9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。
二ヶ月弱ですがありがとうございました。
ごめんね、と言われて小首を傾げた。目の前のこの人は何を謝っているのだろうか。僕には全く判らなくて、え、何の話、と本気で尋ねた。するとどうだろう。腑に落ちない、とでも言いたげな顔をされた。
『怒ってないの?』
『・・・だから何の話?』
全く話が見えてないというのに罰の悪そうな顔をされても、と思いながら小さな友人を見つめた。まずは何について謝罪しているのかという事を教えてもらわなくては話は進まない。許す許さないは、その後だ。
『・・・バクラくん・・・』
気まずそうにぼそ、と呟かれた名前で、ようやくああ、と合点がいった。
目の前の友人はどうやら、罪悪感を感じているらしかった。
『やだなぁ、そんな事。』
『えっ・・・でも、』
『遊戯くん達が正しいんだもん。あいつが負けて消えちゃったからって遊戯くんが罪悪感を感じる必要はないよ。』
にこ、と微笑むと明らかにほっとした顔になっていて、それが何だかおかしかった。
全てが終わり僕を乗っ取っていた悪者は消えた。そしてもう一人の遊戯くんも元の世界に帰っていった。
物語は此処で終焉を迎えたけれど、僕達は相変わらず他愛も無い高校生活を送っていた。
『それにね、遊戯くん。』
ふと、この目の前の人間がどんな反応をするか気になって、僕は秘密を打ち明ける事にした。誰にも言わないつもりだったけれど、こうして改めて名前を出された事が、自分の中の何かをつき動かしたのかもしれない。
『何?』
安心しきった顔が一体どう変わるのだろうか、と奇妙な高揚感に誘われて、僕は口を開けた。
『あいつは居なくなってなんか、ないんだ。』
君の大切な人は居なくなってしまったけれど、とは言わなかったが、目の前の君はくしゃりと顔を歪めた。
想像だにしていなかった言葉に思考がついていかないらしい。この世の終わりみたいな顔で僕を眺めている。心外だなぁ、と僕は思った。この件に関して自分から謝っておきながら、僕の突拍子も無い台詞に絶望すら感じているのだもの。随分と勝手な事だ、なんてとても友人に対して思う感情では無かったね。ごめんね、こんな人間で。謝るのは僕の方だよ。と心の中でだけ、謝罪した。
『え、え・・・そ、』
ぱくぱくと口を動かし、紡ごうとした台詞はけれど声にならない様だった。期待通りの反応をありがとう。
最低な僕は君のその反応だけで救われるのだ。
『・・・なーんて。』
『じょ、冗談だったの・・・?』
僕は今、どうしようもない顔をしているだろう。鏡を見たら、此が自分なのかと疑うような、意地の悪い笑顔に違いない。
冗談ではない。嘘でも無い。僕は毎夜あいつに出会うんだ。君に葬り去られた愚かな悪役に。
だから平気だよ。
君が罪悪感を感じる必要性は、全くない。
『半分本当で、半分嘘。』
意図して意味深な台詞を吐けば、一体どういう意味なの、と言いたげに見つめ返された。大きな瞳が疑念に揺らいでいる。
だって、ね。僕は嬉しいんだ。君が他人にぼそりと呟いた言葉を偶然耳にして以来、本当は君に告げたくて仕方がなかった。誰にも言わないつもりだなんて言いながら、こうして意地悪く語り出してしまうくらいに。
君に対して猜疑感を募らせた訳では無かったし、あいつが消えた事を咎めるつもりも無かった。
それでも、君の呟いた一言が、僕の感情の軸をぶらすんだ。
“夢の中でもいいから会いたいなぁ”と漏らした台詞が。
『夢で会ってるから。』
毎夜訪れるあいつを優越感の材料にするなんて、間違っている。君は夢で会わないのかと見下すなんて、間違っている。
それでも少しだけ優位に立たせてほしいと願う僕を、許してほしいね。
夢の中での逢瀬だけは、君に負けていないようだ。
毎日、夢で、会ってるから。
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プロフィール
HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
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