9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
全ての器官を停止させるかの如く眠りにつく。深い、深い眠りだ。俺は負けたのか、と何処か他人事の様に穏やかに受け止める。何故躍起になってまで世界の破滅を願ったのだろうか、なんて今となってはもう判らない。あとは何もかもが浄化されたかの様に、晴れ晴れとした心で眠りにつくだけだ。死とはこういうものなのか、と客観的に感じ取った。幾多の人間を死の淵へと追いやったが、死とは絶望ではなく解放に近しいものだったのだ、と自分の番になってようやく気付く。悪くない気分だった。
『・・・いかないで。』
悔いは無い、と思う心とは裏腹に、ちりん、と胸の中に突っかかる最後の心残りが鎌首を擡げた。ああ、一つだけ残してしまった悔いがあったな、とどうしようも無い事実に気付き、初めて死への恐怖がふつふつと沸き上がってくる。お前を置いていかなければならないのだ。永遠の宿主と言っておいてこのザマだ、情けない。お前はこの俺様を見下ろしながらそう言うのだ。それならばまだ、救われる。
『置いていかないで。』
縋りながらそう言ったその顔は、どんなに悲壮な目に合わせたって、何時もまっすぐに此方を見ていた。僕はお前に絆されてしまっている。だから、滑稽でも何でもいいから、傍に居て。そう必死な形相で縋りついてくるお前を蹴り飛ばして罵倒するべきだったのだ。馬鹿馬鹿しい、と震える腕を払いのけ、絶対零度の瞳で威圧するべきだったのだ。今更そんな事を言ったところでどうにもならないが、受け入れたのも受け止めたのも自分自身だ。
絆されていたのは、実の所この俺の方だった。
『お前に負けてほしくない。』
『・・・其れはお前の大事な大事なお友達を裏切るって事か?』
酷く弱々しく呟いた言葉に奇妙な心情が浮かび上がったのも、覚えている。もしお前が何もかもを捨てて此方に来ると言うのなら、お前を連れていってやっても良いと思った。世界が終焉を迎えても、お前は永遠の宿主として生き永らえるのだ。何も無い世界に2人きりで、悠久の時を過ごすというのも、悪くは無い。
けれどそんな夢見がちな台詞を口にする事は無かった。其れこそ永遠に、だ。
『違う、裏切れないよ。だから、勝って、なんて言えない。連れて行って、なんて言えない。でも、置いていかないで・・・』
其の言葉がもしも無ければ、今頃お前は俺と共に朽ちていたのだろうか、と考えるが既に終わった事だった。お前は俺を選ばず、そして大事な仲間を選ぶこともしなかった。結局は釣り合いのとれた天秤の真ん中で、傍観していたに過ぎないのだ。卑怯で臆病な宿主様。けれど、そんな所も気に入っていた。そして、自分が思っていたよりも深く絆されていた。
手の上で踊らされていたのは、お前では無かったんだ。
お前は其処で黙って見ておけ、と突き放し、離別を選んだのは此方の方からだ。
永遠という儚い口約束は永遠に果たされないまま幕を閉じる。味気ない。
最後の心残りは、お前の心の内だけだ。
永遠の宿主と言っておいてこのザマだ、情けない。お前がこの俺様の亡骸をを見下ろしながら冷たくそう言い放てばいいのにという願いだけだ。それならばまだ、救われるから。
間違っても取り乱して泣き叫ぶことの無いようにと伝えられない事が、口惜しい。
お前自身が中立の立場で傍観を決め込んだのだから、今更そんな態度を取られても、もう責任は取れないぞ。
いかないで、ではなく連れて行って、と言ってくれたのならば、お前に永遠の愛を誓えたというのに。
【ラヴカップルに10のお題】 :ユグドラシル 10:ETERNAL LOVE
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綺麗に着飾って君を待つ。
女の子ならそれも可能だろうに、神様はなんて残酷なんだろうか。
WHITE DRESS
『やっぱりウエディングドレスは女の子の憧れなのよ。』
『真崎さんでもそんな事思うんだね。』
『ちょっと!獏良くん!』
『あはは、ごめーん。』
