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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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オレンジの光が部屋全体をぼやけたまま優しく包んでいる。1人暮らしのワンルームマンションは今その、蝋燭の炎だけで事足りていた。
部屋全体は薄暗く、窓辺から差し込む電灯の仄かな光とまさにその蝋の灯火だけ。
『今日は僕の誕生日なんだよね。』
先刻の事だ。僕はそう言って元々薄暗い部屋の灯火すら未練無く消し飛ばし、引き出しの奥に忍ばせておいた簡素な蝋燭を取り出した。
お祝いしてよ、と出来るだけ何でも無い事のように呟いて、ゆらゆらと光る灯火よりも儚く希薄な存在に目線を移した。何時しか気紛れなお前のその自由奔放さに惹かれ、その所為でこうして自然体を装ってはいるけれど、既にいっぱいいっぱいだった。友人達の手厚い歓迎を断り、両親からの電話への対応もそこそこに2人きりの空間を作り上げる程。
コンビニで調達した小さなケーキに無理矢理差し込んだ蝋燭は不思議な存在感を放っている。




『俺様に宿主の誕生日を祝えと?』
く、と片方の唇だけを器用に吊り上げ思念体は揶揄する様に笑った。その人を馬鹿にした様な微笑みがけれど僕の心を魅了して止まない。どれだけ自分はこいつに毒されているのだろうかと呆れ返る程には熱を上げている様だ。どんなに見下された、と思っても、其れでも縋りつく自分は他人の目には哀れに見えるかもしれない。
けれど、どんなに馬鹿げていたとしても、君の気紛れには敵いっこない。




『宿主。』




すい、と蝋燭の小さな炎の上を通過して、透けた身体が目の前に来た、と思った瞬間、君の気紛れが僕の耳元を甘く掠めた。
『え・・・』
『これで満足かァ・・・?』
くく、と笑うその顔は未だ意地悪い笑みを携えたままだった。心にも無い台詞を言いました、とその冷たい瞳が、残酷な微笑みが、顕著に物語っている。お前の誕生日等心底どうでもいいと言いたげな表情だ。
ああ、なのに君の心の篭っていない白々しい賛辞にすら涙が出そうなほど嬉しいんだ。




祝いの言葉は、蝋燭の存在を通りぬけて耳元へと運ばれる。
僕の一番聞きたかった其の台詞は仄暗い部屋の中に溶けていくようだった。




世界で一番愚かで幸せな誕生日だ。
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すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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