後付けでもいいから理由がほしい

暗めでたいしてエロくもないけどワンクッション！

理由なんかなくたって、意味は後からついてくる。
衝動に任せて交わったって、後付けの意図が派生する。
『ん、んぅっ・・・っああ・・・！！』
きゅ、と自身を握りしめられて、期待と欲望に胸を焦がす。
君の手が僕の急所を包み込んでいる、という事実だけで僕は絶頂を迎えそうだ。
けれどやっぱり君自身で貫かれて、余すところ無く受け止めたいとそう思った。




何時始めたのか、何故快楽を追求するようになったのか。
意味も無く始まった情事なのだ、最初は理由なんて無かったのだろう。
ただ、何となくで始まった疑似セックスが此ほど僕達を溺れさせるなんて思わなかった。
飽きるなり興を削がれるなりすると思っていた夜伽はしかし、こうして今も続いている。
こうなると僕等は其の意味を考えなければならない。
どうして、だとか何故、だとか。
そういった理由が、人間には必要なのだ。




『ねェ、っ・・・もう・・・！』
いいから早くきて、の合図に足を広げ、ろくに慣らしもしていない排泄器官へと君自身を拱く。
入り口は堅く閉ざされているけれど、痛みはすぐに快楽に変わるだろう。
其れは、此れ程までに身体を重ねてきた証でもあった。
理由も無く身体を繋げ、快楽を追い求めているには、都合が悪すぎる。





例えば、同じ身体共有しているという点に置いて最も近しい二人が、それでも更に近付きたいと思った故の行動なのだ、とか。
単純に愛しいからなのだ、だとか。
こじつけだろうと何だろうと意味は後からついてくる。
後付けの理由も、僕等にはとても重要なのだ。




放たれた精子は受精する事なく朽ちていく。
子どもをつくることの出来ない二人には、他の理由が必要なのだから。

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さらば理性

ずっとエロのターン。ワンクッション！

本来排泄器官である筈の場所は君自身で満たされている。ガツガツと奥深くまで出入りされて思考が弾け飛びそうだ。口を開くとだらしなく銀糸が流れ落ち、言葉を紡ごうとしても、意味の無い嬌声にしかならない。

『っあ！ああ！！！』

生理的な涙が頬を伝い、視界もぼやけて霞がかる。荒い息遣いと溶かされそうな熱に浮かされ、理性なんてものはほとんど残されていなかった。本能と肉欲と、そしてほんの少しの背徳感だけが僕を突き動かしている。淫らに乱れて喘ぐ僕を満足そうに見下ろす君も、きっと同じ気持ちなのだろう。とは言っても、君に背徳なんて感じる心があるかどうかは判らないけれど。

『ッ、宿主・・・！』

ぐちゅ、と淫猥な水音が心の部屋に響き渡る。視界がちかちかとホワイトアウトしていく。快楽にこの身を焼かれそうで思考が定まらなくなっていく。
それでも君が僕の名を愛おしそうに呼ぶ度に、僕の意識は其処へと浮上する。
これ以上無い位深く繋がって、君を酷く近くに感じるこの瞬間こそが、生きている証なのだ。




自分自身に抱かれている様な背徳感すら極上のスパイスとなる。
君と僕の精液にまみれたこの身体には理性なんて最早、必要が無かった。

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柔らかな休日

背中に感じる体温が心地よくて心拍数が少しだけ上がる。後ろから抱き締められるのは、嫌いじゃないよ。柔らかな午後の日差しを浴びて、ぼんやりとそんな事を思った。
『眠たいの？』
『ん。』
君は小さく頷くと、ぐりぐりと頭を押し付けてきた。首筋に当たる君の前髪がくすぐったい。動物の求愛行動って、こんなのなのだろうか。小さな子どもをあやしている様な、それでいて本能のままに行動する動物に懐かれているかの様な、不思議な気分だ。眠気に襲われた君はとても大人しくて、拍子抜けしてしまう。
『もう寝る？』
『ん。』
陽もまだ沈みきっていない夕刻の空気が肌に柔い。本当はまだ眠たくはなかったけれど、僕の思考は余り関係が無い。君が望むのなら僕は眠りの海に揺られよう。君が望むのなら僕はシーツの海に引き込まれて、暖かな夢を見よう。
後ろから抱き締められたまま夢の世界へ落ちていくのは、きっと、やっぱり、嫌いじゃないから。