他愛無い休憩時間の会話の中に出てきた、なんて事の無い単語の節に、思わず眉根を寄せてしまった事を幸いにも誰にも気付かれずに済んだ様だった。負の感情を表に出さず、内に押し込むのにも大分慣れてしまったようだ。此れも君の忘れ形見なのかな、なんて思いたくもないから、慌てて湧き上がる感情を押さえ込む。既に君は過去の遺物だ。前を向いて歩いていく自分には既に思い出として処理するべき存在だ。それなのにこうしてところどころで僕の邪魔をする。君は本当に食えない奴だった。
『でも、杏より獏良の方が似合うんじゃねーのー?』
『ちょっと!城之内!何てこと言うのよ!・・・でも・・・そーかも・・・。』
女顔だもんなー、と振られて、返答に困る。いくら女顔で細身の体つきでも、男は男だ。所詮女性の身体をしている彼女には負けるだろう。綺麗に着飾って王子様の迎えを待てばいいんだから、気楽なものだ。
ウエディングドレス。純白の穢れ無き象徴が、愚かな過去の自分を際立てる。王子様を待っている訳でも、自分が少女の様に其れを待ち望む訳でもない。けれど、その単語が、どうしようも無く過去のやり取りをフラッシュバックさせるんだ。ああ、思い出したら、泣いてしまう。泣かないように、崩れ落ちてしまわないように、蓋をした事実が洪水のように溢れ出してきたら、もう止めようが無い。
『・・・獏良・・・もしかして、怒った?』
は、と気付いたときには、友人に心配そうに覗き込まれていた。返答が無かったことに、暴言だったかと焦っているようだ。馬鹿だね、そんな事ないよ。僕が友人に対して怒る筈ないじゃない。僕の沸点を湧き上がらせるのは世界中で只1人だ。
『違うよー。僕もね、似合うかなーと思ったんだ。想像してたんだよ。』
『お前・・・結構ナルシストだよな・・・。』
『そんな事ないよ。』
ふふ、と笑って上手く誤魔化せば、安心したかの様に笑いかけられる。そうだね、僕は自己愛の塊だから、ナルシストだと言われても間違いじゃないのかもしれない。けれど、そんな僕にだって、どうしようもなくなる存在が居たんだ。笑わせると思わないかい。
『酷いよ、この傷。』
『あァ?何マジギレしてンだよ。』
『だって、一生消えないじゃないか、こんなの・・・』
頭の中にフラッシュバックする会話が、駄目だと拒絶する心と裏腹に記憶を引きずりだしてくる。
既に君は居ないんだ。
だからこの先を思い出してはいけない。
そう思うのにどんどんと記憶は奥底へ奥底へと僕を誘う。ああ、理不尽だとは思わないか。思い出したくもない記憶だけがどんどんと蓄積し、蓋をして閉ざしてもいつの間にか眼前に迫っている。
今は駄目だ。みんなが居る。そう思ってももう、止められない。
『一生消えないようにしたんだから当然だろ。』
『っ、なんっ・・・で・・・』
『教えて、やろうかァ。』
ああ、駄目だって。駄目、駄目。その先は、駄目。
『一生、お前は俺様のモン、だからだよ。』
『なに・・・それっ・・・』
『ああ、キズモノになっちゃった・・・てかァ?なら俺様が嫁にもらってやるよ・・・!ヒャハハハハハ!』
がたん、と椅子から転がり落ちて、周囲の目が自分へと注がれる。
は、と気付いたときにはもう遅かった。はらはらと両の目から零れ落ちる水滴を、弁解する猶予も無い。
『おまっ・・・急にどうしたんだ!?』
『な、なん・・・でもっ・・・!』
ぐいぐいと乱雑に拭き取ったって、無意味すぎる行動だということは自分が一番良くわかっている。こんなにも情緒不安定になってしまう程にはまだ君が心に巣食っていたのか、と思うと情けなさにまた涙が流れるようだ。ああ、君のあの揶揄する為の台詞が、馬鹿にしたような蔑んだ台詞が、僕を奈落の底から引き上げてはくれない。洒落にならない、とはこの事だ。嫌になるよ。どうしたって君を忘れられない、と物語っている。どんなに待ち望んだって、君が迎えにこないことも知りながら、そんな風に女々しい感情が支配するんだ。
此れを未練がましいというのなら、もっと発言に気をつけてくれなきゃ困るよ。
綺麗に着飾って君を待つ。
