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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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頭が割れる様に痛い。何故だろうかと思考を巡らせ、そういえば昨日たらふく飲まされたのだと理解した。
自分自身ではそこまで弱いとは思っていなかったが、それこそ浴びる様に飲まされては勝手が違う。
ガンガンと頭を打ち付ける鈍痛が二日酔いという事実を如実に物語っていた。
『うー・・・気持ち悪い・・・』
額を押さえてやり過ごそうとしてもあまり効果は無い。未成年の飲酒は法律で禁止されています、という今更どうしようもない言葉が頭の中をぐるぐると回る。いっそ吐いてしまったら楽になるのだろうか、と思った、その時だ。頭の中に響く聞き慣れた声が一言、釘をさす。
『言っておくが吐くモンがねェぞ。昨日全部出しちまってるからな。』
はァ、と呆れた様な声でそう諭され、そうだったっけかと目線を宙に彷徨わせた。酒を飲んだ事は覚えているが、その前後の記憶が全くといっていい程ない。誰が最初に飲もうと言い出したんだっけか、とそれすらも曖昧では話にならない。
『もー駄目。無理。死ぬ。』
『死なれちゃ困るっつの。』
頭の中の声は飄々としていたが、こいつは果たして酔っ払ってはいないのだろうかと、素朴な疑問が鎌首をもたげる。同じ身体を共有しているのだ、身体を覆う怠さは同じな筈だ。
『お前も辛いんじゃないの?』
ぐで、と寝そべりながら尋ねると、鼻で笑われる。何を馬鹿な事を、と言いたげな笑いだった。
『この俺様があれ如きで酔い潰れる筈ねェだろ。』
焼酎一升にウイスキー一瓶冷酒、ビール、と頭の中で数えだす声に、そんなに飲んだのかと嘆息した。酔い潰れる筈だ。たかだか16歳の自分の許容範囲は大幅に越えている。3000歳のこいつに敵う筈が無い事も十二分に理解した。
『お前が凄いのは判ったから。そんなに言うなら変わってよ、平気なんでしょ。』
胃がからっぽだというのに吐き気は収まらず、寒気もする。二日酔いになるまで飲んだのは初めてだったが、もう一生経験したくない気分の悪さだ。頭の中の邪神様が変わって下さるのなら、僕はこいつを崇めても良い、とすら思う。
しかし、こいつはそんな善人でもお人好しでも何でも無かった。
『嫌なこった。これも人生経験ってやつだぜ?宿主様。』
ヒャハハ、と耳障りな声で笑いながら、縋りつく僕を無情にも奈落の底へと蹴り落とす。
人生経験、なんて嘘っぱちで、ただ苦しむ僕を眺めて愉悦に浸りたいだけなのだろう。
性悪、と呟くと最高の褒め言葉だぜと喜ばれた。嬉しくない。




頭痛に悩まされながら、治ったら覚えていろ、と頭の中のこいつに悪態吐いた。
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ゆっくりと肥大した闇が僕を包み込む。囚われる。この世の全てを捕らえる事が出来る程の巨大な闇が、僕だけを捕縛するのだ。
『お前だけでいい。』
闇は囁き、そして嘲笑うかの様にねっとりと絡みついてくる。闇に侵食されひたひたに浸かりだした自分の身体はもう、助からないだろう。闇に犯されてしまって元に戻れる筈がない。
けれど、それでも。




『お前だけで。』




纏わりつく闇は囁きながら僕を沈める。そうだね。実の処、僕もそれで、それで、いいんだ。
世界を支配する力を持った闇がけれど僕だけを支配するだなんて、とても倒錯的だもの。視界すら暗黒に飲まれ思考が途切れても、四肢の自由を奪われても、奇妙な安堵感すら感じられる不思議な心地だ。
ねぇ、僕だって君だけで。
否、君だけが。




