9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
首筋に残る傷跡は闇に支配された弟の忘れ形見だった。今はもうかさぶたになっていて、2、3日中には癒えるであろう事は容易く想像出来る。闇に打ち勝ち光を見出した実の弟はけれど、そんな弱々しい傷跡でさえ嫌悪の表情を見せた。
『これ、あいつの所為だよね。』
すぅ、と実弟の指先が私の首筋を伝う。あの男に歯を立てられたその場所に。その指は這う様に押し寄せ傷跡をなぞり、そしてまた、彼の顔は申し訳無さそうにくしゃりと歪められた。
『もうすぐ消えるわ。』
何でも無い風を装い、取り繕った。優しく温厚な実の弟は私の首筋に残る傷跡を、自分の所為だと責めている。あいつの所為、と言いながらも、その元凶は自分なのだと思い込んでいる。
違うわ、貴方の所為じゃない。貴方とあの男は別人なのだから、貴方が気に病む必要なんて何処にも無い。
――けれどその言葉は心の中で反芻されただけで、遂には発される事は無かった。
余りに悲痛な顔で見つめられて、慰めの言葉は無意味だと悟るしか、無かったから。
『姉さん。』
皮膚の上、噛み傷の跡をなめらかに滑るその指が、私の言葉を遮る。貴方は私の事を“姉上様”とは呼ばない。昔から今までの間一度たりともそんな呼び方をしなかった。
だから気付いて。貴方は貴方で、あの男とは違うのよ。こんな些細な傷跡に揺さぶられたりしないで。闇に囚われ闇が姿を現したりしない様に、私の事を気にしてはいけない。
けれどやはりその言葉すらも、口をついて出てこなかった。
ごめん、姉さん、ごめん。
何度も何度もそう呟く自分の弟の悔しそうな声に、掻き消されてしまったから。
その重圧に飲み込まれてまた首筋の傷が疼いた様な、そんな気がした。
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君は一つ重大な過ちを冒した。選択を見誤ったという事だ。3000年も生きてきたというのに、馬鹿げた話だ。
『や、・・・ぬ・・・』
『聞こえないよ。』
ぎり、と首を絞める。締め上げる。血液が上手く循環出来なくてこの掌の下で藻掻いているのか、と見当違いな思考を巡らせながら君の首筋に力を込める。二心同体、という事は僕は今自分で自分の首を絞めているに違いない、という事なのだ。文字通り。きっとこんな経験は、なかなか無い。
僕は何も君が嫌いだからとか、君を消し去りたいからとか、そんな単純な思惑で動いているわけじゃあ無いよ。
『ねえ、どうして僕なんかの所に来たの、お前。』
偶然でも故意でも、其れは君自身にとって最大にして最悪の選択ミスだった。悲願の復讐を果たすのに、僕を選んでしまった事が、最初から間違いだったのだ。僕という体の良い隠れ蓑を見つけて安堵したかもしれない。これで大丈夫だとたかをくくったかもしれない。
けれど、元より僕なんかを選んでしまった事がそもそもの間違いなのだから、君にはきっと、勝ち目なんて無い。
『お前、絶対負けるよ。勝てっこないよ。』
ぎりぎり、と首を締め付ける。強く強く。けれど僕を睨め付ける瞳は依然鋭いままだった。ああ、その瞳だけで射殺せるのなら、君にだって勝ち目があるのかもしれないけれど、たった一人立ち向かって行くには、君の敵は強すぎる。
もう復讐なんてやめて、此処に居てよ。ずっと此処で僕と暮らそうよ。
憎まれるべき借宿に思いを寄せられるなんて、君はとても滑稽だね。
『だから、行かないでよ。』
君は一つ重大な過ちを冒したのだ。僕を選んでしまったのだ。
僕という足枷を背負ったまま立ち向かうなんて自殺行為だと、君自身もきっと判っているのにね。
ぎゅうぎゅうと首を締め付けるのは、行かないで、の証。
何か言おうとするその口を黙らせる為の、最後の手段だ。
『聞きたく、無い・・・。』
昨日はばくばく絵茶きてくださった方々ありがとうございました・・・!
まじロンリーのつもりだったからこういろいろばくばくをみれて心が潤ったというか・・・!
私なんぞが開いて申し訳ないというか・・・!
いやー、きゅんきゅんですな。
そして絵茶中にノーマルいいよね!の話になり、ノリでイシュタール姉弟を書くことになったのですよ。
絵茶中に視姦のターンが参りましてね。消しちゃ駄目!といいながらえちゃちらちらみつつさっさか書いたので・・・今見直すとちょっと・・・てかんじだけども。
いやー・・・いいねいいねはまるね姉弟。
というか姉弟そのものがすきなので(今までのジャンルも姉弟多数)はまるだろうなーとは思ってました。NTの姉上様のデッキがいらっとくるから姉上様嫌いになりかけたけど^p^でもすき!
