9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
閉じ込めてやる、と、とんでもなくサディスティックな笑みを浮かべながら君はそう言った。君が言うのだからそれは比喩でも何でもなく、確実に訪れる現実なのだろう。嫌だなぁ。僕には監禁願望は無い。鎖に繋がれて拘束されて、全てを遮断されるのか。お気に入りのテレビを見ることもゲームをする事も出来ない仄暗い地下牢で、君に支配されるのか。僕に選択肢が用意されていると言うのなら、考える暇も無くNOと言うだろう。そんなの御免だ、と言って突っ撥ねてやる所だ。けれど僕に選択権、ひいては拒否権という物は存在していない。それならばとやかく言ったって、まるで無駄なのだからと僕は閉口した。反抗してみた所で未来は決まっているのなら、そんな意味の無い努力をしたくはない。僕らしい、刹那主義で現実的だろう。けれど何だかだんまりを決め込んだ僕に従順さを見出したのか、驚く程満足そうに君は呟いた。
『いい子だな、宿主様。』
反抗しない、喚かない、押し黙っている利口な媒体。君がそう思うならそれで良い。プラス方向へのイメージを払拭する利点は無いのだから、勘違いしてもらえる方が得策だという事だ。君にどう思われようと関係ない、とは言ったって、これから先の事を考えれば優しくされたいのは当然だ。閉じ込められる、即ち君以外に関わらなくなるという事。僕の世界は君が全てになる。それならば、やはり円滑な関係を築きたいと思うのは必然だ。良い子にしていれば飴を与えられる世界に住むのなら、僕は喜んで君に奉仕しよう。これを従順と呼ぶのなら、別段間違っては居ない。
『逃げるなよ。』
つつ、と頬を滑る細い指。此れは見慣れた自分の指だ。けれど、君が操作する事によって別物になる。僕の頭の中はまるでジキルとハイドの様に二つの人格が出来上がっているんだ。二重人格、と一言で表現すればそれまでだけれど、もっと事態は深刻で入り組んでいる。頭の中で今二つの意思が交信している、と言ったら此の異常事態が少しは通じるのだろうか。かの有名な物語よりも酷く出来が悪くて滑稽で、それでも此れが僕の全てなのだから。
『逃げないよ。』
頬を滑る其の指の温度に戸惑いながらも僕はようやく口を開いた。逃げろ、と言われれば逃亡を企てる。逃げるも逃げないもお前の自由だと言われれば、諸手を上げて君から離れるだろう。選択の余地があるならば、君に構いやしないさ。もう一度言うけれど僕には囚われたい願望なんて無いのだから。
『お前が逃げるな、と言うのなら、一生此処から離れない。』
けれど、君がそれを望まない。君は僕を牢獄に閉じ込めて、永遠に其処に住まわせたいと願っている。君の言う監禁がどれ程のものかは知らないけれど、首輪に繋がれたって、足枷を用意されたって、僕には逃げ道が無いのだから、甘んじて受け入れるしか方法は無いのだろう。言い換えれば僕はお前の敷いたレールの上だけを歩いている状況だ。脇目も振らず一心不乱に君の言いつけを守るお利口な媒体。何も君の事が愛おしいからだとか、絆されているからだとか、そういう事じゃあ無いんだけれど。
『だって僕には拒否権が無いんでしょう。』
今も此の先も僕には選択の余地が無い。君が逃げるなと言ったから、僕は逃げないんだ。もしも君が居なくなって晴れて自由の身になっても、君の言いつけを守りぬく。君の用意した檻が腐り落ちたって、僕の居場所は以前そのまま其処にしか無いんだ。壊れた檻に拘束力が存在しなくなっても、君の言葉が僕を縛り付ける。
雁字搦めに縛り付けて、永遠に此処で足踏みさせるんだ。
『判ってるじゃねェの。』
満足そうに笑う君に抱きすくめられて、僕は今から投獄されるのだ。
本当は檻なんかじゃなく君そのものに閉じ込められているのだけれど、其れが判るのは此の檻が壊れてからだろう。
君が居なくなって錆びれた監獄に、それでも繋ぎとめられている自分自身。
想像に容易くて、僕は自虐的に笑った。
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
38
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
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