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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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身を焦がす程の甘い誘惑に負けてしまうのだ。
こっちの水は甘いと手招きする君に誘われて、盲目な程に一途に。



ブラウンシュガー




『宿主』
甘い甘い声音に戸惑いを隠せない。
掌を返したように急速に変化した君の態度に、僕はただひたすらに狼狽するだけ。これは罠だと警告する声が頭の中に鳴り響いたけれど、それ以上に鳴り止まない甘ったるい誘惑が僕の心を蝕んでいく。
君はやけに優しい声で僕を呼び、両の手で僕の頬をそっと覆った。
『俺様はお前の味方だぜ。』
白々しい、と吐き捨てるつもりの唇を掠め取られ、揶揄する台詞も全て引っ込んでしまう。ちゅ、と啄まれ、食む様に吸われて、顔に熱が集中するのを感じた。僕の中で戸惑いが堰を切って溢れ出す。嘘を吐くな、と吐き捨てるつもりの唇はとっくの昔に塞がれていた。
止めてよ、そんな風に装わないでよ、と頭の中でガンガンと鳴り響く拒絶の言葉もやはり、飲み込まれている。
甘い誘惑に。




『ほ、んとに…?』
代わりに口をついて出る言葉は弱々しく、君を信用したいと訴えているようなものだった。
そんな事は有り得ないと知りながら、何処かで僕は期待しているのだ。戸惑いながらもその甘い顔と声に騙され、儚い願望に苛まれる。
縋りついた先が僕の終焉を告げるとしても、逆らえない。




『俺様の一番大事な宿主に誓って。』
甘い台詞、甘い誘惑。甘い顔、甘い声。
掌の温度に、溶かされる。
甘い話だと揶揄する自分は打ち負かされ、その唇を再度受け入れた。
口付けに蕩かされ、僕の思考回路はバラバラに崩れ落ちる。
不自然な程の、甘さに。




身を焦がす程の甘い誘惑に、やはり負けてしまうのだ。
こっちの水は甘いと手招きする君に誘われて。




盲目な程に、一途に。
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ぴたりと掌同士を合わせる。当たり前の事だけれど、大きさは寸分違わずそっくり同じ。
爪の長さから掌に刻まれる生命線の長さまで、完全なるコピーの君に感じる奇妙な既視感。
其れを胸に抱いて僕は笑った。
酷薄な表情だ、と何となく思った。

『君の存在価値って、何だろうね。』

掌から感じる熱も同調して拡散する。それはつまり同じ温度を保ち続けている、ということだ。
一つの身体を二つの魂で共有しているのだから、当たり前の事ではあるけれど。

『僕が存在している上に成り立つ付加価値だよ、お前は。』

仮初めの存在はやがて砂に帰るだろう。此の身体は元来僕の物であるのだから、お前に受け渡すつもりは毛頭無い。
それならば君の価値等、やはり何処にも無い。
此の僕が全身をかけて否定しているのだから、お前は所詮その程度なのだ。




合わさった掌に意識を集中すれば、まるで其処に何も無いかの様な感覚に捕らわれ、
お前が存在しているかどうかすら、あやふやだ。
ざまあない。




爪の長さから掌に刻まれる生命線の長さまで、完全なるコピーの君に感じる奇妙な既視感は、皮肉に煽られまた僕の中で肥大し蓄積されていくのだ。
お前の存在全てを否定してあげるよ、と僕は思う。
もしこの手が僕よりほんの少しでも大きかったのなら、君と僕は別個の物かもしれないと考えられない事も無かった。その場合はお前にだって存在意義があるのだと、僕は思ったに違いない。
劣悪な願望に他ならないけれど、そうしたら僕はもう少しお前に優しくしてあげられるのにね。




現実とはかくて残酷だ。
お前は所詮僕の付加属性であり、僕無しでは到底生きられない。
そんな希薄な存在など、無いに等しいと思う。
お前の存在など、最初から、あやふやなのだ。
――ざまあない。