女の子ならそれも可能だろうに、神様はなんて残酷なんだろうか。
僕はもう、誰も迎えに来ないことも、純白のドレスが似合わないことも、知っているのだから。
【ラヴカップルに10のお題】 :ユグドラシル 09:WHITE DRESS
『消えちゃった。』
座り込んで呆然と呟く少年の隣には、背格好の良く似た少年が佇んでいた。違う所と云えば、若干佇む少年の方が目付きが険しく、剣呑な雰囲気を湛えている、と云った所か。けれどそれ以上に差異なる部分を挙げるとすれば、其の少年は輪郭が朧げだった、という所だろうか。座り込んだまま俯く少年の身体を借りている、3000年前の亡霊だからだと云えば、少し語弊はあるものの其れで十二分に伝わるであろう。
『今度はどうした。・・・宿主。』
3000年の時を越えた亡霊は、座り込んだ少年をまたか、と言いたげな表情で見下ろしている。不可解な行動をする事はしょっちゅうらしい。宿主、と呼ばれた少年――名を獏良了という――はその言葉に反応し、俯いていた顔をあげた。随分と丹精な容姿をしているが、突拍子も無い思考回路をしているらしく、“不思議な人”と周囲からは思われているらしい。
『・・・バクラにも青い薔薇をね、見せてあげようと思ったんだけど。』
『・・・青い薔薇だァ?』
思ってもみない言葉に、バクラ、と呼ばれた片割れは思わず顔を顰めた。どんなに品種改良を繰り返したって青い薔薇は作れないと言う。不可能の象徴を一身に受ける、そんな花だ。見せるも何も、端から存在すらしていないであろう。馬鹿馬鹿しい、と思うが、けれど了は真剣な面持ちだった。勿論了も高校二年生であり、青い薔薇が実現不可能であること位知識として持っている筈なのだ。それなのに何故――そう思うが否や、バクラのそのような複雑な心境を感じ取ったらしい了が、口を開いて言葉を続けた。
『心の部屋に咲いてたんだよ。綺麗だから、君にも見せてあげようと思って、1本だけ持ってきたんだ。でも、やっぱり、消えちゃった。』
そこまで続けて、了ははぁ、と残念そうに溜息を吐いた。彼の心の部屋はとても不可解だ。独特の精神構造をしているが為に、実現不可能な花まで立派に咲かせていたようだった。なるほどそれならば合点はいく。どんなに実現不可能といえど、心の中に咲き乱れる分には十分すぎる程可能な所業だ。
『なんだ、そんな事かよ。』
『なんだって、何だよ。お前にも見せてやろうと思ったんじゃないか。』
合点がいったと納得するバクラの、けれど呆れたかのような台詞に了は反論の声をあげた。了としては綺麗に咲き誇る不可能の象徴を、彼にも見せてあげたいという善意からの行動だったというのに、なんだ、で片付けられてはやはり納得がいかないというものだろう。不満気に唇を尖らせてバクラを見上げる。
『其の顔、不細工だぞ。』
やめとけ、と言うが早いか、バクラは了の目線にあわせるかの様に座り込む。勿論同じ身体の共有者なのだから、目線はぴたりと同じ位置に合わさった。
『俺様がそっちに行きゃァ問題ねーじゃねェか。』
心の部屋、と了の胸をとんとんと叩く。心の部屋を行き来する事はバクラにとっては朝飯前だ。
たった1本だけを現実世界に持ち出さなくても、咲き誇る青い薔薇の園に彼は自由に入り込めるのだ。
『そういえば、そうだね。気付かなかった。』
名案を思いついた子どものようにぱぁ、と途端に明るくなる了の顔に、げんきんな奴だとバクラはいよいよ呆れ返った。
『道案内ちゃんとしろよ、宿主様。』
『うん、任せておいてよ。』
ふふ、とうれしそうに笑う了の顔を見て、まぁいいか、とバクラは思った。
不可能の象徴も可能にする、そんな突飛な精神構造を持った人間を宿主に選んだ自分の心眼もなかなかのものだ、とむしろ満足感を味わいながら。
青い薔薇の楽園に足を踏み入れるべく、了の意識下へと、潜り込んだ。
【ラヴカップルに10のお題】 :ユグドラシル 08:BLUE ROSE
道徳的な側面から見て正しくないと知っているけれど、でも、僕は君から与えられる口付けが好きだった。
『ねぇ、キスしてよ。』