『お前だけが。』




闇がそう呟いたと思った刹那、僕の安堵感は更に肥大していく。
お前だけが欲しいと闇に求められた僕は愛しさに縛られながら、ずぶずぶと闇に飲み込まれていった。




雷が鳴る。ゴロゴロと不吉な轟音が響き、瞬間夜空が怪しく光った。大分近いな、と思いながらゆったりとソファに沈み込む。落ち着いているのは何も虚勢を張って居るからでは無くて、いくら近いからといって外に出ない限り害はないということを知っているからだ。極論として自分の住うマンションに落雷してしまえばまた話は変わってくるけれど、その可能性はかなり低い。つまり、本当にこの家の中に居る限りは怖い事なんて何もない。
『むしろ、結構好きだったりするよ。』
ふふ、と笑ってリモコンに手をのばした。テレビの電源を入れるとニュースキャスターの淡々とした口調が嵐の訪れを告げていた。
『悪趣味な宿主様だこって。』
辛辣な言葉と共にくく、と喉元で笑う声が聞こえる。
誰も居ない一人きりの空間に、けれど別の声が鳴り響くのだ。僕のドッペルゲンガーたる存在が悪態を吐いている。この倒錯的な関係にも大分慣れたものだ、と思った。昔の自分なら躍起になって反抗していたかもしれないが、最近はそうでもない。
『はいはい。お前もでしょ。』
さらっと交わして相変わらずゴロゴロと鳴り響く空を安全な空間から眺めると、お前はつまらなさそうに口を開いた。
『最近おもんねェ反応しかしねェな。』
昔はかわいかったのによォ、と馬鹿にした様な発言もひらりと交わせる様になった。大人になったという事だろうか。
この先意外と僕達は上手くやっていけるのかもしれない。




『でもすきでしょ?』



ふふ、と今度は僕が笑う番だ。からかう事に慣れていてもからかわれる事に慣れていないお前は一瞬瞳を大きく見開き、それから罰が悪そうにふいと目線を逸した。変わらない悪天候も何だか幸福になれるスパイスみたいだ。今にも落ちてきそうな雷すら、僕達を祝福しているみたい。
テレビ画面に写るニュースキャスターが告げる天候も耳を通り抜ける、お前の一言が更に僕を付け上がらせる。




『・・・言ってろ。』




君の髪をゆっくりと優しく梳いた。ドライヤーの熱と柔らかなタオルの感触に君が目を細めたから、僕の心まで此の熱がゆっくりと浸透してくる。自分の髪質と寸分違わず同じである筈なのに、何故かさわり心地は別物のようだ。
『・・・お前の髪って意外と柔らかいや。』
湿気を大分含んだ君の髪を、ふんわりとしたタオルでくるんで水分を拭き取りながら、君の髪の感触をタオル越しに楽しむ。水によって少し重くなった君の透き通るような銀髪。自分のものと違って思えるのは、濡れているからだろうか。それとも君だからだろうか。何処か浮世離れした思いに捕らわれながらドライヤーの熱を浸透させる。タオルで絡め取る。なすがままの状態の君に違和感はあるけれど、嫌がらないという事はやっぱり君も居心地の良さを感じ取っているからだろう。世界から隔離されたかの様に、二人きりになったみたいな錯覚に陥る。
今この瞬間、僕たち二人だけなのだ。それはとてつもない幸せな気がした。





『一緒だろ。』
ゆるりと手を伸ばされ、君の手が僕の髪に触れる。それだけで僕の体温は幾ばくか上がるのだから、初な事だ。そうだけど、と視線を彷徨わせ、けれど相変わらず君の髪の感触は楽しみ続ける。
お互いがお互いの髪を梳く。
同じ様ででもきっと違う感触を、共有しているのだ。




『でも、いいの。』
視線をようやく君へと戻して僕はそう呟いた。
タオルとドライヤーと、君の濡れた髪。
乾いた僕の髪の毛とは、やっぱり何処か、違う筈だから。




このまま世界が止まればいいのになぁ、と物騒な考えが巻き起こる、シャワーの後のなれ合いの時間。
今度は僕の髪を君が乾かしてくれたら、良いな。




聞きたくないから耳を塞ぐ。
見たくないから目を瞑る。
言いたくないから口を閉ざす。
けれどそれは所詮無駄な抵抗だ。




『聞けよ。』




塞いだ耳に関係なく鼓膜を振動させる声も。
瞑った瞳に関係なく瞼の裏に焼き付く顔も。
閉じた口に関係なく嗚咽を漏らすのど元も。
君の全てを拒絶したって、どうしたってぐらついてしまうのだから。




『宿主、俺は、お前の事』




真剣な顔が見たくなくて目を閉じて、真剣な声が聞きたくなくて耳を塞いで、
何も聞きたくなくて嗚咽をあげたのに。
五感全てを支配されていてはどうしようもない。




一番大事だと思っている、と塞いだ耳に流れ込む音が、
ガラにもなく優しい顔の、瞼の奥に差し込む映像が、
嗚咽よりも同意の言葉を紡ぐ唇が、




僕をぐらぐらと揺らした。
無駄な抵抗だったと、溶かされながら、思った。

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HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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