9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
共鳴する、と気付いたのはこの時だった。もっとも蓋を開けてみれば君以上に僕に近しい人間なんて居ないのだから、当然と言えば当然なのだろうけれど。
『宿主。』
きぃん、と頭の中に鳴り響いたのは、何を警告しているのだろう。とにかく僕は君に名前を呼ばれる度、耳鳴りにも似た警告音に悩まされる。危険を察知した、とでもいうのだろうか。馬鹿げた話だと思わないかい。君が僕に危害を加える存在だという事は百も承知で、そしてそれ以上に君が僕を壊れ物の様に扱うという事も、周知の事実だ。君は優しいよ。それが打算の上に成立つ仮初だとしても、とにかく。
『こっちに来いよ。』
ああそうだったね、ごめんね。
呼ばれた先は心の世界で、そこでなら君と触れ合うことが出来るから。2人きりの時は出来る限り僕はそちらに行く事にしているんだった。ふ、と意識を手放せばすぐにでも行き来できる。通行手段は実にシンプルかつ明快だ。
『遅くなってごめんね。』
君に会いたくなかった訳じゃあないんだ。そう続けようとした言葉はけれど、口に出す前に拡散した。
突然の口付けのせいだ。食む様に唇を啄まれ、息が競り上がる。
『ん、んっ』
むず痒い感覚が全身を掬う。角度を変えて何度も繰り返されるキスの嵐にだんだんと意識が薄れてくるのが判って、照れくさい。君の口付けは荒々しいけれど、優しくて、勘違いしてしまいそうだ。君が僕に優しいのも、本当に僕を大切に思っているからじゃないか、とか。
なんて、そんな筈、ある訳無いのにね。
『…っ!』
けれどその時また、不意に警告音が鳴り響いた。決して頭が割れそうになる程の音量ではない。しかし耳鳴りに似た不快感は、ぼんやりとしだした頭を、熱を、急速に冷ます。
どうして今このタイミングで、と僕は自分の身体を怨んだ。何を警告したいのだろう。目の前の男が、危害を加えようとしているとか?――けれどそれは馬鹿らしい。今この瞬間だけは、君はとんでもなく温かな存在だ。荒々しいのに壊れ物に触るみたいに慎重で、大切にされている、と自負してしまう程。どうしていつも優しい口付けの瞬間だとか、優しい口調で名前を呼ばれる瞬間だとかに鳴り響くのだろう。邪魔しないでよ、と叱咤した、瞬間、
『宿主、…』
不意に唇が離されて、戸惑った様な君の顔を至近距離で見る。ああ、似ているけれど全然違う。お門違いな思考に揺れていると、君の瞳までもが揺れた。
『優しくしようとすると何時もこうだ。』
頭が割れそうな程痛くなる、と告げるその顔は苦痛に歪んでいる。――ああ、そうなのか。君の一言で僕の頭の中のばらばらのピースは全て合わさった。この警告音は僕から発された物ではなかったのだ。そして危険を告げようとしている訳でもない事も。
僕達は共鳴する。
君の身体から発された警告音を拾いあげていたからこそ、僕にとっては耳鳴り程度だったのだ。無論君自身への音は、きっともっと酷いものなのだろう。
ねぇ、自惚れてしまってもいいのかな。闇の意思に反して君が僕を大事に思うからこそ、葛藤し、警告されるのだと。打算的な行動では無く、本心からなのだと。
それならば僕はこの警告音を愛すべき存在として認識するだろう。君が痛みを感じている事は確かに苦しいけれど、それ以上に至福に感じてしまうだろう。
僕はこの先耳鳴りを知覚する都度、確認する。
共鳴する程近しい存在である君の、苦悩の愛情を。
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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