背中に感じる体温が心地よくて、僕の鼓動はトクトクと高鳴って。
柔らかな午後の日差しの中、僕はいい夢が見れそうだな、と穏やかな心地にさらわれていた。

背中

僕は君の事を何一つ知らない。
名前すら知らない。
だから何と呼んでいいのか判らない。
君とかお前とか、そういう呼びかけでしか君を振り向かせられないんだ。
背中に向かってねぇ、お前、と呼べば此方を向いてくれるけれど、後に残るのは空しさだけ。

『何か用かよ。』

くるりと向き直した君に、僕はふるふると首を横に振った。
何でもない、の意思表示だ。
変な宿主だな、と訝しそうな顔をした後、またお前は彼方を向いてしまった。
お前は何時も前を見ている。前だけを見つめているんだ。
僕がその背中だけを見ているなんて、知らないだろう。
呼ばないと振り向かない。
呼び名すら知らない。
そんな僕が声を張り上げて呼んだとしても、お前には意味の無い行為なのだろう。
けれど僕にとってその背は失いたくない、失えないものなのだ。




呼び名すら知らない。
遠い背中。
遠い存在。




それでも、お前が居なくなったら、僕はきっと壊れる。

貴方の声は届かない

君は一つ重大な過ちを冒した。選択を見誤ったという事だ。３０００年も生きてきたというのに、馬鹿げた話だ。
『や、・・・ぬ・・・』
『聞こえないよ。』
ぎり、と首を絞める。締め上げる。血液が上手く循環出来なくてこの掌の下で藻掻いているのか、と見当違いな思考を巡らせながら君の首筋に力を込める。二心同体、という事は僕は今自分で自分の首を絞めているに違いない、という事なのだ。文字通り。きっとこんな経験は、なかなか無い。
僕は何も君が嫌いだからとか、君を消し去りたいからとか、そんな単純な思惑で動いているわけじゃあ無いよ。
『ねえ、どうして僕なんかの所に来たの、お前。』
偶然でも故意でも、其れは君自身にとって最大にして最悪の選択ミスだった。悲願の復讐を果たすのに、僕を選んでしまった事が、最初から間違いだったのだ。僕という体の良い隠れ蓑を見つけて安堵したかもしれない。これで大丈夫だとたかをくくったかもしれない。
けれど、元より僕なんかを選んでしまった事がそもそもの間違いなのだから、君にはきっと、勝ち目なんて無い。




『お前、絶対負けるよ。勝てっこないよ。』
ぎりぎり、と首を締め付ける。強く強く。けれど僕を睨め付ける瞳は依然鋭いままだった。ああ、その瞳だけで射殺せるのなら、君にだって勝ち目があるのかもしれないけれど、たった一人立ち向かって行くには、君の敵は強すぎる。
もう復讐なんてやめて、此処に居てよ。ずっと此処で僕と暮らそうよ。
憎まれるべき借宿に思いを寄せられるなんて、君はとても滑稽だね。




『だから、行かないでよ。』




君は一つ重大な過ちを冒したのだ。僕を選んでしまったのだ。
僕という足枷を背負ったまま立ち向かうなんて自殺行為だと、君自身もきっと判っているのにね。
ぎゅうぎゅうと首を締め付けるのは、行かないで、の証。
何か言おうとするその口を黙らせる為の、最後の手段だ。




『聞きたく、無い・・・。』