9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
幾億もの星達に見下ろされた僕は上機嫌だった。それが例え閉鎖された空間での虚構だとしても何ら問題は無い。がらんとした屋内には他に客はいない様で、静かな場内には機械的なアナウンスだけが流れている。意図しない貸し切り状態が、更に僕のモチベーションを上げていった。
『プラネタリウムって、いいね。』
ふふ、と笑って隣りに座る君を見た。実体の無い身体でも気分的な問題だろうか、きちんと席に座っている君を。面倒だと渋っていた割にいざ上映された途端真剣な表情で見上げていたのがおかしくて、知らず頬が緩む。一枚だけ無料で譲り受けたプラネタリウム観賞券を持て余していたけれど、君と一緒で良かったよ、と思った。友達を誘うにしたって自腹で来て貰うには躊躇うし、一人では虚しくてきっとチケットを無駄にしてしまっただろうから。
『実体がないって便利だよね。これからは映画とか、色々いこうよ。』
視線を上に戻して僕はそう言った。あれはオリオン座、あれは射手座、とアナウンスが耳に流れ込む。星座が形作られていくのが面白いのか、隣りで小さくおお、と感動している声が聞こえてきた。きっと何千年も昔にこんな偽物の星空よりも綺麗な夜空を見てきたのだろうけれど、そういった星座の概念はなかったのだろう。興味深そうに頷く姿が何だか可愛らしくて、また視線をそちらに戻す。
暗い部屋の中、透明な存在は朧気だけれどはっきりと僕の心中に刻み込まれる。
『ね、』
『んー?』
『お前が居て、良かったよ。』
人工的な星空だって、こうして君が居るからロマンチックな感傷に浸れるんだ。
一人で見たって楽しくないよ、と思いを込めて呟けば、頭上に釘付けだった視線がようやくこちらに向けられる。かちりと合わさった灰紫の瞳が、微かに揺らいだ。
『あ、照れてる。』
『・・・ちげーし。』
君が照れる時の合図を間違える筈がない。ぴくりとも動かない表情の中、しかし目だけは正直だ。
堪え切れずにふふ、と笑うと君は少しむくれた後、けれど思い直したかの様ににやりと笑って身を乗り出した。
あれ、と思う暇もなく、唇同士がぶつかる。
『え・・・?』
勿論感触は無い、真似事の口付けだ。透明な唇が押し当てられた処で何がどうと言う訳でもない。別にこれが初めてという訳でもない。
それでも、僕の思考を停止させる破壊力は抜群だった。
『照れてンの?』
仕返し、とばかりににやりと笑う君の顔に、してやられたと今度は僕がむくれる番だ。
右から左へ流れていくアナウンスは最早意味を成さない言葉の羅列になっている。牡牛座、蠍座、白鳥座。次々と語られる名前も、由来も、その透明な唇に触れられた時に吸い込まれてしまった様だ。
やだなあ、と僕は思う。
不意打ちのキスが僕の頬を染め上げるから、仄かな暗闇でばれませんように、と祈るしかない。
貸し切り状態のプラネタリウムの室内。
もう一度交わした真似事の口付けは、どちらからだったのか。
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プロフィール
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すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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