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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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閉じた瞳の奥に広がる闇夜と、耳に流れ込む潮騒が心地よい。此処は一体何処なのか、と考えを巡らせるも今に至る前後の記憶が曖昧だ。けれど瞼を持ち上げる事すら億劫で、相変わらず何も見えない状態のまま意識だけが浮遊する。押しては引き、また押し寄せる波の音だけが聴覚を支配していた。ざぁ、と波間に揺れる月明かりが、扇情的に胸中に流れ込む。リアルな虚像が作り上げる景色の中、空に浮かぶ星々の中心で一際存在を主張していた衛星は真丸な形をしていた。今日は満月だ。何も見えない筈の空間にありありと浮かぶこの光景は、まるで夜の砂浜だった。僕は一体今、何処に居るのだろう。
『・・・宿主。』
ざぁん、と波打ったちょうどその時、聞きなれた声が同時に流れ込んできた。聞きなれた声音も、聞きなれた呼称も、これが誰かという事を顕著に指し示す。その呼び方をするのは世界にただ1人、お前だけだから。
『・・・宿主。』
応答が無い事に痺れを切らしたのか、二言目が耳をすり抜けていく。揺れるさざ波が同調し、けれど先刻まで瞼の裏に張り付いていた満月の夜の波打ち際の光景は消え、代わりにお前の顔が映し出された。
『ん・・・。』
その顔が余りにも優しかったから、僕は堪らず目を開けた。億劫に感じていた筈のその行為すらその顔に綻ばされ、白旗を挙げる。目を開けても、広がるのはやはりお前の顔だった。けれど其の奥主張する、蛍光灯のちかちかとした灯りに思わず顔を顰める。其の人為的な光が先刻までの月明かりとは違って不自然だったからだ。一瞬此処は何処だろう、と不安になり辺りを見渡すが、何てことはない。只、僕の心の部屋に居た、というだけだった。
それならばあの景色は何だったんだろうと、手繰ろうとする意識はけれど何処かに浮遊していったまま置き忘れてしまったようだ。一向に思い当たる節が無くて少々混乱していると、頬を緩く抓られる。
『大丈夫か。』
きゅ、と摘まれて密やかな痛みに冴えた脳で、其の言葉の意味を数歩遅れて理解した。大方夢でも見ていたのだろう。自分は何処にも移動した覚えが無かったのだし、案の定目覚めてみれば視界に飛び込んでくる景色は今まで通りだった。こくり、と首を縦に振ると、お前は安心したかの様に摘んでいた指先を離して今度は酷く愛おしそうな手つきで頬を撫でてくる。それはまるで先刻思い描いたさざ波の様に心を震わせて止まない。
『結構長い間気ィ失ってたからな。』
このままじゃ寒いだろうから、と意地の悪い笑みを携えて続けられて、視線を下へと落とすと成程、申し訳程度に掛けられたタオルケットの下は素肌だった。それは何故か、何てわざわざ尋ねずとも答えは1つだった。その意地悪い表情からもまざまざと見せ付けられて、頬に熱が帯びる。
『照れんなって。今更。』
くく、と喉奥で笑われて、気恥ずかしさに視線を宙に漂わせた。一度認識してしまうと鈍い痛みも押し寄せる様だ。意識を手放す程の情事だったのだから、当然ではあるけれど。どうせ声も掠れて思った通りには出せないのだろうと諦め半分に口を開けば、やはり喉をついて出てくる声はしゃがれていた。
『・・・うるさい。』
お前の所為じゃないか、と暗に含んで彷徨っていた視線を戻すと、灰紫の瞳とぶつかった。
その時、其の瞳の奥に揺れる景色に気付く。
先刻まで見たリアルな夜の海そのものの様だった。まるで広大な海を携えたかの様な深いエメラルドグリーンの虹彩が、闇夜の海辺と酷似していた。
ああ、だからか、とすんなりと受け止められる程に綺麗な瞳に吸い込まれ、どうして自分が潮騒を感じていたか理解する。
お前に抱かれたままの身体は其の海を漂流していたのだ。
きっと。




『・・・服着たら、此処で寝てもいい?』
相変わらず掠れた声でそう呟くと、お前はまた優しそうに微笑んだ。其の顔は僕しか知らない秘密の顔だ。溶けるように優しい顔も、解けるような優しい手つきも、僕だけを包み込む大きな海だ。
『ああ。寝ちまえよ。』
ふわ、と頭を撫でられて、心地よさに目を瞑る。まだ服なんて着ていないというのに、既に思考は夢の中だ。
目を閉じればまたも広がる水面に映る満月の夜空が、まだ駄目だと叱咤する僕の思考をもお構いなしに其の波間へと引き込んでいく。
情事の後の気だるい雰囲気と相俟って、ただひたすらに手繰り寄せていく。




そして眠りの海へと引き擦り込まれ、お前の腕の中夢見心地で流されていくんだ。




【抱いて抱かれて10のお題】 :SILENT SPEECH 09:そして眠りの海へ
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HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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