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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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季節は秋に向かう処だった。晩夏の夜は幾分か過ごしやすく、窓辺から入り込む夜風が心地良く髪を撫ぜた。
『ねェ、キスってした事ある?』
明日は晴れるだろうか、等とりとめもない事を考えていたバクラの耳に唐突に驚く様な台詞が流れ込み、彼は思わず声の主を凝視した。前後関係も何もない了の言葉に聞き間違えかと我が耳を疑ったからだ。
『何言って・・・』
『だから、キス。僕、した事ないんだよね。』
驚くバクラに更に追い討ちをかけるかの様に了は言葉を続けた。誰が見ても判る程に動揺している姿は、とてもじゃないが世界を滅ぼそうと企む悪役には見えない。了としてはふと思い付いた言葉を発しただけだったのだが、これは案外功を奏しているのかもしれない、と思った。普段自信満々の傍若無人なバクラを慌てふためかせる等、なかなか出来た事では無かったからだ。
『・・・キスしてみたいなー。』
ずい、と顔を近付けて了は上目遣いにバクラを見つめ、熱っぽく囁いた。からかい半分の台詞に揺れる深い紫色の瞳が、彼の戸惑いを如実に物語る。
『・・・心の部屋でか?』
『ううん、此処で。』
絞り出した様な声に笑いを堪え切れず、了は口許を緩く綻ばせながら即答した。
バクラは所謂意識体である。了と身体を共有している状態であり、現実の世界では触れる事はおろか他人の目に見える事もない。了の心の中の“心の部屋”でだけ、触れ合う事が出来るのだ。
『此処じゃ出来ねェだろーが。』
呆れた様に溜息を吐き、バクラはようやく落ち着いてきたのかしっかりと了の淡緑の瞳を見つめ返し、次いで仕返しとばかりに了の唇にゆっくりと近付いた。勿論実体を持たない唇が触れようと、何の感触も無い事位知っている。
ただそれでも、近過ぎる距離に触れた様な錯覚すら起こし、今度は了が戸惑い揺れる番だった。
『・・・本当にすると思わなかったんだけど・・・』
『・・・此処でっつったのはお前だろ。』
予想外の反応に、お互いがお互いに驚く。真似事の口付けがもたらす感情のざわめきは、思ったよりも大きかったらしい。
どうせ出来ないだろうと高を括っていた了の頬は心なしか紅潮し、そして了のその反応にバクラ自身もまた、顔が熱を帯びるのを自覚せずには居られなかった。




やっぱり心の部屋来いよ、と耳元で囁かれ、了は更に染まる頬を知覚しながら、ゆっくりと頷いた。
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HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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