9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
何時からだろうか。愛してる、と言わなくなったのは。薄っぺらい嘘を並べて、愛してると戯れ事を吐いていたあの頃と何が違うのだろうか。
『宿主、・・・』
唇を啄んで舌を絡め取る。歯列をなぞり口内を蹂躙すればすぐに苦しそうに腕の中で藻掻くお前に、言いようもない思いが募る。何という馬鹿げた思考だ。心地よさに胸が焦がれるなんて、とてもじゃないが自分らしくない。
けれど高揚感に突き動かされるのは実のところ、悪くも無かった。
『ん、ん・・・』
角度を変えて再度口付ける。一瞬の解放に酸素を取り込もうとしたのかひゅう、と息を吸い込む音が聞こえ、けれどそれを許してやる程優しくはない。すぐにまた唇を塞いで深く深く、息も出来なくなる程に。
『っ・・・ふ、っ・・・あ・・・もう、息、っ出来ないかと、思った。』
『死にゃしねェよ。心の中なんだからよォ。』
漸く解放してやると、途端可愛くない事を言うお前に意地悪く笑う。そういう事じゃないと思う、とむくれられても、事実そうなのだから仕方がないだろう。此処はお前の意識の中だ。実際に呼吸困難に陥っている訳では無いのだから気にするな。
俺達はこの部屋で数え切れない程口付けを交わし、理性が飛ぶ程身体も交わし、永遠とも取れるような時間を共有してきた。ひとえに其れは体よくこの宿主を懐柔し、支配し、都合良く操る為だった。
その為に何度も口付けて抱きしめて、甘ったるい嘘を吐き続けたのだ。
そしてその目論見は驚くほど上手くいき、お前は俺という闇に飲まれた、筈だった。
筈だったのに。
抵抗もせず腕の中にすっぽりと収まるお前に、俺もまた懐柔されているとしたら、
『そういえばさ、』
『っ・・・何だよ。』
遠慮がちにぶつかる視線に、馬鹿げた結論を弾き出しかけていた思考を中断した。
淡碧色の瞳が言い淀み揺れる所にまた、ぐらりと傾きかけるけれど、それをも打ち消すように今度はちゅ、と触れるだけのキスを落とし、続きを促す。
観念したかの様に開いた唇が甘いと思う様になったのは、何時からだったのか。
『お前最近、愛してる、って言わなくなったよね。』
前はあんなに言ってたのに、と躊躇いながら言われ、図星を指されたとぴくりと身体が強ばるのを知覚した。確かにこいつを懐柔し、支配しようと思っていた当初は幾度となく心にもなく愛してると囁いていた。思ってもいない言葉にこいつの思考が揺れる様を見て内心嘲り笑っていた。
けれどそうなのだ。
最近の俺は、その言葉を囁く事がどうしても出来ないのだ。
薄っぺらい嘘を吐けなくなったのだ。
『・・・そんな事、ねェよ。』
『嘘、だって・・・!!ん!』
なおも言及しようとする唇を再度深く深く遮る。言葉を遮断し、荒い口付けに意識を持って行かれてしまえと、祈る様に舌を絡めた。
不安に感じる理由は無い。それ処か諸手を挙げて喜べばいい。
愛してるなんて、もう言えないんだ。
愛してないからじゃない。
ガラにもなくお前が世界で一番大切だと、気付いてしまったからだ。
薄っぺらい嘘を並べて、愛してると戯れ事を吐いていたあの頃と全てが違うのだから。
荒々しくけれど自分らしくもない優しい口付けで、どうかお前が此の意図に気付きますように。
【大好きなあなたに5題】 :SILENT SPEECH 05:愛してるなんて、もう言えない
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ああああああああああああああ。
落ち着け、落ち着け。
どくんどくんと心臓がやけにうるさくて、落ち着こうと思う心とは裏腹に僕を駆り立てる。
全身の血が逆流したかの様に身体はがくがくと震え、胃液が迫り上がる。
嘘だ嘘だ嫌だ嫌だ嘘だやめてあああああ。
落ち着ける筈が無い。嫌だ。やめて。どうして。何で。思考が滅茶苦茶で論理よく考えられない。
静かにしてよと僕は自分にそう叫び、
けれど鼓膜に響くどくどくと脈打つ心臓がそれを邪魔し、
そして堰を切った様に流れ出す涙が視界だけでなく思考も霞ませた。
僕の勘違いなんだ。
君の鼓動が聞こえないのは僕の心臓が五月蠅いからで、
君の存在を感じられないのは、僕の思考が混乱しているからで、
きっと僕の心臓が静まれば聞こえる筈なんだと。
絶望に陥りながらもそう言い聞かせる自分は愚かしい。
ああああああああああああああ。
静かになんてならない鼓動が、脳を揺らす。
どくんどくんと鳴り響く心臓が止まらなければ君の鼓動が聞こえないのか、なんて、
現実から目を逸らしながら、僕はひたすらに咽び泣いた。
嘘だ嘘だ嫌だ嫌だ嘘だやめて君が居なくなったなんて
嘘だ嘘だ嫌だ嫌だ嘘だやめて君の鼓動が聞こえないなんて信じないあああああ。
【大好きなあなたに5題】 :SILENT SPEECH 04:静かに! 君の鼓動が聞こえない
突然の抱擁はそれこそ、突如として沸き上がる感情の突き動くままに行動したからだ。愛おしい。狂おしい。憎らしい程に心まで支配されている。甘さに。
『何だよ、急に。』
抱き寄せるというよりは最早抱きしめるに近い抱擁に、君が眉を顰めるのは仕方の無い事だ。脈絡も何もあったもんじゃない。前後の文脈全て掻き消して抱きしめるのだ。何と衝動的で感情的なのだろうかと自嘲するけれど、それすらも上回る何かが僕を追い立てている。君を抱きしめて、どうかこの腕の中から離れていきませんように、と願うばかりだ。
『いいから・・・もう少しだけ。』
