9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
大雨洪水警報が街を直撃した。土砂降りの世界をわざわざ外へ出ようと思うほど馬鹿ではない。雨の所為で下がった気温に身震いして、暖をとる為に作っておいたホットココアに手を伸ばす。湯気が遠慮がちに発ちこめる、熱すぎず温過ぎる事もない調度良い温度にほぅ、と溜息を吐いた。満足が自己完結し、その甘やかな味わいに胸を撫で下ろす。
『凄い雨。』
叩きつける雨脚は未だ衰える事を知らない。けれど部屋の中に居ればそんなことは最早関係が無い。元より何の用事も無いのに外へ出よう、と思える程外交的では無かった為、此処に居る事は苦痛では無かった。ただ、恐ろしさすら覚えるほどの雨音をBGMに、明日は晴れたらいいのに、と願うばかりだ。
『ねぇ、』
つい、と唐突に振り向けばびくりと強張る体。
『ンだ、急に。』
それが癪だったのか、何でもないかの用に気丈に振舞う同居人に思わず笑いそうになるけれど、へそを曲げられては敵わない。必死で噛み殺してくるりと其方に向かい直った。
『僕の大魔王様。お前の力でどうにかしたり、出来ないの?』
雷が鳴ろうと風が吹こうと構いはしないけれど、それでもやはり晴れてくれた方が有難い。洗濯物も乾かないし、と俗世的な考えをする辺りとても所帯じみている。
『そんな事か。出来るに決まってンだろ。』
ふん、と何でもない事の様に言う君に、今度は僕が驚く番だった。冗談も良い所の、意味の無い台詞だったというのに。只、雨が止めば良いのにね、なんてお喋りをしたかっただけみたいなものだった。やっぱりお前は僕の範疇を色々と越えていて、そしてそういうところが面白い。
『え、本当に?』
『嘘つく必要がねェな。』
凄い凄い、と煽てれば図に乗ったのか得意げな顔になった。此れが大邪神だなんて世も末だ。けれど僕の大魔王様なのだから、少しくらい抜けている方が好感が持てるというものだ。気がつけば生ぬるくなったココアに口をつけてそんな事を思う。相変わらず気温は低いけれど、もうそんな事は気にならなくなっていた。
『ねぇじゃぁ思いっきり晴れにしようよ。エジプト並みに。』
そうやって馬鹿みたいな提示をすることが楽しくて、部屋の気温だとかには興味が無くなっていた、と云った方が早いかもしれない。案の定馬鹿みたいだ、と呆れ返る君に僕は憤慨する。馬鹿みたいだけれど、いたって大真面目なのだから。
『異常気象だっつって騒がれてもしらねェぞ。』
お前の所為で、と付け加えられたけれど、それはとても面白い事態だ、と思った。僕の所為で日本は騒ぎ出す。至上稀に見ぬ強い日差しはエジプトを思わせます。ニュースキャスターが慌てながらそう告げるのを何食わぬ顔で眺めている自分を思い浮かべると、とてつもなく滑稽だ。
『そんなの構わないよ。ねぇ、やって、やって。』
『したたかな宿主サマだこって。』
ふ、と笑われて、頭をぐしゃぐしゃに撫でられる。勿論、幽霊のような君だからそれはフリではあるけれど。ふわふわ浮かぶ幽霊が僕の願いを聞き入れる。これって、なんていうんだろう。適切な言葉が思い浮かばなくて少しの間うんうんと頭を捻って考えて、あ、と心に浮かんだ言葉はとてもぴったりな気がした。
『なんだかロマンチックだね。』
世界を滅ぼす為に存在している魔王様が僕のお願いを聞き入れる。これをロマンチックだといわずして、何を言えばいいのだろう。
ざあざあと耳障りなBGMをかき消すのは、愛しの愛しの大邪神様。
僕の願いを聞き入れて、どうしようもない猛暑が訪れた次の日、思ったとおりのニュースキャスターの慌てぶりに、僕たちは2人で笑った。
PR
コメントする
カレンダー
カテゴリー
最新コメント
最新記事
(12/31)
(09/05)
(09/02)
(09/02)
(08/31)
プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析