9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
綺麗に着飾って君を待つ。
女の子ならそれも可能だろうに、神様はなんて残酷なんだろうか。
WHITE DRESS
『やっぱりウエディングドレスは女の子の憧れなのよ。』
『真崎さんでもそんな事思うんだね。』
『ちょっと!獏良くん!』
『あはは、ごめーん。』
他愛無い休憩時間の会話の中に出てきた、なんて事の無い単語の節に、思わず眉根を寄せてしまった事を幸いにも誰にも気付かれずに済んだ様だった。負の感情を表に出さず、内に押し込むのにも大分慣れてしまったようだ。此れも君の忘れ形見なのかな、なんて思いたくもないから、慌てて湧き上がる感情を押さえ込む。既に君は過去の遺物だ。前を向いて歩いていく自分には既に思い出として処理するべき存在だ。それなのにこうしてところどころで僕の邪魔をする。君は本当に食えない奴だった。
『でも、杏より獏良の方が似合うんじゃねーのー?』
『ちょっと!城之内!何てこと言うのよ!・・・でも・・・そーかも・・・。』
女顔だもんなー、と振られて、返答に困る。いくら女顔で細身の体つきでも、男は男だ。所詮女性の身体をしている彼女には負けるだろう。綺麗に着飾って王子様の迎えを待てばいいんだから、気楽なものだ。
ウエディングドレス。純白の穢れ無き象徴が、愚かな過去の自分を際立てる。王子様を待っている訳でも、自分が少女の様に其れを待ち望む訳でもない。けれど、その単語が、どうしようも無く過去のやり取りをフラッシュバックさせるんだ。ああ、思い出したら、泣いてしまう。泣かないように、崩れ落ちてしまわないように、蓋をした事実が洪水のように溢れ出してきたら、もう止めようが無い。
『・・・獏良・・・もしかして、怒った?』
は、と気付いたときには、友人に心配そうに覗き込まれていた。返答が無かったことに、暴言だったかと焦っているようだ。馬鹿だね、そんな事ないよ。僕が友人に対して怒る筈ないじゃない。僕の沸点を湧き上がらせるのは世界中で只1人だ。
『違うよー。僕もね、似合うかなーと思ったんだ。想像してたんだよ。』
『お前・・・結構ナルシストだよな・・・。』
『そんな事ないよ。』
ふふ、と笑って上手く誤魔化せば、安心したかの様に笑いかけられる。そうだね、僕は自己愛の塊だから、ナルシストだと言われても間違いじゃないのかもしれない。けれど、そんな僕にだって、どうしようもなくなる存在が居たんだ。笑わせると思わないかい。
『酷いよ、この傷。』
『あァ?何マジギレしてンだよ。』
『だって、一生消えないじゃないか、こんなの・・・』
頭の中にフラッシュバックする会話が、駄目だと拒絶する心と裏腹に記憶を引きずりだしてくる。
既に君は居ないんだ。
だからこの先を思い出してはいけない。
そう思うのにどんどんと記憶は奥底へ奥底へと僕を誘う。ああ、理不尽だとは思わないか。思い出したくもない記憶だけがどんどんと蓄積し、蓋をして閉ざしてもいつの間にか眼前に迫っている。
今は駄目だ。みんなが居る。そう思ってももう、止められない。
『一生消えないようにしたんだから当然だろ。』
『っ、なんっ・・・で・・・』
『教えて、やろうかァ。』
ああ、駄目だって。駄目、駄目。その先は、駄目。
『一生、お前は俺様のモン、だからだよ。』
『なに・・・それっ・・・』
『ああ、キズモノになっちゃった・・・てかァ?なら俺様が嫁にもらってやるよ・・・!ヒャハハハハハ!』
がたん、と椅子から転がり落ちて、周囲の目が自分へと注がれる。
は、と気付いたときにはもう遅かった。はらはらと両の目から零れ落ちる水滴を、弁解する猶予も無い。
『おまっ・・・急にどうしたんだ!?』
『な、なん・・・でもっ・・・!』
ぐいぐいと乱雑に拭き取ったって、無意味すぎる行動だということは自分が一番良くわかっている。こんなにも情緒不安定になってしまう程にはまだ君が心に巣食っていたのか、と思うと情けなさにまた涙が流れるようだ。ああ、君のあの揶揄する為の台詞が、馬鹿にしたような蔑んだ台詞が、僕を奈落の底から引き上げてはくれない。洒落にならない、とはこの事だ。嫌になるよ。どうしたって君を忘れられない、と物語っている。どんなに待ち望んだって、君が迎えにこないことも知りながら、そんな風に女々しい感情が支配するんだ。
此れを未練がましいというのなら、もっと発言に気をつけてくれなきゃ困るよ。
綺麗に着飾って君を待つ。
女の子ならそれも可能だろうに、神様はなんて残酷なんだろうか。
僕はもう、誰も迎えに来ないことも、純白のドレスが似合わないことも、知っているのだから。
【ラヴカップルに10のお題】 :ユグドラシル 09:WHITE DRESS
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
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