君の熱を感じさせて。現実の世界では意識体の君を抱きしめるなんて出来ない。虚構の世界でしか君に触れられない。そして、この世界しか僕と君は共有出来ないから。誰よりも近い筈の存在が、何故かとても遠い。
お願いだよ、バクラ。
心まで、抱きしめさせてよ。君が僕の心を支配して離さない様に。
『宿主。』
そ、と僕の頭に君の手が触れる。やだなぁ、何処で覚えてきたの、そんなの。傷付ける事しか出来なかった腕が、破壊を望む其の手が、僕の頭を優しく撫でている。壊れ物を扱う様な、優しい手つきで。
どうして君はそうやって僕の心を魅了して止まないのかな、と相変わらず腕の力を緩めずにそう思う。
お前のその、宿主、と呼ぶ声が浸透し、溶かしていくのだ。
抱きしめているのは僕で、心まで抱きしめられているのは、僕の方。
それでも突然の抱擁で、君の心も捕らえられたら良いのになぁと、
欲張りな感情が突き動かすままに、心の部屋の中で僕は君を抱きしめ続けた。
願わくば、どうか、君の心まで抱きしめられますように、と。
高望みかもしれないけれど、そう思いながら。
【大好きなあなたに5題】 :SILENT SPEECH 03:抱きしめて良い? 心まで
行かないで、なんて無理な話だ。縋り付かれたって、不可能だ。嗚咽を漏らすお前を置いていくことに心残りはあるけれど、負けてしまったからには仕方ないのだと、自分にも言い聞かせるように、呟いた。
『やだよ、やだ。やだ。いかないで。連れていって。』
ふるふると首を振って必死で説得を試みるお前に、ぐらつきそうになる心を叱咤する。この心の部屋ともおさらばか、とぐるりと見渡せば、此処数ヶ月で随分と風体の変わった部屋も感慨深くなる。お前は俺に出会い、人生を狂わされたのだ。良いように扱われて、心の部屋すら改ざんされて、それなのに従順に、まるで俺様が居なくなれば壊れてしまうと言いたげに縋り付いてきた。
馬鹿だな、と冷めた瞳で見つめて、鬱陶しい、と突き放す。
そう出来れば、どんなに良かったのだろう。
俺もまた、こいつと同じで、馬鹿みたいに絆されていた。
『宿主、無理だ。』
ごめん、なんてガラにもなく謝って、震える背に手を伸ばす。相変わらずしゃくり上げるお前を、置いて行かれるという恐怖だけが突き動かしている。
『無理だ。お別れだ。』
『駄目だよ、やだよ。お願い、いかないで。僕も連れていって。』
突き放す台詞を拒絶してなおも縋り付く。このままじゃお前も死んでしまうというのに、此方へと歩み寄るお前はとんでもなく愚かだ。
『地獄にお前を連れて行く訳にはいかねェよ。』
ううう、と泣き咽ぶお前の頭に手を置いて、永遠の別れの最後の挨拶だ。
『約束、守らなくて、悪ィ。』
どん、と突き放し、砂になって風に溶かされるように闇へと消えていく。
『絶対に守ってくれるって言ったのに、嘘吐き・・・』
お前の最後の呟きが、崩れ落ちる最後の身体に、染み渡る。
絶対に守ってやるという約束は、こうして、終止符を打った。
【大好きなあなたに5題】 :SILENT SPEECH 02:絶対に守ってあげるから
ガラにも無い。それ処か盛大に情けない。世界を滅ぼす大邪神様が聞いて呆れると自分で自分に絶望する。けれど敵わない、と何処かで諦めている自分も居て、混乱の極みだ。お前がどんなに訝しもうと、演技なのかと疑おうと、如何なる疑問も俺様の心の内には敵わないだろう。
お前を見てると、調子が狂う。
其れが何故なのか答えが判らない程耄碌してはいないけれど、判らないフリもしてみたくなる、というものだ。
『だから、騙されないってば。』
『そんなんじゃねェって。』
腕の中にすっぽりと収まっておきながら口だけは抵抗するお前も、既に心を許している。其れが狙いだったというのに、不満の残る自分を蹴り倒したくなる。ああ、馬鹿げている。どうかしている。
『じゃあ何なのさ。』
『俺様にも判らねェっつってんだろ。』
ふん、と鼻を鳴らす。其れは嘘だった。本当は全部判っていて、只知らないフリを続けているだけだ。
どうして抱きしめたくなるのか。どうして甘やかしたくなるのか。どうして、お前を大切だと思うのか。
それは単なる宿主という役目にしか見ていない頃とはまるきり違う感情が支配しているからだと、ちゃんと知っている。ヤキが回ったとしか思えない、バカバカしい感情だ。
『何それ。』
言いたくないから言わないけれど、と投げ出した台詞に、お前はふふ、と眉尻を下げて笑った。
其の顔にぐらりと傾く思考。
何て、情けない。
返事の代わりに背に回す腕の力をぎゅっと強めて、絆されていると白旗をあげる自分に、そっと、溜息を吐いた。
ガラにも無い。それ処か盛大な誤算だ。世界を滅ぼす大邪神様が聞いて呆れると自分で自分に絶望しながらも、それでも良いか、と何処かで諦めている自分も居て、混乱の極みだ。
お前がそうやって笑ってくれていたら、良いか、なんて。
【大好きなあなたに5題】 :SILENT SPEECH 01:笑っていて、いつでも
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年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
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Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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