ぐい、と袖元を引っ張って強請る。ストレートなお誘い文句だ。けれど、君はまるで往来のど真ん中で言われたかの様に顔を顰めて、僕の手を振り解いた。
『何急に寝惚けた事言ってやがんだ。』
突然すぎンだろ、と言われても、君に正論を言われちゃ腑に落ちないね。此処は僕の心の中の部屋なんだから、突然すぎるにしたって、TPOのPくらいは押さえている。そもそも誰も居ない2人きりの空間という絶好のシチュエーションなんだから唐突すぎるお誘いでも無いだろう。
『いいじゃない。ほら。』
振り解かれた手をもう一度、今度は指先に絡める形で握り締め、目を閉じる。目の前にいるのはこの世を滅ぼす悪魔の化身だ。其の上君も僕も男だ、とか、それ以上にこれは僕の身体だ、とか、そういった倒錯的な関係性がけれど僕の心にこれ以上無く魅力的に映る。自己愛の塊の見せる罠だろうか、それとも、道徳に反しているからこそ、こんなに壷惑的に思えるのだろうか。自分でも計り知れないどろどろの想いが、とても君に可愛らしくキスを強請る自分の心の内だとは思えない。
『ったく、』
仕方ねェ、と面倒臭そうに舌打ちして、絡めた手を握り返してきたかと思うと、唇に柔らかな感触がぽつりと落とされた。此れは紛れも無く僕の唇だ。君の物ではあるけれど、それでも僕の唇に代わりは無い。そう感じれば感じる程尊くて愛しく思えるから不思議なものだ。君から贈られるキス其の物には穢れがなく、言葉や態度と裏腹に優しくて、だから僕は好きだった。
心の内が穢れていたとしても、其れ自体は神聖な、そんな口付けが、僕は好きだった。
『これで満足かよ。』
たっぷり十数秒、触れるだけの口付けが終わってから告げられる君の言葉に、僕は笑って頭を横に振る。
『・・・・もっと。』
まだ足りない、と言って君の唇をぺろりと舐めて、二度目のキスを促す。倒錯的な口付けが、僕を虜にしたまま、離さない。
穢れの無いはずの口付けは、背徳の味がした。
【ラヴカップルに10のお題】 :ユグドラシル 07:PURE KISS
拙い夢は君しか知らないから、ちっぽけだと笑わずに、請うた誓いを守り抜いてと、抱きしめてくる不安定な存在に、ただ、願った。
SMALL PROMISE
『何処にも行かないで。』
小さな願いは其れで十分だった。君が何処にも行かないで、永遠に此処に居てくれるのなら、僕は他には何も望まないんだ。小さくて壮大な願いに、君は一体どんな顔をしているのだろうか。笑っているのか、呆れているのか、面倒な奴だと嘆息しているのか。けれどぎゅうと抱きしめられていちゃ、君の顔が見えない。無理矢理振り解く事も可能だとはいえ、そんな愚かな事はしたくなかった。抱きしめられている身体が心地良い。どんなに君が悪人でも、例え僕を謀ろうとも、此の腕の力強さの前では無力だった。
『・・・何処にも行かねェよ。』
背骨がみしりと音を立てるんじゃないかと思う程に更に強く抱きしめられて、それに合いまってそんな台詞を口に出すものだから、僕はぎゅうと目を閉じた。視界に広がる闇が、僕を覆いつくす。ああ、ばかばか。痛いよ、ばか力なんだから。でも手加減して、なんて言えないんだ。君の腕が僕を縛る度、拙い夢が叶えられた様な気がするから。不安定な存在が、今だけはとても安心出来る拠所に変わるから。
『何処にも行かないで。』
必死で請い続ける、ちっぽけな約束を、どうか果たしてよ。
何処にも行かないで。何処にも行かないで。何処にも行かないで。
それだけだった。
ああ、それだけだったというのに。
僕は願い事の仕方を間違えた。
何処にも行かないで、じゃなくて、僕も連れていって、なら。
そうしたら、このちっぽけな願いは叶えられていたのかもしれないね、と。
後から知ったって、もう遅い。
後悔先に立たずとはこの事だ、嫌になるね。
【ラヴカップルに10のお題】 :ユグドラシル 06:SMALL PROMISE
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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