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9/2の宿主様の誕生日をもちましてバク獏100枚書けたのでサイト閉鎖しました。 二ヶ月弱ですがありがとうございました。
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夢の中の君は凄く優しいね。盛大に甘やかし、僕を付け上がらせる。何度も髪を梳き、そして至る処に口付ける。脳髄の奥の奥まで蕩けてしまいそう。
けれどそれ以上に僕を虜にして止まないのは、君の優しい顔だった。
どうして、と尋ねたくなる程に君は優しい顔をしていて、それがより一層僕を夢の世界へいざなうんだ。
『        』
にこ、と何時もでは考えられないような屈託の無い笑顔を浮かべて僕を見、そして耳に甘やかな言葉を注ぎこむ。その都度これは夢だ、と再確認して哀しくなるけれど、それでも夢の中の僕は至福に包まれて仕方ない。夢見心地、とはまさにこういう事を言うのだろう。かわいい。綺麗だ。愛してる。そんな歯の浮く様な台詞を言われた気がするけれど、夢から覚めるとまるで覚えていない。何て歯がゆいんだろうか。君は何時も何と言って僕を甘やかすんだろう。目覚めて真っ先に思い出そうと努力するのに、何時も台詞だけは思い出せない。霞がかかった様とは、上手く表現したものだ。
『        』
かわいい、と言って口付けてくれたのだろうか。綺麗だ、と言って髪を梳いてくれたのだろうか。
それとも愛してる、と耳元で囁いてくれたのだろうか。
それすら思い出せないなんて、現実はかくして残酷だ。
夢は所詮夢、と現実の君はあざ笑うのか。夢の中の君と同じ顔で。




『消えない証がほしい。』




きゅ、と抱きついて優しい君の顔を見やる。夢は所詮夢、なんて知っている。どんなに消えない証をもらったところで、目が覚めたら煙の様に消え失せているのだろう。御伽噺の様に、夢から覚めても夢の続きが残っていると信じる事が出来る程僕はロマンチストでも何でもない。夢の中の優しい君は虚像にすぎず、また目覚めて襲い来る現実はかくも残酷だ。優しい君なんて何処にも居ない。辛辣な台詞で僕を追い立てる悪魔のような君しか居ないんだ。
『        』
けれど、それでも今この瞬間の優しい君に僕は盛大に付け上がる。やっぱり何を言われたか、は思い出せないけれど、そうやって君は何か愛おしい台詞を吐いたあと、消えない刻印を首筋に残した。ちゅ、と音を立てて吸い付かれ、はっきりと所有の証が浮かび上がる。しっかり色付く赤い刻印は、朧気な台詞よりも色濃く僕の身体に残った。消えない証に酔い痴れ、うっとりと君を見上げると、同じ様に蕩けそうな笑顔で僕を覗き込む君と視線がかち合う。ああ、なんて素敵な夢なのだろう。
夢は所詮夢、と知ってはいるけれど、それならば永遠にこの夢の中に居たいと願うばかりだ。




たとえば夢から覚めてもこの所有の証があるならば、御伽噺の様に甘ったるいけれど、
やっぱり現実はそんな事は無い。
目が覚めた僕は何も残ってなどいない白い首筋を見て、現実に落胆するのだろう。
どうしても思い出せない君の甘い言葉と共に。
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君は全て正しかった。間違っていたのは、何もかもが間違っていると思っていた僕のほうだった。君の存在を否定しようとして耳を塞ぎ目を閉じても、広がる闇は紛れも無く君自身なのだ。逃げられない。逃げられないんだ。
『無駄な足掻きだ。』
塞いだ耳にもお構いなしに脳を直接揺らす声が、僕を絶望の淵へと追い詰める。閉じた瞳に映る漆黒の闇が僕を不幸のどん底へと陥れる。そうやって僕を穢していく。貶める。其れでも君が正しい、そんな世界に色濃く映し出される自分の存在はとても異色だった。
『そんなに怯えなくてもいいんだぜェ?』
耳を塞いでいた手を取られ、ダイレクトに鼓膜を振動させる二言目。恐怖で萎縮する僕を鼻で笑い、次はどんな方法で僕を追い詰めようか、なんて考えているであろう事が手に取る様に判る。いっそ一思いに其の腕で此の心臓を抉り取られたならばどんなに楽なのだろうか。こんな想いをする位なら、いっそ、と、不穏な空気が身を纏う。其の空気にいち早く気付いた君が不機嫌そうに呟いた。
『宿主には生きておいてもらわなくちゃ困るからなァ・・・。』
だから、生かしておいてやるんだ。続く台詞はとても残虐で余りにも冷たかった。背筋をいやな汗が流れ、閉じた瞳をさらにぎゅうと強く瞑る。追い詰めて追い詰めて、そして僕が音を上げた時には、ギリギリのラインで僕を救い出そうという魂胆が丸見えだ。
『俺様が正しい。お前が間違ってる。そうだろう?』
ふぅ、と耳に息を吹きかけ、満足そうに笑う。ああ、その通りだ。君が正しい。僕が間違っている。それは何に対して、ではなく、言うならばこの世の全てに対して、だった。一種のインプリティング作用だということも判っている。君が僕を追い詰めて追い詰めて、それでも、其の行動が正しいのだと、刷り込んでいるのだという事も、判っているんだ。



『そうだろ?』
けれど、逃れられない広大な闇が、僕の身体を蝕んでいく。
異色なのは僕で、正義は君だと、まるでさも当然のように、視神経からダイレクトに伝達させていくんだ。
そうだね。君が正しい。全て正しいんだ。
間違っていたのは、何もかもが間違っていると思っていた僕のほうだった。