其処に至るつもりは毛頭無かった。ふざけてキスを交わし抱き合い寄り添って眠る事はあっても、まさか君に抱かれるなんて思いもしていなかった。あの晩、幾重にも降り注ぐ口付けの嵐に、いつもとは違う空気を感じ取ってはいたけれど。
それでもまさか、自分の身体とそっくり同じ身体を持つ君に組み敷かれるなんて、思ってもみなかったんだ。
『どういうつもりだったの。』
感情を出来るだけ抑え込み、口にすると厭でも昨夜の過ちが甦ってくる。勿論僕らは一つの身体を共有している身であるから、実際にこの身に残る傷跡は一つもない。けれど心の部屋での事実は夢よりももっと現実的で、実際の出来事と受けとめたって遜色無い。
どうして君は僕に欲情したのだろう。まるで同じ体つきの、女性のような柔らかみも丸みもない骨張った男の身体を、どうして君は組み敷いたのだろう。
僕自身、キスをする事も、抱き合う事にも、抵抗は無かった。何処かじゃれ合うだけの其の行為に安堵していたのも、心地よさを感じていたのも事実だった。
それでも、性行為には至りたく無かったんだ。一線を越えるつもりは、やっぱり、毛頭無かった。
だからあの夜、いつものようにじゃれあいながら唇を交わしていた最中に侵入してきた君の手を振り払ったのだ。
『僕、嫌だって言ったのに。』
あの夜それは嫌だ、と僕ははっきりと拒絶した。触れるだけの口付けも、暖かみを感じるだけの抱擁も、僕の心にさざ波は立てないけれど、セックスだけはどうしたって僕の心をかき乱すであろうと本能で知っていたから。
僕の心は平穏を保ちたがっていたのだ。あの夜も、今も、この先だって。
だからそれを乱す性行為だけは、君と交わしたくなかったのに、と思う。
そう、思ったのに。
『お前だって、結局抵抗しなかったじゃねェか!』
責める口調に反論するかの様にお前が声を張り上げた。
結局の所、はっきりと拒絶したにも関わらずずるずると引きずられ身を委ねてしまった僕を咎めるその口調に、悪びれる素振りはまるでない。
ああ、そうだよ。僕ははっきりと拒絶したけれど、その次の君のとろける様なキスの愛撫で、その拒絶は意味を無くしたんだ。
其処に至るつもりは毛頭無かった。ふざけてキスを交わし抱き合い寄り添って眠る事はあっても、まさか君に抱かれるなんて思いもしていなかった。
けれど君の暑さに溶かされてしまったのも事実で、僕には君を責める資格がないのだって、判っていた。
判っていたんだ。




『だって、どうしようも無い・・・。』
ぼそ、と呟いた言葉に君は顔を顰めたけれど、それすら気にかける余裕が無い。
過ちを冒してしまった僕らはこれからどうやって向き合っていくのだろうか。




ふざけて、じゃれあって、子供のなれ合いのような口付けだけを交わしていられたらどんなに楽だったのだろう。
なんて、今更遅い戯れ事だね。




宿主は朝が弱い。起きろー起きろーと心の中で力一杯呼び起こしてようやく活動を始める。と、言っても気を抜くと直ぐにまた夢の中へと墜ちていってしまう。こら馬鹿遅刻すんぞーとまた必死に起こしている自分を冷静に省みると、どうして俺様が、と情けなくなる。天下の邪神様がこれじゃまるでただの母親だ。けれどこうでもしないと見た目に無頓着な宿主は、平気で寝癖のまま登校したりするのだ。俺様が主導権を交代した時に、寝癖でぼさぼさの頭っていうのはやはり示しがつかない。
それこそ邪神様として。
『だーもう!埒があかねェ!!!』
がばっと起きあがると瞬間低血圧なこいつのおかげでぐらりと視界が傾くけれど、気合いでそのままベッドから飛び降りる。最近はもっぱらこの方法で目を覚まさしてやっている。なんていう優しい俺様。
主導権を勝手に自分のものにし、着替え、顔を洗い、歯を磨く。生活感溢れる行動に自分でも情けない、と落ち込みそうになるからつっこんではいけないのだ。そう思いながらいつものように着替え、顔を洗い、さて歯を磨くか・・・とミントの香りの歯磨き粉をチューブから練りだし、歯ブラシを口に突っ込んだその時だった。
『っあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』
そんな声出せたのかお前!と思わず驚く程の声量で宿主が叫んだ。心の中で。けれどダイレクトに脳に伝わる為、頭が割れる様に痛い。くそ、何だって言うんだ。
『ンだよいきなり!』
『おまっ・・・おまっ・・・それ僕の歯ブラシじゃないかっ・・・!!!!』
ああああ、と絶望が心の中いっぱいに広がる。宿主の声といったら今までで一番絶望している。この俺様に乗っ取られていると知ったときよりも、欲しかったフィギュアが手に入らなかったときよりも、連日徹夜でやり遂げようとしたゲームのデータが飛んだときよりも。
何をそこまで?と全く判らずに居ると、宿主が殺気を含んだ声音で怒鳴りだした。
『汚い!気持ち悪い!セクハラ!お前用の歯ブラシ用意しといただろ!?』
罵詈雑言を浴びせられ若干凹む。お前の為を思って起きてやってんのに何だその言いぐさは、と思うけれど言い出せない。こうなってしまっては俺様が敵うはずもない。
うちの宿主は、無敵だ。