いや、ノーマルいいですよノーマル。
今までのジャンルはずっとノーマルだっただけに、懐かしさというかさぁ・・・。
姉弟はロマンだと思う。
てか姉弟書いたらやっぱセトキサも書きたいし城舞も書きたいし!てなるんだけど^p^
ジャンルもっさり増えてたらごめんなさい☆
そんなことしてバク獏間に合わなかったら本末転倒でっせ!
ワンクッションでコメントおへんじ!
ぎり、と首筋に歯を立てられて、思わず眉を顰めた。血を分けた肉親だというのにその姿はまるで別人だ。もっとも、闇に支配されたその出で立ちは、本来の弟の姿では無かったのだけれど。
『・・・やめなさい。』
きつく睨み付け牽制すると、闇に支配された実の弟はくく、とのど元で小さく笑った。まるで気にも留めていない、と言われているようでとてつもなく不快感に襲われる。動揺しては思うつぼだから取り乱したくはない。けれどそう思う心とは裏腹にぞわぞわと背筋を伝う嫌悪感を拭いきれない。
鋭い刃はその間にもどんどんと侵入を進めていて、ぷつりと肌の裂ける音が耳に響いた、と、知覚した途端、じわりと血の滲む感触。
吸血鬼の様に其の血を舐めとる闇の人格に蝕まれた弟に、嫌悪感や不快感ではない恐怖が初めて訪れた。
『マリク・・・!いい加減に・・・!』
この心情だけは気取られたくない。そう思い今まで以上にきつくきつく睨み付けたのだけれど、きっとそれすらお見通しなのだろう。ぴちゃぴちゃと舌が這う音が更に恐怖を、畏怖の心を、煽り立てる。
『マリ・・・!』
『違うねェ・・・姉上様・・・。』
にやぁ、と綺麗に弧を描いた口元と、そう呟いたと思った刹那に唇が首筋を離れてぶつかった、嘲る様な視線と。
『俺様を、主人格と一緒にしてほしくねェなァ・・・。』
続けられた見下したようなその一言が、闇の訪れを顕著に現す。
嗚呼、貴方は私の弟では無いのだ。
姉さん、と可愛らしく私の後をついてくる、優しく儚げな私の弟とは別人なのだ。
『私のマリクを、返しなさい・・・!』
もうほとんど残っていない自尊心を掻き集めて吐き出した台詞に、目の前の男は薄ら寒くなる程の嘲笑を浮かべた。
まるでそんな事は不可能だと言いたげな表情だ。
今度は何を言われるか、と身構えたけれど、しかし何も言わずにこの男はまた首元に顔を埋めた。
残忍な顔で、今までとは比較にならない程の苦痛を与える為に。
どうして、と譫言のように呟くのは実の弟に向けてであって、この男にでは無い。
まるで闇に捕らわれたかの様に、後はそれだけを繰り返す。
ぼんやりと薄れていく思考はけれど、この男という闇に飲まれていくであろう事だけは、知っていた。
夏も真っ盛りな8月中旬、日本は絶賛お盆期間である。死者をもてなすという風習を見習い、僕もきゅうりと茄子と割り箸でお手製の牛馬を作ってみた。行きは早く来れるように馬を、帰りはゆっくり帰れるように牛を。そうして死者に思いを寄せるのだ。テーブルの上にちょこんと2つ、野菜で作られた動物を並べ、こんな簡素な物で死者が戻ってきてくれるなんてお手軽だなぁ、と可愛げの無い事を考える。そもそも僕が呼び寄せようと思いを馳せている人物は、古代エジプトの邪神様なのだ。日本の風習に乗っかってひょっこり現れるなんて、思ってもいない。
『あーあ。』
テーブルの上で異様な存在感を放つ茄子を指先でつついてみると、ごろん、とバランスを崩して倒れてしまった。4等分された割り箸が突き刺さっているだけの不格好な代物だったから当たり前だけれど、それでもあっけない転倒には眉根を顰めてしまう。 馬のつもりで作っていた茄子が倒れて、なんだか軽い絶望に見舞われたからだ。
どうせ君は帰ってこない。
伝統ある日本の風習でも、それだけはどうしようもない。
『帰ってきてよ、ばか。』
ごろんと倒れてしまった茄子のように僕もごろんと寝転がった。
遠くなった天井を眺めながら呟いた本音は、しんと静まり返ったこの部屋に虚しく通り過ぎていってしまった。
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
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