『うん、そうだね。』




大きな空が泣き出した。
あまりの大泣きぶりに僕と君も大慌て。
僕には此れを凌ぐ傘も合羽もなかったから、
祈るように走り続けて、
そうして見つけた垣根の下で、
思いもよらない二人だけのおしゃべりタイム。




『濡れちゃった。』
『風邪ひくぞ。』
『その時は、変わってね。』
『ばーか。』




タオルみたいなものがあれば良かったんだけど、やっぱり現実は甘くは無くて。
ハンカチくらい持ち歩けと怒られた。
通り雨が僕の隣に浮かぶ幽霊みたいなこいつを、変わりにお母さんみたいにして、
ぽたぽたと雫が伝わる髪も、ぐっしょりと濡れた服も、どうにかしろと喚きだす。
此れ位でやられる程やわな身体はしていないと思うけれど、
君がそうやって心配してくれるから黙っておいた。
雨は相変わらずざあざあと降り続けて一向に止みそうに無い。




『暇だね。』
『やまねェな。』
『何か面白い話してよ。』
『無茶言うな。』



ばーか、とまた言った君はとても極悪人には見えなくて、何だか嬉しくなる。
気まぐれな空の突然の恵みは、この世界を潤すだけでなく僕の心も浸らせるから、
雨は嫌いだなんて言っていた自分を訂正するね。
どうかどうかまだ止みませんように。
てるてるぼうずも逆さに吊って、
どしゃぶりの空に祈るように、
走り続けて辿り着いた先が此処でよかった、と思う。
他に誰も居ないから、独り言に見える僕たちのお喋りも気にならないんだ。




『傘』
『え?』
『傘、盗んできてやるぜ。』
『やだよ。僕の身体でしょ。』
『バレやしねェさ。』
『万引きは犯罪なの。』





そんな釣れない事言うなよ、なんて言う君。
釣れないのは君じゃない。
まだ雨足も酷いこの空の下、
また走り出してコンビ二で傘泥棒なんてナンセンスだ。
せめてこの雨が止むまで此処に居ようよ。
此処に居たいな。
君とこうしてゆっくり話す機会なんてそう無いんだから、
本当はずっと此処に居たいのに。
雨がやんでも此処に居たいのに。




『まだいいの。』
『風邪ひくといけねェだろーが。』
『だから、変わってくれたらいいじゃない。』
『またそれか。』
『無限ループ地獄だね。』




ぐるぐる巡って会話も振り出し。
意味が無いなんて言わないでよ、
ちゃんと意味はあるんだから。
今、
此処で、
君と、
こうしておしゃべりをする事にこそ意味があるんだから、
会話を途切れさせないで。
無意味なようで有意義な、無限ループに陥って。




『風邪。』
『え?』
『風邪、ひいたら。』
『うん。』
『その時は、』
『変わって、くれる?』
『ばーか。』




最初と同じ台詞で終わって、
けれど格段に紛れた言葉が、
違う意味を含んでいると知ったから。
繰り返す会話も、やまない雨に掻き消されても構わないかもしれないなぁ、なんて。
やけに乙女チックな思考回路が、
ぐるりぐるりと加速する。




『考えといてやるよ。』




わぁ、明日もきっと、ずっと雨だ。




『デレ期?』
『なんだソレ。』
『ナーイショ。』




ふふふ、と笑って君をみつめて、
風邪ひきますように!と、
僕はこっそり、そう願った。




もう目覚めないで。他の誰も見ないで。僕だけのものになった君を心の中に閉じ込めて蓋をしたいから。
それでいいのかと問われたら僕は笑顔で答えるだろう。
願っても無いと。




闇の意思は消えたから安心してねと言われて、咄嗟に作った偽りの笑みは上出来だった。まるで君が僕の真似をしていたみたいに僕は僕の真似をした。とても上手く笑えていた、と褒めてくれる人なんていないから自画自賛しておく。君が居たらきっと、“困ったご主人様だなァ”なんて揶揄する様に褒めてくれたのだろうけれど。
『・・・馬鹿な宿主だ』
ぽつり、と落とした声は勿論僕のものだったけれど、君に囁かれているかのような錯覚を起こす。それも当然だ。闇の意思は消えた、なんて言われたところでそもそも馬鹿げた話なのだから。君は消えていないよ。邪悪な意思がそんなに簡単に消え去る筈無いじゃないか、と告げたくなる心を叱咤して、乾いた笑みを貼り付けただけなんだ。君は消えていない。消える筈無いんだ。




『僕の中で眠っているだけだよね。』




だってそうでしょう。永遠の宿主に決めた、なんて勝手な事を言っておいて、それで消えてしまうなんて有り得ない話だ。君は僕の中で眠り続けているだけなんだ。眠っている君は大人しくて、そして心の拠所みたいな不思議な存在感を放ち続ける。君の声が聴けないのは至極残念だけれど、どうか眠ったままで居てほしい。もう目覚めないで。勝手に何処かに行かないで。そうすれば君は僕だけのものだから。
永遠に僕の眠れる王子様でいてくれる筈だから。



心の中に閉じ込めて、僕から逃げられなくするんだ。
それでいいのかと問われたら僕は笑顔で答えるだろう。
願っても無い、と。

DV注意、ということでワンクッション使用。

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HN:
すめ。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/05/02
自己紹介:
Coccoだいすき愛してる。
ばくばくは結婚して第三子おめでたくらいいってる。
と思ってるぐらい頭沸いてる。でも書く小説は全くそんなことはなく、たいがい甘くない。
でも甘いのもあるよ。
ほぼバク獏でたまに他。みたいな感じ。
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