『んなの・・・しらねェよ・・・。』
若干涙目でそう言うと、じゃぁ今までも・・・?とおそるおそる聞かれたので頷いてやった。
宿主は更なる絶望に見舞われた。大事にしていたフィギュアが壊れた時よりも、徹夜で並んだのに買えなかったゲームについて嘆いていたときよりも、ずっと。
大体、宿主がいつも使っている歯ブラシは水色で、その隣に可愛らしく並んでいるピンク色が俺様用っていうのはどういう事なんだろう。此はせめて俺様が水色だ。というか、親がこの家に訪ねてきたとき、どう言い訳するのだろうか。水色とピンクの歯ブラシが仲良く並んでいる状態を見れば、誰だって盛大な勘違いをするに決まっている。
『ほんっと気持ち悪いんだけど!セクハラで訴えるよばかぁ!!』
『な!!大体テメーが起きないのが悪いんだろが!しかも、これは元々お前の体だろ!かわんねェよ!』
『変わるよ!ばっちいでしょ!』
『何でさっきから俺様を病原体みたいな言い方すんだテメーは!』
この天下の邪神様を!とキレてみるが、それでも宿主には敵わない事は知っている。
うちの宿主は、最強だ。




『ちょっとツラ貸しなよ。心の部屋まで降りてきて。』
絶対零度の声音でそう言われ、俺様は凍り付いた。
横暴だ!と思いながらも逆らえない事は知っている。
こいつは、史上最強にして無敵の、俺様の宿主だからだ。




幾億もの星達に見下ろされた僕は上機嫌だった。それが例え閉鎖された空間での虚構だとしても何ら問題は無い。がらんとした屋内には他に客はいない様で、静かな場内には機械的なアナウンスだけが流れている。意図しない貸し切り状態が、更に僕のモチベーションを上げていった。
『プラネタリウムって、いいね。』
ふふ、と笑って隣りに座る君を見た。実体の無い身体でも気分的な問題だろうか、きちんと席に座っている君を。面倒だと渋っていた割にいざ上映された途端真剣な表情で見上げていたのがおかしくて、知らず頬が緩む。一枚だけ無料で譲り受けたプラネタリウム観賞券を持て余していたけれど、君と一緒で良かったよ、と思った。友達を誘うにしたって自腹で来て貰うには躊躇うし、一人では虚しくてきっとチケットを無駄にしてしまっただろうから。




『実体がないって便利だよね。これからは映画とか、色々いこうよ。』
視線を上に戻して僕はそう言った。あれはオリオン座、あれは射手座、とアナウンスが耳に流れ込む。星座が形作られていくのが面白いのか、隣りで小さくおお、と感動している声が聞こえてきた。きっと何千年も昔にこんな偽物の星空よりも綺麗な夜空を見てきたのだろうけれど、そういった星座の概念はなかったのだろう。興味深そうに頷く姿が何だか可愛らしくて、また視線をそちらに戻す。
暗い部屋の中、透明な存在は朧気だけれどはっきりと僕の心中に刻み込まれる。




『ね、』
『んー?』
『お前が居て、良かったよ。』
人工的な星空だって、こうして君が居るからロマンチックな感傷に浸れるんだ。
一人で見たって楽しくないよ、と思いを込めて呟けば、頭上に釘付けだった視線がようやくこちらに向けられる。かちりと合わさった灰紫の瞳が、微かに揺らいだ。
『あ、照れてる。』
『・・・ちげーし。』
君が照れる時の合図を間違える筈がない。ぴくりとも動かない表情の中、しかし目だけは正直だ。
堪え切れずにふふ、と笑うと君は少しむくれた後、けれど思い直したかの様ににやりと笑って身を乗り出した。
あれ、と思う暇もなく、唇同士がぶつかる。
『え・・・?』
勿論感触は無い、真似事の口付けだ。透明な唇が押し当てられた処で何がどうと言う訳でもない。別にこれが初めてという訳でもない。
それでも、僕の思考を停止させる破壊力は抜群だった。
『照れてンの?』
仕返し、とばかりににやりと笑う君の顔に、してやられたと今度は僕がむくれる番だ。
右から左へ流れていくアナウンスは最早意味を成さない言葉の羅列になっている。牡牛座、蠍座、白鳥座。次々と語られる名前も、由来も、その透明な唇に触れられた時に吸い込まれてしまった様だ。
やだなあ、と僕は思う。
不意打ちのキスが僕の頬を染め上げるから、仄かな暗闇でばれませんように、と祈るしかない。




貸し切り状態のプラネタリウムの室内。
もう一度交わした真似事の口付けは、どちらからだったのか。
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HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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