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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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子どもの頃から失くし物をするのが得意だった。
鉛筆、消しゴム、お気に入りのノート。
雨の日に電車に乗ると必ず置いてけぼりにしたのは傘だった。
一度手から離れた物への執着が無いのか、どんなに注意してみても無駄だった。
僕はこれが自分の癖ならば仕方の無い事かもしれない、と言い聞かせた。
『何時か自分の体まで失くしてしまわないようにね』と母親に心配そうに言われた事を思い出す。
けれど、失くしたのは自分ではなく、妹のほうだった。




失くしてから気付く大切な物が色々あって、
失くしてからたくさんの後悔を通過して、それでもやっぱり失くし物は耐えなかった。
筆箱、漫画、片方だけの靴下。
ついに友人の意識まで失くしたかと思ったときには自分が判らなくなった。
一度手から離れたものを次々と失っていく困った癖を、どうにかしないとと焦りだした。
気付くのが遅かったけれどこれからはもう大丈夫だ、と言い聞かせた。
『何時か自分の体も失くしてしまいそうだな』と父親に呆れられた事を思い出す。
けれど、失くしたのは自分ではなく、もう1人の自分だった。




一度手から離れたものは戻ってこないから、
大切なものからは手を離さない様にする、と君の手を取ってみたけれど、
『自分の心配をしろよ』と冷たく突き放されて、
手のひらから水が滴るように零れ落ちていった。




”永遠”という言葉を信じて握る手を緩めた訳でも、”大切”という言葉に縋って握り返して貰える気がしていた訳でも、
『何処にもいかない』と言った君を過信していた訳でも無かった。
離れていかないでと握り締めた手をするりと解いて、僕の半身は居なくなってしまった。




仕方が無い、で済ませる事が出来る程小さな物だったならよかったけれど、
君の存在は思った以上に僕にとっては大きかったらしい。
自分の体を失くした方がいっその事マシだった、と打ちひしがれて、
後悔の波に攫われたって、もう遅い。
月が昇り世界が闇に包まれたって、君の影はもう何処にも無かった。



失くしてから気付く依存度はやがて自責の念へと移り変わり、父と母の言葉を幾度となく蘇らせる。
『次は自分の体を失くすだろう』という不確かな確信がそれでも、
『それでも良いんだ』と甘く囁いた。







『自分の体よりも大切な物を失ったから、もう良いんだ。』
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HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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