とてもばつの悪そうな顔に変貌を遂げた。先刻まで気にもならなかった、邪魔にならない筈の手の平が少し邪魔だと感じる、それ程に貴重な顔だった。これはまさか、と僕の顔もどんどんと君と同じような顔になっていく。あれ、こうしてみると、少し近いかもしれない。似ているかもしれない。やっぱり、君の顔は僕の顔なのだと、初めて思った薄明かりの空の中。
初めて君に自分の面影を感じ取り、今日は初めてだらけだと星明かりの下で思う。
薄暗い月光の下で見た色々な表情の君を僕はきっと忘れないだろう。
こんなに甘ったるい夜はもう訪れないかもしれないから。
『ったく、今回は俺様の負けにしといてやるぜ。』
そう呟いて君の手の平が僕を抱き寄せるかの様に背に回り、僕が好きだと言ったその顔が近付いてきた。
実体の無い君の唇を拒絶する意味は何処にもなくて、僕もまた其の背へと手を回す。
月明かりの下での真似事のキスは、とても、優しかった。
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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